東京メイン社長。新幹線で博子との土日についてを思い返す。お手当について考える
新幹線が京都駅を出て、ゆっくりと速度を上げていく。窓の外の景色が流れ始めると、
社長は背もたれに体を預けて、小さく息をついた。
コーヒーの紙カップを手に取り、一口すすりながら、ぼんやりとこの土日のことを振り返る。
「いやぁ……」
思わず口から出る。
「楽しかったな。」
正直なところ、今日は他の社長二人を置いて、一人で博子と回ったわけだが、
それはそれで正解だった気がする。むしろ、あの時間があったからこそ、色々見えた気がした。
「ほんまに来てよかったわ。」
そう思いながら、コーヒーをもう一口飲む。
顔だけで言うなら、正直、モデルみたいな美人というわけではない。
雑誌とかに出てくるような、ああいう圧倒的なビジュアルではない。けど、なんというか――
「引き出しやな。」
頭の中でそうつぶやく。
話の引き出しが、とにかく面白い。こいつ、何考えて生きてきたんやろう、
という感じがずっとある。
最初の天満の店に向かうまでの道でもそうだった。いきなり出てきたのが
「マグロ三円、日本酒三円」の話。
普通、あんな話の切り口出てこない。東京で生活していたら、まず出てこない発想だ。
地方の市場とか、海外の価格とか、そういう情報を混ぜながら、
ちゃんとこちらに刺さる形で出してくる。
「あれは良かったな。」
自然と笑う。
その後の鳥と芋焼酎の店。あれも普通に美味しかったが、印象に残っているのは味よりも、
店の中での立ち回りだった。
博子は、ただ話しているだけじゃない。周りの状況を見ながら、ちゃんと動いている。
自分と会話しながら、ラインで他の女の子二人の動きも自然にカバーしていた。
「あれ、上手かったな。」
もし三セット目に博子がいなかったら、正直ちょっと気まずかったかもしれない。
自分の友達の社長二人を前回連れてきている手前、店の流れが悪くなると、こっちの面子もある。
でも、博子はそこをうまくフォローしていた。
「ああいうとこやな。」
単純に会話が面白いだけじゃない。空気を読むというか、場の回し方がうまい。
それから、今日の朝。
「朝からモーニングやもんな。」
普通、夜の店の子があそこまで付き合うかという話だ。しかも、
ただ朝飯を食うだけじゃなくて、その後に植物園まで組んでくる。
植物園も、ただ散歩するだけじゃない。あのバオバブの話だとか、
色んな話の切り口を出してくる。
「具材探し、か。」
博子が言っていた言葉を思い出す。
「引き出しを作ってみましょう。」
あれは、ちょっとコンサルっぽかった。遊びながらも、どこかで「考え方」を差し込んでくる感じ。
「面白いやつやな。」
そう思いながら、またコーヒーを飲む。
昼のランチもそうだ。烏丸御池のあの路地の店。千円のワンプレートで、最後に鯛茶漬け。
あれも、普通の観光ルートでは出てこない店だ。
さらに最後のセンチュリーホテルのラウンジ。紅茶の店。
あれも京都駅のすぐ横なのに、あんなに落ち着いた場所があるとは知らなかった。
「ちゃんと構成してるんやろな。」
偶然ではなく、順番も含めて組んでいる感じがある。
社長は窓の外をぼんやり見ながら考える。
「さて、どうするかやな。」
金の話だ。前回は、鉄板の動きだった。あれはあれで完成度が高かった。
正直、あの時はかなり満足していた。
でも今回は違う。鉄板じゃない。けど、今日の今日で、
ちゃんと頑張っている感じはあった。
「前より多くするか……」
それとも同じくらいにするか。
それだけの話ではない。今回の評価には、もう一つある。
今日、自分の友達の社長たちの動き。あの辺のフォロー。
さらに、博子のコンサル的な視点。あれも含めて評価する必要がある。
「そう考えるとな……」
紙カップを軽く回しながら、だらだら考える。
新幹線はもうかなり速度を上げて、景色はすっかり流れている。
「まあ、もうちょい考えるか。」
急ぐ話でもない。
今日の土日の余韻を感じながら、社長はまたコーヒーを一口すすった。




