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帰り道 ― 今日の流れを振り返りながら。評価を待つ

京都駅を出て、帰り道を歩きながら、ヒロコは頭の中で今日一日の流れをゆっくりなぞっていた。

朝のモーニングから始まって、植物園、烏丸御池の路地の店、そして最後のホテルラウンジ。

一つ一つの場面が、点ではなくて、なんとなく線になってつながっている感覚があった。

「まあ……」

小さくつぶやく。

「いろいろ咲いたな。」

最初のきっかけは、天満で話した日本酒3円の話だった。

あれで社長が一回ぐっと興味を持ってくれて、その後の流れが柔らかくなった。

そこから炭火焼き。鳥と焼酎の話。あの辺も、思った以上に社長が食いついていた。

「あと……」

頭の中で順番を整理する。

天満の話。マグロ三円、ハイボール50円のネタ。

あれも結構驚いていた。

そのあと京都に移動して、植物園。

あそこは完全に流れを変えるパートだった。

観光でもなく、仕事でもなく、ただ歩く場所。

でもあの場所で、社長の顔が少し柔らいだ。

「植物園は良かったな。」

そこから烏丸御池の路地。家賃の話。場所をずらす話。

そして昼のランチ。

あのワンプレート。八品乗って千円。

「昼のランチ、強かったな。」

社長のリアクションも良かった。

最後の鯛茶漬けまで、完全に楽しんでいた。

そして締めのセンチュリーホテルのラウンジ。紅茶。

「あれも、なんやかんや効いてたな。」

ゆっくり座れて、会話を整理できる場所。

あの一時間で、今日の流れがきれいに締まった感じがあった。

博子は少し笑う。

「鉄板とは違う形やけど……」

今回は、いつもの鉄板ルートじゃない。

でもその分、細かいところで花が咲いた気がする。

点がいくつも生まれて、それが後からじわじわ効く感じ。

「まあ……」

少し空を見上げる。

「前の四十くらい出たらええかな。」

完璧ではない。

でも悪くもない。そんな手応えだった。

家に着いて、玄関のドアを閉める。

靴を脱いで、部屋に入ると、一気に静かになる。博子はソファに座って、ふっと息をついた。

「さて。」

今日の評価を頭の中で組み立てる。

もし社長が満足してくれていたなら。

「まあ……」

仮に四十くらいの評価が出たとして。そこから先を考える。

「五万くらい返す形かな。」

完全に回収するよりも、少し余白を残す。

「また来てくださいね。」

そう言える形。その方が、次につながる。

一回で取り切るより、続く関係にした方がいい。

博子は少し笑う。

「半年くらい引き出しある言うたしな。」

今日の流れは、その最初の一本みたいなものだった。

まだ出してない場所もある。まだ話してないネタもある。

だから、今日が全部じゃない。

「まあ……」

テーブルに置いたスマホを見る。

「今日の評価、どうやったんやろ。」

社長は満足そうだった。それは間違いない。

でも、本当の評価は後から出る。

人は帰り道で考える。ホテルで思い出す。次の日に思い出す。

そこで、どう残るか。

博子は背もたれに体を預けた。

「ま、ええか。」

今日は今日。やれることは全部やった。

モーニング。植物園。路地の店。鯛茶漬け。ホテルラウンジ。

全部、きれいにつながった。

窓の外はもう夕方に近づいている。

博子は静かな部屋の中で、もう一度小さくつぶやいた。

「まあ……悪くない一日やったな。」

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