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鯛茶漬けまで食べて満足の社長だがなんか名残惜しい。多分そういうと思ってましたと紅茶の美味しいカフェへ

鯛茶漬けまできれいに平らげて、社長は満足そうに箸を置いた。

「いやぁ……めっちゃ満喫したわ。」

博子が笑う。

「でしょ。」

社長は腹を軽くさすりながら立ち上がる。

「この昼飯、だいぶ当たりやったな。」

「外さない店なんで。」

店を出ると、烏丸御池の路地は昼前の柔らかい光に包まれていた。

さっきまで並んでいた客がまた増えていて、店の前には数人が立っている。

社長が振り返る。

「やっぱり並ぶんやな。」

「昼のピーク入ってきましたね。」

二人はゆっくり歩きながら、地下鉄の駅へ向かう。社長がふと口を開いた。

「しかし、もう帰りか。」

博子が首をかしげる。

「帰りますよ。」

社長が少し残念そうな顔をする。

「なんか名残惜しいな。」

博子が思わず笑う。

「何言うてるんですか。」

少し指を折りながら言う。

「朝モーニング食べて、植物園行って、昼こんなリーズナブルな飯食べて。」

社長を見る。

「まだ言うんですか?」

社長が笑う。

「いや、そう言われたらそうやけど。」

博子は少し考えるような顔をしてから言った。

「まあでも……」

少し間を置く。

「京都駅の近くに、そこまで混んでないホテルのラウンジあるんですけど。」

社長が顔を上げる。

「ほう。」

博子が言う。

「行ってみます?」

社長が一瞬止まったあと、爆笑した。

「お前……!」

博子が笑う。

「どうしました?」

社長が腹を抱えながら言う。

「まだそこまで考えてたか。」

博子が首を傾げる。

「何がです?」

社長が笑いながら言う。

「名残惜しくなるのまで計算済みか。」

博子も笑う。

「分かってましたよ。」

社長が言う。

「怖いわ。」

博子は肩をすくめる。

「だって、ご飯食べてすぐ帰るより――」

少し手を振る。

「コーヒー一服したいなって思うでしょ。」

社長が頷く。

「まあ、それは思うな。」

博子が言う。

「でもそこね、コーヒーじゃなくて紅茶が美味しいんですよ。」

社長が笑う。

「紅茶なんか。」

「飲んでください。」

そんな話をしながら、地下鉄に乗って京都駅へ戻る。電車を降りて地上に出ると、

京都駅の大きな駅舎が目の前に広がる。

博子が歩きながら言う。

「まず、ちょっと寄り道します。」

社長が聞く。

「どこ?」

ヒロコが指差す。

「ホテルグランビア。」

社長が首を傾げる。

「目的地ちゃうやん。」

博子が言う。

「間にあるんですよ。」

「いや、目的地ちゃうなら行かんでええやん。」

博子が笑う。

「まあまあ、ついてきてください。」

社長は苦笑いしながら歩く。

「お前の“ついてきてください”はだいたい何かある。」

ホテルグランビアのロビー階のラウンジ前まで来ると、博子が少し立ち止まった。

「ほら。」

社長が中を見る。

すると、きれいな服装をした男女が、テーブルを挟んで向かい合って座っている。

静かに話しているカップルが何組も見える。

社長が小さく言う。

「……あれ?」

博子が言う。

「これ、婚活の人たちです。」

社長が驚く。

「ここで?」

「そう。」

博子が続ける。

「土日のこの時間帯、結構集まるんですよ。」

社長が笑う。

「なんでここなん?」

博子が言う。

「京都って、駅前に“ちょうどいいホテルラウンジ”少ないんですよ。」

社長が頷く。

「言われてみれば。」

博子が指差す。

「だからホテルグランビアで結構やってるんです。」

社長がしばらく見てから言う。

「俺、休日遊んでるばっかりで、お見合いとか全然見たことなかったわ。」

博子が笑う。

「でしょ。」

少し歩きながら、博子が言う。

「ちなみに関西なら――」

社長を見る。

「年収四百万くらいから戦えます。」

社長が笑う。

「急にリアルな話きたな。」

博子が続ける。

「年収六百あったら、まあいいなって感じですね。」

社長が頷く。

「まあ、そんなイメージやな。」

博子が言う。

「でも東京だと、そこから二百万上がります。」

社長が眉を上げる。

「そんな違う?」

「違います。」

博子が言う。

「東京は年収六百から戦えて、八百あったらまあええかな、くらい。」

社長が笑う。

「お前、何屋さんやねん。」

博子も笑う。

「ただの雑談です。」

そう言いながら、二人はグランビアを抜けて奥へ歩いていく。

博子が指差した。

「こっちです。」

社長が看板を見る。

「センチュリーホテルか。」

博子が頷く。

「ここ、紅茶いいんですよ。」

社長が笑う。

「ほんまに最後まで用意してるな。」

博子は軽く肩をすくめた。

「締めですから。」

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