植物園を出て昼ごはん。烏丸御池にワンプレート1000円のお店あるから連れていく。最後は鯛茶漬け(笑)
温室を出て、しばらく植物園の道を歩いていると、だんだん足の疲れが出てきた。
時計を見ると、だいたい十一時半を少し回ったくらい。社長が軽く肩を回しながら言う。
「結構歩いたな。」
博子も笑う。
「歩きましたね。植物園って、思ったより距離ありますから。」
少し間を置いて、博子が言った。
「そろそろ昼飯行きます?」
社長が頷く。
「ええな。腹も減ってきたわ。」
博子は少し考えるような顔をしてから言った。
「一応、私の頭の中に二つあるんですよ。昼の候補。」
社長が笑う。
「二択なんや。」
「そう。ただ、正直なところ、こっち刺さったら嬉しいなっていうのがあるんで。」
博子は軽く指を立てた。
「烏丸御池、行きましょう。」
社長が首を傾げる。
「場所言われても、よう分からんわ。」
「大丈夫です。ついてくるだけでいいです。」
社長が笑う。
「もう、何も考えんとついていくわ。」
博子は軽く言う。
「乱暴なこと言わずに、道中味わいながら行きましょう。」
北山駅まで歩いて、地下鉄に乗る。京都の地下鉄は、昼前の時間帯ということもあって
人がそこまで多くない。車内でゆったり立ちながら、社長が言った。
「こうやって地下鉄乗るの、久しぶりやな。」
博子が笑う。
「観光の人はバスですけど、京都の人は地下鉄の方が楽なんですよ。」
十五分ほどで、烏丸御池に着いた。地上に出た瞬間、社長が思わず言う。
「道、広っ。」
博子が指差す。
「これ、まっすぐ行ったら二条城です。」
社長が目を丸くする。
「そんな近いんか。」
「反対側行ったら京都市役所。あの辺も、歩くと落ち着いたスポットあるんですよ。」
大通りは広くて整然としているが、少し横に入ると雰囲気が変わる。
博子が細い路地の方へ入っていく。
社長が言う。
「こんなとこ、店あるん?」
「あります。むしろこういうとこです。」
路地は静かで、表通りの音が少し遠くなる。小さな看板や、古い町家の扉が並んでいる。
社長が首を傾げる。
「こんな場所、普通わからんやろ。」
博子が笑う。
「だから、コツコツ探すんです。京都は。」
少し歩きながら、博子が続けた。
「意外と、美味しい店ってこういうところにあるんですよ。」
社長が聞き返す。
「なんで?」
博子がさらっと言う。
「家賃ですよ。」
社長が笑う。
「そこ見るんか。」
「見ます。だって、家賃高い場所に店出したら、料理の値段も高くしないと合わないでしょ。」
社長が頷く。
「まあ、それはそうやな。」
「でも、ちょっと離れた場所で、でも人が来る場所。そこに美味しい店ができると、
値段がリーズナブルでクオリティ高いっていう構造になるんです。」
社長が感心したように言う。
「なるほどな。」
路地を少し進むと、数人並んでいる店が見えた。
博子が立ち止まる。
「ここです。」
社長が店を見る。
「並んでるな。」
「でも大丈夫。多分三十分かからず入れます。」
博子は店の前で軽く壁にもたれながら言う。
「ここ、京都の北の方から直で魚仕入れてる店なんですよ。」
社長が興味を持つ。
「へぇ。」
「夜はね、まあまあするんです。でも昼がすごい。」
博子が笑う。
「千円のワンプレートやってるんですよ。」
社長が聞き返す。
「千円?」
「そう。基本はワンプレートで、メインの海鮮丼の上に乗ってるものが
ランク上げるとちょっと豪華になるくらいなんです。」
社長が首を傾げる。
「それだけ?」
博子がにやっと笑う。
「それだけなんですけど、最後が面白いんですよ。」
社長が身を乗り出す。
「何?」
博子が言った。
「最後、鯛茶漬けしてくれるんです。」
社長が一瞬止まる。
「……は?」
博子が笑う。
「海鮮丼食べて、最後に出汁かけて、鯛茶漬けにするんです。」
社長が吹き出す。
「なんじゃそれ。」
博子が肩をすくめる。
「コスパいいでしょ。」
社長は店の暖簾を見ながら笑っている。
「また面白い店連れてくるな。」
ヒロコが言う。
「こういうの、京都は多いんですよ。ちゃんと探すと。」
並びながら、社長は少し楽しそうな顔になっていた。
「いや、昼飯ちょっと楽しみになってきたわ。」
博子が笑う。
「でしょ。ここ、外さないんですよ。」
暖簾の奥から、店員が顔を出して「次どうぞ」と声をかけた。社長が立ち上がる。
「ほな、行こか。」
博子は軽く頷いた。
「はい、いきましょう。」




