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決戦の金曜日。税理士先生との夜を意識しながら淡々と過ごす

金曜日。夜は、税理士先生と、そのお客さん二人が来る予定だ。

正直、不安がないと言えば嘘になる。

三人。空気が合わなければ、一気に重くなる人数だ。

しかも相手は仕事の延長で来る。遊び半分ではない。

けれど、心配しても始まらない。今できることをやるだけだ。

午前中は、証券外務員二種の最終確認。

もう新しいことは入れない。

解き慣れた問題をなぞって、感覚を身体に残すだけ。

昼過ぎから、散歩に出る。頭を空にするための時間だ。

歩きながら、呼吸を整える。夜のことを考えすぎないようにする。

帰ってからは、YouTube。今日は思い切って量を取った。

ニュース解説をベースに、短いVlogも混ぜる。台本はない。

喋れることを、淡々と。「今日で20本はいったな」

自分でも少し呆れる。でも、これでいい。

数字を確認すると、登録者が80人になっていた。「……増えてるな」

ほんのわずか。それでも確実に増えている。

生前の博之は、かなり尖った話をして、それでも数字を伸ばすのに苦労した。

内容で勝負して、理屈で押して、何度も壁にぶつかった。

それが今はどうだ。同じような話をしていても、二十歳の“美人”がやるだけで、

初動の食いつきが違う。「なんやねん、それ」

悔しさが、少しだけ胸に刺さる。中身は同じなのに。

いや、むしろ今のほうが抑えている。でも、現実は現実だ。

この“側”があるからこそ、掴める入口もある。

それを使わない手はない。夕方。夜のシミュレーションに入る。

最低ラインは、はっきりしている。二セット。それは絶対だ。

人を巻き込んでいる以上、ワンセットで終わるのは一番まずい。

場内指名は、最低一人。できれば二人。

全員は無理でも、「博子の卓」という印象は残したい。

会話の流れを頭の中でなぞる。最初は軽く。

仕事の話は深追いしない。三人いるから、誰か一人に寄りすぎない。

場の空気を見て、一人ずつ“役割”を見つける。

話したい人。聞きたい人。飲みたい人。

そこを間違えなければ、自然と時間は伸びる。

アルカちゃんとサキちゃんの顔も思い浮かべる。

今日は誰をどう使うか。無理に煽らせない。でも、冷まさせない。

「最低、場内は返す」それを自分に言い聞かせる。

派手な勝ちはいらない。今日のゴールは、“次がある”形を作ること。

動画を止め、シャワーを浴びる。

鏡の前で、深呼吸。顔は落ち着いている。

不安は、ある。でも、それは悪くない。

緊張しているということは、

ちゃんと向き合っている証拠だ。

時計を見る。そろそろ準備の時間だ。

今日は金曜日。夜が長い。ヒロコは、静かにドアを閉め、

北新地へ向かう準備を始めた。

積み上げたものが、試される夜になる。

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