表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

341/727

東京のメインの社長と博子の電話。チームのこともあるし、個別は歓迎やけど様子見ながら

メインの社長は、博子からの返信を読んで、すぐに打ち返した。

――うん、それでお願いするわ。

一拍おいて、さらに続ける。

――近いところで、今週の土曜日どうや?

送信ボタンを押した瞬間、自分でも少し笑ってしまう。

「早いな、俺。」

でも、勢いは止まらない。

続けて、もう一通。

――別に無理に1日空けろとは言わへんで。

――とりあえず土曜日どういう感じか教えてくれたらええ。

ここで、具体案を出す。

――前に言うてた芋焼酎の美味しい店、そこで同伴させてよ。

――ヒロコちゃんの見識、芋焼酎でもう一回ちゃんと聞きたい。

さらに踏み込む。

――そのあと指名で行って、

――土曜に開けた酒、じっくり飲みながら話そうや。

そして、少しだけ間を空けてから、核心。

――日曜、もし時間あるなら観光ちょっと見てくれへん?

――お願いや。

最後に一行、付け加える。

――もちろん、他の二人には内緒で行く。

――でも座組をやってるのはちゃんと分かってるから、

――3人で行くのはまた別腹でちゃんと用意するし。

送信。

「……こんなメールするの、久しぶりやな。」

昔、若い頃、気に入った女に連絡していた時みたいだ。

でも違う。これは恋ではない。

価値への投資。体験への再現性確認。

そう言い聞かせながらも、胸は少し高鳴っている。

*****

その頃博子は、ベッドに腰かけたまま返信を読んでいた。

――今週の土曜日どうや?

「はやっ……!」

思わず声が出る。さらに読み進める。

芋焼酎の店。同伴。そのあと指名。

日曜観光。内緒。別腹。

ヒロコは天井を見上げた。

「ちょっと待てや……」

嬉しい。ありがたい。しかも、きっちり段取りを提示してくる。

甘くない。ちゃんと筋も通している。

でも。土曜、日曜。

しかも内緒。チーム戦のバランス。

頭の中で、一気に計算が走る。

土曜の自分の出勤状況。他の二人の予定。

店の混み具合。同伴枠。

“個別”をどこまで許容するか。

「これはメールで返す話ちゃうな。」

博子は即断した。

文字ではニュアンスが難しい。距離感も、温度も。

少し間違えたら、依存にもなるし、冷たくもなる。

博子は電話ボタンを押した。

コール音。東京の自宅で、社長のスマホが震える。

画面に「博子」の文字。

社長は一瞬驚く。

「電話?」

慌てて出る。

「もしもし?」

博子の声は、いつもより少しだけ真面目だった。

「社長、ちょっと早ないですか?(笑)」

軽く笑いを混ぜる。でもトーンは落ち着いている。

「土曜いきなり言われて、正直びっくりしましたわ。」

社長は笑う。

「刺さったんやもん。」

博子は小さく息を吐く。

「嬉しいですよ、ほんまに。でもな、あれは会心の一撃なんです。」

少し間を置く。

「土曜の同伴、全然嫌ちゃいます。芋焼酎の店も連れていけます。」

そこまでは即答。

「でもな、内緒っていうのは、ちょっと扱い慎重にさせてください。」

声は柔らかいが、芯はある。

「チームでやってる以上、バランスは見なあかん。社長が来てくれるのは

ウェルカムです。個別も全然ありです。」

一呼吸。

「でも、依存させるような動きはしたくないんです。それは社長のためにも。」

電話の向こうで、社長は黙る。

博子は続ける。

「土曜、同伴は調整します。日曜観光は、半日ぐらいならいけるかもです。」

少し笑う。

「ただ、毎回あのレベル期待されたら困りますよ?」

社長も笑う。

「それは分かってる。」

博子は最後に一言添える。

「社長が偏いてるって言うてくれたのは嬉しいです。でも、ちゃんと

余白残しながらいきましょ。」

電話を切ったあと、博子はスマホを置いた。

「……やっかい。でも、悪くない。」

一方、社長はソファに座ったまま、しばらく動けなかった。

電話越しの博子ちゃんは、甘くない。

でも、それがまた刺さる。

「依存させたくない、か。」

自分の熱を、ちゃんと制御してくれる。

それがまた、信頼になる。土曜、決まりかもしれない。

胸が、また少し高鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ