アルカちゃんの視点。楽しく過ごせたし納得のお手当やが博子ちゃんほどハマってない。工夫と伸びしろ
アルカちゃんは、帰宅後、今日と昨日のことをゆっくり思い返していた。
「楽しかったな。」
まずそれが素直な感想だった。
昨日の鯛飯屋。
あれは本当に博子ちゃんのアドバイスが効いていた。
「和食でいくなら、ちょっとずらそか。」
そう言われて、北浜の鯛飯屋を選んだ。
正直、最初は「タイメシ?」と思った。
でも行ってみたら、あの空気感。
肩肘張らず、でもちゃんとしてる。
社長もすごく楽しそうだった。
「アルカちゃんらしいな。」
って言われたのも、ちょっと嬉しかった。
自分のキャラに合わせて、博子ちゃんがコースを組んでくれたのがわかった。
私は、どっちかというと楽しい系。
ちょっと遊びがある方が合う。
だから和食ド直球より、ああいう軽い外しのほうが生きる。
そこを読んでくれてたんやな、と思うとありがたかった。
今日の清水寺陶芸体験もそうだ。
清水寺は混んでいた。
正直、「観光しに来た」感はあった。
でも三年坂のあたりで焼き物を見ながら、
「これ、どう思います?」
って話を振ったり。
陶芸体験で土を触ってる社長の横顔を見たり。
ああ、東京ではやらんことしてるな、っていう顔はしていた。
楽しそうだった。ご飯も刺さっていたと思う。
昼の湯葉豆腐の店は、ちょっと高めだったけど、その分人が少なくて、ゆっくりできた。
ああいう静かな時間は悪くない。
「うん、まあまあ良かったよな。」
そう思う。でも。
帰りの新幹線で、博子ちゃんについていた社長が熱弁している姿を思い出す。
あそこまでの“熱”は、自分の社長からは出ていなかった。
満足はしていた。楽しかったとも言ってくれた。
でも、“刺さりすぎてる”って顔ではなかった。
「やっぱ、博子ちゃんすごいな。」
例の鉄板コース。
酒屋での説明。イタリアン。鴨川。手料理。
あれは確かにレベルが違う。
私は、博子ちゃんのレールの上を走っている感覚がある。
設計は博子ちゃん。
私はその一部を担当しているだけ。
今回のお手当ては15万。
前より多い。
正直、そこまで期待してなかったから、びっくりはした。
「まあまあオッケーかな。」
と思える額。でも同時に、気になる。
博子ちゃん、いくらもらったんやろ。
絶対、私より上。それはわかっている。
別に嫉妬したいわけではない。
博子ちゃんの座組は、確かにすごい。
あれは響く。本当にすごい。
追いつけ追い越せ、って思ってるわけでもない。
でも。一緒の時間を共有しているのに、
「価値が全然違う」
って思われるのは、やっぱりちょっとモヤっとする。
自分は“楽しかった担当”。
博子ちゃんは“気づき担当”。
その差が、金額に出る。
それはわかる。でも、わかるのと、平気なのは違う。
「私も、なんか考えなあかんな。」
テーマの“余白”。
博子ちゃんがよく言ってる。
言葉としてはなんとなくわかる。無駄な動き。遊び。
ロジックじゃない部分。でも、それを“感情が揺れるレベル”まで持っていくのは、全然遠い。
私はまだ、体験で楽しませるところまで。
心の奥を揺らすところまでは、届いてない。
「どうやったら、あそこまでいけるんやろ。」
博子ちゃんに教えてもらうのも一つ。
でも、全部教えてもらっても意味がない気もする。
自分なりの“余白”を見つけないと。
酒の知識を詰め込めばいいわけでもない。
手料理を真似すればいいわけでもない。
私らしい、揺さぶり方。
それを見つけられたら、ワンランク上にいける気がする。
サンダーバードの窓に、自分の顔が映る。
「まだ、伸びしろあるよな。」
楽しかった。でも、それだけで終わらせたくない。
三人でまたゆっくり喋る時間があったら、
その“余白”の正体を、もう少し掴みたい。掴めたら。
次は、自分の社長の目も、あんなふうに変えられるかもしれない。
それが、アルカちゃんの、今日の本音だった。




