3人社長の新幹線反省会。メインの社長は博子の設計に哲学を感じて感嘆する。お手当の話し合い
新幹線が京都を出て、ゆっくりとスピードを上げていく。
三人席の真ん中に小さな紙コップ。
白州をソーダで割って、軽く乾杯。
「いやー……。」
メインの社長がまず口を開く。
「博子ちゃん、やっぱ座組すごいな。」
向かいの二人が頷く。
「ここまで考えてやってるか?」
「東京でもなかなかおらんぞ、あんなの。」
グラスを傾けながら続ける。
「しかも札束で殴る感じちゃうねん。」
「設計で殴ってくる。」
三人の共通認識だった。
一人が笑う。
「ほんまな。アルマンド開けました、ドンペリ3本です、みたいなんとちゃう。」
「でも、満足度は今日の方が上や。」
メインの社長が静かに言う。
「正直な。」「今回、仕事に関する気づきというか。」
「人生観みたいなもん、教えてもらった気がする。」
二人が少し真顔になる。
「そこまでか?」
「うん。」
白州を一口。
「ロジックで詰めるのも大事や。」
「札束で見せるのも戦略や。」「でもな。」
「無駄な動きとか、遊びとか。」
「余白がないと、人間死ぬなって。」
車内の揺れが心地いい。
「これ、刺さってる人めちゃくちゃ多いらしいで。」
「鉄板コースらしい。」
「シェアしたい気持ちもある。」
少し笑う。
「でも独り占めしたい気持ちもある。」
二人が同時に突っ込む。
「どっちやねん。」
「わかるやろ?」
メインの社長が続ける。
「博子ちゃんじゃないと、あれできへん。」
「日本酒の知識えぐいで。」
「俺ら、獺祭と久保田で止まってるやん。」
「銘柄めっちゃ説明してくれて。」
「芋焼酎の話までしだすねん。」
「なんじゃそりゃって思ったわ。」
三人で笑う。
「接待に向けてバチバチにやってる女や。」
「最後、手料理の肉じゃがやで?」
「設計設計って言いながら、ああいうの入れてくるの心憎い。」
一人が頷く。
「隠れ家イタリアンもやばかった。」
「昼で8000円や」「内容見たら東京やったら4、5万するで。」
「見つけてくるのがえぐい。」
メインの社長が静かに言う。
「これはコンサルや。」
二人がうなずく。
「業者に頼んでロジカルに説明されても、腹に落ちひん。」
「今日の博子ちゃんの言いたいことは腑には落ちた。」
「顧問契約で考えたら、3、40払ってもええなって思える。」
「そこまでか。」
「そこまでや。」
白州のソーダが少なくなっていく。
「今日のお手当て10やろ?」
「プラス20か30積んでもええなって思ってる。」
「六本木で1日遊ぶより、絶対価値あった。」
一瞬、静かになる。
別の社長が言う。
「ほな俺らどうしよ。」
メインの社長は少し考えてから答える。
「俺が刺さりすぎてるだけかもしれん。」
「ヒロコちゃんも、10より上は好きにしていいって言ってた。」
「それぞれや。」「気づきに払うか。」
「楽しかったに払うか。」「基準はちゃう。」
二人はうなずく。
一人が言う。
「アルカちゃん、正直どうやった?」
少し笑う。
「清水寺から陶芸体験、あれは良かった。」
「時間使ったなって感じや。」「集中できた。」
「でも、人生観レベルで刺さったか言われたら、そこまでちゃう。」
メインの社長が頷く。
「体験としては良い。」
「設計の深さは博子ちゃんやな。」
もう一人が言う。
「さきちゃんの嵐山もよかったで。」
「福田美術館のテラス。」
「渡月橋見ながらぼーっとするのは刺さった。」
「空気は良かった。」「でも、トークで刺された感は薄いかも。」
メインの社長がまとめる。
「三者三様やな。」
「アルカちゃんは体験型。」
「さきちゃんは空気型。」
「博子ちゃんは設計型。」「しかも、設計の奥に哲学ある。」
三人で静かに笑う。
「これな。」
「続くで。」
「絶対。」
新幹線は名古屋を通過する。
「とりあえず。」
メインの社長が言う。
「今日の分は10払う。」
「プラス分は、振り込みで。」
「俺はちゃんと考えて出す。」
二人がうなずく。
「俺も、ちょい上乗せはするわ。」
「でも額は、それぞれやな。」
白州の最後の一口を飲み干す。
「次どうする?」
「京都泊まりで、博子ちゃんが話してた日本酒の店行くか?」
三人で笑う。「抜け駆けすんなよ。」
「他のさきちゃんアルカちゃんに怒られるで。」
車内アナウンスが流れる。
まもなく東京。
三人は少し背筋を伸ばす。
「いやー……。」
「ええ遠足やったな。」
「ほんまや。」
遊び。でも、遊び以上。
静かに、それぞれの中に何かが残っていた。




