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博子は鉄板コースを社長にあてる。まずは六条河原町の酒屋で日本酒を一緒に選ぶ

博子は、結局迷いを振り切った。

鉄板でいく。六条河原町までタクシー。

バス停には長蛇の列。

「うわ、これ無理やな。」

社長が窓の外を見て驚く。

「京都、こんな混むん?」

「土日は特に。」

博子はさらりと言う。

「だからタクシーなんです。」

無理に節約しない。時間を買う。余白を買う。

タクシーはさくっと酒屋の前に止まる。

「今日の流れをはザクっとお話しますね。」

博子が流れを説明する。

「六条河原町で日本酒を買って。」

「五条の隠れ家イタリアンでランチ。」

「最後に京都御所の近くの河原で。」

「今から買うお酒を飲みます。」

「ちょっとつまみも持ってきてるんで。」「のんびり。」

社長の目が輝く。

「ええやん。」「観光とは違う刺し方やな。」

「そうなんです。」

酒屋の中へ。

ひんやりした空気。棚一面の日本酒。

タクシーには待ってもらう。

「いつも何飲みます?」

社長が言う。

「獺祭とか、久保田とかはよく飲むかな。」

「ありますよ、もちろん。」

博子は笑う。

「でも、せっかく京都来たんで。」「ちょっと説明させてください。」

鳳凰美田、田酒、尾瀬の雪解け、東洋美人、にふだ酒。

一本一本、軽く触れる。

「最近の流行りは。」「フルーティー。」「純米大吟醸。」

「削り大きい、ワインみたいなお酒。」

社長が頷く。

「獺祭も美味しいです。」「でもあれはルイヴィトン。」

「みんながいいと認めた酒。」「今日はちょっと尖りません?」

「ストーリー性。」

「出身地。」「蔵の背景。」

社長が笑う。

「そこまで考えてる?」

「はい。」

博子は真顔。

「酒も設計です。」

棚の前で立ち止まる。

「京都なら。」「佐々木蔵之介の酒。」「英勲。」

「澤屋まつもと。」

有名どころを挙げつつ。

少しだけ間を置く。

「でも、私の口に合ってるのは。」

「蒼空。」

社長が反応する。

「聞いたことない。」

「味一段上です。」「純米大吟醸。」

「ちょっとお値段張ります。」

値札を見る。確かに安くはない。

「でもお店で飲むこと考えたら。」「全然。」

「今日はこれでいきましょう。」

社長が吹き出す。

「流れるような説明やな。」

「博子ちゃん、何回このコース回ってんの?」

博子は照れ笑い。

「最近オーダー多いんですよ。」

「このコース、染みる染みる言われて。」

「常連さん増えすぎて。」

社長が頷く。

「わかる気する。」

「酒屋から始まるって、ええな。」

会計を済ませる。タクシーへ戻る。

「なんかさ。」

社長が言う。

「ただ酒選んでるだけやのに、もうコンテンツやな。」

博子は軽く笑う。

「選び方にストーリーあるだけで、味変わるんです。」

蒼空を抱えてタクシーに乗る。

「この後イタリアンやろ?」

「はい。」

「日本酒持って河原?」

「そうです。」

社長は窓の外を見ながら言う。

「ええな。」

「観光地回るより、よっぽど贅沢や。」

博子は心の中で小さく頷く。鉄板。

でも出し惜しみしない。刺しにいく。

社長がぽつりと。

「これ、当たるやつやな。」

博子は微笑む。

「当てます。」

タクシーは五条の細路地へ向かう。

蒼空の瓶が膝の上で静かに光る。設計は順調。

温度は、ちょうどいい。

そして社長の顔は、すでに少し刺さっている。

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