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キャバ嬢たるもの歩く食べログでなければならない

キャバ嬢たるもの、歩く食べログでなければならない。

博子は、散歩を続けながら、そう思っていた。

もちろん、相手が店を選んでくれることも多い。

むしろ、社長クラスなら、「ここ行こうや」と先に決めてくることの方が多い。

でも――返しがないと、辛い。「どこでもいいよ」「任せるわ」

この一言を投げられた時、何も出てこない女の子は、そこで一段、評価を落とす。

だから、頭の中には、常に“引き出し”を持っておく。

福島。和食。日本酒。裏の商店街を抜けた先。

ふと、ひろこの中で、ひとつの店が浮かんだ。「……あったな」

派手じゃない。看板も控えめ。でも、料理はちゃんとしている。

日本酒のラインナップも悪くない。カウンター中心。会話が途切れない距離感。

食べログを開く。評価は、3.45。「ちょうどええ」

高すぎない。低すぎない。“通っぽさ”が出る数字。

博子は、社長からの「何食べたい?」のメッセージを、もう一度見返した。

すぐ返す。間を空けすぎない。「福島に、和食と日本酒のお店があるんですけど、

この辺どうですか?」リンクを貼る。余計な説明はしない。“選択肢”として出す。

数分後、返事が来た。「ええやん。冒険がてら、行こか」

博子は、スマホを見たまま、一瞬だけ拳を握った。来た。

「じゃあ、予約しますね」即、店に電話をかける。

「今日、19時から二名、空いてますか?」

少しの間。保留音。「大丈夫ですよ」

その一言で、今日の流れが確定した。「19時でお願いします」

電話を切ると同時に、博子は、軽く息を吐いた。逃げ場は、もうない。

でも、嫌な緊張じゃない。これは、勝負前の緊張だ。

軽い飲み。軽い食事。でも、ここからどう転ぶかで、

水曜、そして次が変わる。服装は、やりすぎない。

仕事感を出しすぎない。“夜に行ける女”じゃなく、“話せる女”。

「19時、福島で大丈夫です」そうメッセージを送ると、すぐに既読がついた。

博子は、スマホをポケットにしまい、もう一度、歩き出した。

キャバ嬢は、その場のノリだけで生きる仕事じゃない。

店。時間。距離。間。全部を、さりげなく整える仕事だ。

そして今夜は、その力を試される。19時。福島。

和食と日本酒。さあ、勝負や。

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