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31/99

火曜日。オフの日に着々と積み上げる。夕方不動産会社社長から会おうと連絡来る

火曜日。出勤はない。

だからといって、休みというわけでもなかった。

昼前、博子はスマホを固定して、動画を回す。

内容は、淡々としたニュース解説。声を張らない。オチも作らない。

「どうせ、誰も見てない」それぐらいの気持ちでちょうどいい。

YouTubeの登録者は、三十人ほど。再生数も、似たようなものだ。

でも、博子は思う。「上出来やな」ゼロから始めて、三十。誰にも告知していない。

踊ってもいない。サムネも作っていない。それで三十人なら、十分だ。

一本撮って、もう一本撮る。編集もしないから、早い。

撮って、アップして、次。動画を回しながら、横で参考書を開く。

証券外務員二種。過去問集。「これ、ほんまに一回やったやつやな」

問題文を読む前に、答えの方向性が見える。完璧じゃない。

でも、“知らない”状態ではない。間違えたところだけ、軽く印をつける。

「ここだけ、あとで見直そ」ガチガチに勉強しない。今は、思い出す作業だ。

動画を二本、過去問を数ページ。それだけで、昼はあっという間に過ぎた。

夕方、ひろこは外に出る。散歩。体型維持のため。

キャバ嬢にとって、体は商売道具だ。ジムに行くほどでもないが、

動かないのは論外。イヤホンもつけず、ただ歩く。

考え事をするには、これぐらいがちょうどいい。

「今は、派手な成果は出てない」「でも、積み上げはできてる」

動画。資格。人間関係。全部、すぐには金にならない。

でも、何もしないより、確実に前に進んでいる。

そんなことを考えていた時、スマホが震えた。

画面を見る。――不動産会社の社長。一瞬、足が止まる。

メッセージは、短かった。「今日、軽く飲めるなら

 明日、軽く行ってもええよ」ひろこは、思わず小さく笑った。

重くない。詰めてこない。“軽く”が二回。この人らしい。

そして、次の一文。「何食べたい?」来た。これは、同伴してください、じゃない。

来てください、でもない。選ばせてくるやつ。博子は、すぐに返さない。

歩きながら、頭を整理する。ここで、高い店を言う意味はない。

かといって、安すぎると、相手のテンションを削ぐ。

「軽く」「飲める」「話せる」この三つが、条件。

頭の中に、いくつか店が浮かぶ。立ち飲み。カウンター。予約いらず。

「どう返すかで、この人との距離、決まるな」

博子は、深呼吸してから、メッセージを打ち始めた。

指が、迷わず動く。これは、チャンスだ。

派手じゃない。でも、ちゃんとしたやつ。火曜日は、仕込みの日。

そういう日に限って、こういう連絡が来る。

博子は、スマホを見つめながら、静かに歩き続けた。

――さて、どう料理しよか。

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