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博子の座組に感心するも課題を指摘する荒い社長。既に認識している博子や博子のお客さんに脱帽

天ぷらをつまみながら、博子はふと思い出したように言った。

「一応ですね、私、副案もいくつかあるんです。」

荒い社長がニヤッとする。

「まだあるんか。」

「あります。」「嵐山プラン。」

「天龍寺に行かせずに、福田美術館のカフェから。」「渡月橋を満喫する流れ。」

社長がうなずく。

「観光地の王道を、ちょっとずらすわけやな。」

「そうです。」

「その手前で、湯葉豆腐と天ぷら。」

「観光地価格よりリーズナブルな店、押さえてます。」

「ほう。」

博子は続ける。

「あと鉄板のコース。」

「六条河原町の酒屋で日本酒を選んで蒼空っていう伏見の酒買って。」

「五条の隠れ家イタリアン。」

「出町柳の手前の河原で買った日本酒と私の手料理をあてに酒飲む。」

荒い社長が笑う。

「こんなんはあります。」

「で、喋ってるうちに、また3つぐらい思いついたなって。」

荒い社長はグラスを置いて言う。

「それやったら、ありやな。」

「社長グループ同士の情報が交錯しないんやったら。」

「横流しで数ヶ月は持つ。」

博子はすぐ頷く。

「はい。」「でも、持って数ヶ月ですよね。」

「せや。」

社長は真顔になる。

「その間に関係性築かなあかん。」「もっと来たいって思わせな。」

博子は少し静かになる。

「わかってます。」「私だけ座組が突出してたら、あかんってことも。」

新井社長がニヤリとする。

「そこまでわかってるんや?」

「はい。」

「いろんな方に言われてます。」

博子は正直に言う。

「私100点で、他50点やったら。」

「バランス崩れる。」「結局、私の卓しか来なくなる。」

「使う額も小さくなる。」

社長がうなずく。

「せやな。」

博子は続ける。

「来る時のワクワク感。」

「帰る時のみんなで悪さした感じ。」「それが抜ける。」

「1人だけ突出したら、面にならない。」

新井社長が笑う。

「悪さした感じ、か。」

「大事ですよ。」

博子は真顔で言う。

「行き帰りの電車の中で盛り上がる。」

「あいつどうやった?」「どこが良かった?」

「それがないと、リピート弱い。」

荒い社長は満足そうに言う。

「ようわかってるな。」

「だから。」

博子は指を立てる。

「私80。」「他70。」

「そのくらいで平均点をちゃんと取る。」

「それが理想。」

社長が笑う。

「誰に言われたんや。」

「何人かに。」「お客さんも、わかってはります。」

新井社長は箸を置いて、じっと博子を見る。

「博子のお客さん、レベル高いな。」

「ありがたいことに。」

「商売を商売として見てる。」

博子は少し肩をすくめる。

「座組が突出しすぎると。」

「チームとして崩れる。」「1人の下にしか来なくなる。」

「それは長期的には弱い。」

荒い社長が笑う。

「もう完全に経営者目線やん。」「キャバ嬢ちゃうな。」

「一応キャバ嬢です。」

二人で笑う。

「でもな。」

社長が言う。

「80と70を揃えるのが一番難しい。」

「わかってます。」

博子は静かに言う。

「自分が出しすぎたら、周りがしんどい。」

「抑えすぎたら、魅力が落ちる。」

「だから混ぜる。」「ぐるぐる回す。」

荒い社長は満足そうにうなずく。

「ええやん。」「今のままでええ。」

「数ヶ月持つ。」「その間に深くする。」

ヒロコは一口、天ぷらを食べる。

「東京勢は、離れる時は早いです。」

「せや。」

「だから依存しすぎたらあかん。」

博子は少し笑う。

「依存しそうになりますけどね。」

「正直やな。」

社長は笑う。

「でも、それを自覚してるのが強い。」

「わかってるなら、崩れへん。」

博子はグラスを持つ。

「ありがとうございます。」

「博子のお客さん、ほんまわかってはるな。」

「はい。」

「だから余計、バランス崩せないんです。」

二人で笑い合う。

揚げたての天ぷらが、最後に出てくる。サクッとした音。

油の香り。店内は穏やかだ。

「また座組の続き、教えてや。」

荒い社長が言う。

「ぜひ。」

博子は思う。

(80と70。)

それが今の課題。

突出しすぎず、埋もれすぎず。面で戦う。

電車の中のワクワクと、帰りの悪さ。

それを守るのが、博子の商売。

月曜日の夜は、静かに熱を帯びていた。

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