会計士先生と店内。グループの座組でネタの枯渇が課題。
会計士先生と店内に戻ると、さっきまでの炭火の余韻とはまた違う、
ネオンの柔らかい光が迎えてくれる。
今日はまったり二時間。
博子も、先生も、それを分かっている。
ボトルを軽く置いて、グラスを作りながら、
さっきの続きのように話は自然と流れていく。
「さっきの座組みの話なんですけどね。」
博子が口火を切る。
「今、3対3が2組入ってるんですけど。」
「うん。」
先生は静かに頷く。
「正直、ネタの枯渇が一番の課題なんですよ。」
「ネタ?」
「はい。」「私、結構そこに課題意識あって。」
「どういうものが欲しいのか、先生やったらどうですか?」
先生は少し考える。
「出来事系、ですかね。」
「自分では気づかない視点。」
「余白の部分。」
博子は頷く。
「やっぱり余白。」
「でも、余白ばっかりでも、あかんですよね。」
先生が笑う。
「そうですね。」
「余白だけやったら、哲学サロンになります。」
二人で軽く笑う。
「やっぱりバランスですよね。」
「ガチ恋要素も、ゼロやったら店としてはないでしょうし。」
先生は真顔で言う。
「ゼロは、やっぱり難しい。」
「適度な勘違い、適度な距離感。」
「それが店の醍醐味です。」
博子はグラスを持ちながら言う。
「メンツ変えながらやる必要もありますよね。」
「提供の場も、京都に移すのありかもって思ってて。」
先生が興味深そうに聞く。
「大阪よりも京都の方が深みが出る気がするんですよ。」
「それは、ありますね。」
先生は頷く。
「京都は“間”がある。」
「大阪はスピード。」
「深みを出すなら京都でしょう。」
博子は小さく息を吐く。
「しばらくは、この形で横転する感じで回して。」
「様子見ですね。」
「横転。」
先生が笑う。
「仕事みたいでしょ。」
博子も笑う。
「女の子たちも、全員が全員合致するとは限らないし。」
「今は3対3が2組。」
「でも、もっと多くでやってほしいって言われる可能性もあるし。」
先生はゆっくり言う。
「広げすぎると、パンクしますよ。」
「ですよね。」
「だから、ゆるゆるやります。」
「詰め込みすぎて負担になったら。」
「せっかくゆるく来てくれてる方も、継続できなくなりますし。」
先生はグラスを口に運びながら言う。
「それが一番怖い。」
「継続が命ですから。」
博子は頷く。
「だから、先生方も。」
「お友達とかと一緒に遊ぶ時に、使っていただけたらなと。」
先生が笑う。
「営業、うまいですね。」
「営業というか。」「コミュニティですね。」
「顧問先とか。」「取引先とか。」「接待があるなら、ぜひ。」
先生は少し考える。
「実際、ありますよ。」
「会計士同士。」「弁護士と。」
「社労士と。」「ゴルフだけでは足りない。」
博子はすぐに言う。
「ゴルフの後に京都とか。」
「ありですよ。」
先生は吹き出す。
「そこまで設計するんですか。」
「しますよ。」「私の商売のタネですから。」
二人で、少しだけ真面目に笑う。
時間はゆっくり進む。
一セット目は設計とバランスの話。
二セット目は少し柔らかく。
「でも、先生。」
博子が言う。
「結局、私は座組みにガチ恋してるのかもしれないですね。」
先生が即答する。
「知ってます。」「でも、それでいい。」
「恋してる人は、強いです。」
博子は小さく頷く。
「ほどほどにします。」
「ほどほどに恋するのは難しいですよ。」
先生が笑う。
ネオンの光が揺れる。
周りの卓は少し賑やかだが、この卓は静かだ。
「しばらくは、横転しながら。」「ゆるく回します。」
博子が言うと、先生はグラスを軽く掲げる。
「ゆるく、継続。」
「それが一番強い。」
二時間が、あっという間に過ぎる。
「今日も、いい時間でした。」
先生が言う。
「こちらこそ。」
博子は軽く頭を下げる。
設計の話。余白の話。
ガチ恋とバランス。
全部ひっくるめて。
この二時間もまた、ひとつの余白だった。




