表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

294/735

金曜日。清掃会社の社長との同伴。頻繁に会う中、心配されながら時間を過ごす。

金曜日。清掃会社の社長との同伴の日。

博子は昼過ぎから、なんとなく穏やかな気持ちで段取りをしていた。

火曜日に姫路へ行った余韻が、まだ少し残っている。

(あれ、楽しかったな。)

今日は遠出はない。でも、その分、日常の中の余白を作ればいい。

同伴の晩御飯はどうするか。派手な店じゃなくていい。

今日は、少し素朴なもので組み立てることにした。

茄子の煮びたし。揚げ出し豆腐。

里芋の煮っ転がしを軽く揚げたやつ。

「今日はこんな感じでどうです?」

と、事前に軽く匂わせておく。

ほどなくして、社長が現れる。

「博子!」

声のトーンが明るい。

「火曜日、めちゃくちゃ楽しかった。」

席に着くなり、そう言った。

「姫路、ああいうのがあるだけでテンション上がるな。」

博子は笑う。

「よかったです。」「たまには、ああいうのも。」

社長が頷く。

「余裕ある日やないと無理やけどな。」「でもな。」

箸を持ちながら言う。

「博子の予定を考えたら。」

「別に山崎のウィスキー工場でもええし。」「京都でもええし。」

「もうちょっとしたら納涼床とかもええかもな。」

博子は笑う。

「どこまで広げるんですか。」「広げとかなあかんやろ。」

社長は真顔で言う。

「種は多い方がええ。」「時々行くのもええし。」

「こうやって毎週来てくれるのも嬉しいです。」

博子が言うと、社長は少し照れたように笑う。

「こうやって来ることでな。」「日々の仕事の嫌なこと、ある程度忘れられる。」

「頭の整理もできる。」

博子は静かに聞く。

「やっぱな。」「こういう町に来て。」

「雑多なところで。」「自分が生きてるって感じんと。」

「仕事のモチベ、わかんねん。」

博子は頷く。

「必要経費ですね。」

社長が笑う。

「せや。」「領収書もちゃんと作ってもらってるし。」

「その辺は何とかなる。」

二人で軽く笑う。

茄子の煮びたしを口に運びながら、社長が聞く。

「最近どうや。」「最近会ったばっかりやけどな。」

博子は苦笑する。

「まあ、そんなに大きな事件はないです。」「ただ。」

少し言葉を選ぶ。

「座組の話、ずっとしてました。」「昨日、店の女の子たちとお茶して。」

「情報共有して。」「団体さんどう回すかとか。」「設計の話とか。」

社長が少し眉をひそめる。

「出勤以外の時間も、結構気ぃ使ってるやろ。」

博子は一瞬、目を逸らす。

「まあ、ちょっとは。」

「博子、休んでるんか?」

社長の声は、少しだけ心配混じりだ。

博子は揚げ出し豆腐を取り分けながら言う。

「休んでますよ。」「こうやって。」

社長が笑う。

「それは俺の金で休んでるだけや。」

「違いますって。」

博子も笑う。

でも、少しだけ考える。

(確かに、気を使う時間は増えてる。)

座組。面で戦う。80点を揃える。余白の共有。

頭の中は、ずっと回っている。

社長は続ける。

「博子はな。」「今、上り坂や。」

「でも、休まんと持たんぞ。」

博子は少しだけ真面目な顔になる。

「わかってます。」

「だから今日は、揚げ物少なめです。」

「そこかい。」

二人で笑う。

店に向かう時間が近づく。

支払いを済ませながら、社長が言う。

「無理すんなよ。」

「はい。」

「種まきは必要やけどな。」

「潰れたら元も子もない。」

博子は小さく頷く。

外に出ると、金曜日の夜の空気。

少しざわついている。

「今日はゆるくいこか。」

社長が言う。

「ゆるくいきましょう。」

博子は歩きながら思う。

(休めてるかどうかは、正直わからん。)

でも。こうやって話しながら、雑多な街を歩く時間。

それもまた、余白なのかもしれない。

店のネオンが見えてくる。

金曜日の夜が、また始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ