弁護士先生帰宅後、アルカちゃん、さきちゃんと情報共有の時間をセッティングする。
フリー卓に戻り、博子はいつもの顔に切り替える。
さっきまでの設計会議モードとは違う、柔らかくて軽いテンポ。
残り2セット。仕事はまだ終わっていない。
けれど、隙間時間ができるたびに、アルカちゃんやさきちゃんと目が合う。
「土日どうやったん?」
やっぱり聞かれる。
博子は苦笑する。
「だいぶ大変やったで。」「でもな、これな。」
少し声を落とす。
「ゆっくり時間取って話したい。」
アルカちゃんが眉を上げる。
「そんなレベル?」
「うん。」
博子はうなずく。
「今、6月の2週目やろ?」
「うん。」
「3週目の土日、東京の社長3人組来るやん。」
さきちゃんが小さく「ああ」と言う。
「昨日の話、あれな。」
「次のチーム戦のきっかけになりそうな気がする。」
二人が少し真顔になる。
博子は続ける。
「どっかで時間取って、ちゃんと話したい。」
「明日の夕方とか、もし同伴なかったら。」「昼か夕方、お茶でもしながら。」
アルカちゃんが手を挙げる。
「あ、ごめん。」
「博子明日姫路ちゃう?」
博子が「あっ」と声を出す。
「そうや。姫路や。」
三人で小さく笑う。
「じゃあどこや。」
「木曜?」
さきちゃんがスマホを見ながら言う。
「木曜、夕方いけるかも。」
博子はうなずく。
「木曜、昼か夕方2時間。」
「アルカちゃんとさきちゃんで、お茶しよ。」
アルカちゃんがにやっとする。
「作戦会議やな。」
「そう。」
博子は少し真面目な顔になる。
「ここで話せたら楽やねんけど。」
「ちょっと話が重い。」
「真面目なやつやから。」
さきちゃんが頷く。
「ここやと、聞き切れへんな。」
「やろ?」
博子は続ける。
「もちろんLINEでも情報共有する。」
「でも、煮詰めたい。」
「ちゃんと。」
アルカちゃんが腕を組む。
「昨日そんなに濃かったん?」
博子は息を吐く。
「うん。」
「概要はな。」
「京都駅10時半集合。」
「ロッカー預けて、タクシー移動。」
「酒屋で日本酒選ばせて。」
「イタリアン行って。」
「鴨川で飲んで。」
アルカちゃんが笑う。
「めっちゃちゃんとしてるやん。」
博子は首を振る。
「ちゃんとしてるだけじゃなくてな。」
「“気づき”の話になってん。」
さきちゃんが目を細める。
「余白?」
博子はうなずく。
「そう。」「ロジカルの外のやつ。」
アルカちゃんが小さく言う。
「それ、3人組にも使えるやつ?」
「たぶん。」
博子は真顔になる。
「うちら、チーム戦やん。」
「1人だけ刺さっても意味ない。」
「全員の満足度の最低ライン上げなあかん。」
さきちゃんが頷く。
「設計、共有せなあかんやつやな。」
「そう。」
博子は続ける。
「だから、ちゃんと話したい。」
「だいぶ大変やったで。」
「最強カード出せって言われて。」
二人が目を丸くする。
「まじで?」
「まじ。」
博子は苦笑する。
「でも乗り越えた。」「で、次につながった。」
アルカちゃんがゆっくり言う。
「じゃあ木曜、ちゃんと時間作ろ。」
「作戦会議や。」
博子はほっとする。
「ありがとう。」
そうこうしているうちに、残りの2セットも終わる。
いつもの軽い会話。笑い。ドリンク。
でも博子の頭の中は、もう次に向いている。
火曜日、姫路。また別の客。別の設計。
家に戻りながら、スマホのメモを開く。
・余白=詰め込まない勇気
・体験させる
・選ばせるけど落としどころ作る
・設計感を消す
博子は小さく息を吐く。
「忙しいな。」
でも、嫌じゃない。種は蒔けている。
あとは、磨く。火曜日の姫路に向けて、服を整え、動線を確認する。
木曜日の作戦会議も、頭の片隅に置く。一人で考え込まない。
チームで磨く。そう決めた。
ベッドに入る前、博子はアルカちゃんとサキちゃんに一言送る。
《木曜よろしく。だいぶ濃い話するで。》
すぐに既読がつく。
《楽しみやん。》
博子は微笑む。
次は姫路。その次は、東京3人組。
余白は、まだ広がっていく。
静かに準備を進めながら、博子はまた次の一歩へと向かっていった。




