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弁護士先生。博子の設計詳細を聞きながら面白がる。キャバ嬢の提案プラス気づきの提供

「じゃあ、ざっくりいきますね。」

卓につき、グラスを軽く回しながら、博子は先生に向き直った。

「まず、京都駅10時半待ち合わせです。」

「はい。」

「キャリーケースをロッカーに預けてもらって、そこからは全部タクシー移動にしました。」

先生がうなずく。

「最初から“二人の空間”を確保ですね。」

「そうです。バスやと雰囲気壊れますから。」

博子は続ける。

「で、六条河原町のタキモトっていう酒屋さんに行きました。」

「ほう。」

「そこで日本酒を一緒に選ぶ体験です。」

先生が興味深そうに身を乗り出す。

「体験を挟んだんですね。」

「はい。東京でいい酒を飲んではるのは分かってたんで。」

「田酒、写楽、鳳凰美田、新政。」

「この辺は社長も知ってはる。」

「でも、できれば京都の地酒で落としたかった。」

先生が微笑む。

「なるほど。」

「京都の中で頭一つ出てたのが、蒼空です。」

「さわや松本も候補でしたけど、味で言えば蒼空。」

「高いけど、確実に刺さる。」

先生がグラスを置く。

「しかも伏見。」

「そうです。」

博子はうなずく。

「伏見のお酒っていうことで、“次は伏見行きましょうか”っていう匂いを残せる。」

「選ばせる、けど、落としどころはこっち。」

先生が笑う。

「設計ですね。」

「でも設計感は出さない。」

博子も笑う。

「そうです。」

「そのあと、五条の創作イタリアン。」「古民家改装の店です。」

「昼で8,000円のコース。」「夜やったら15,000円ぐらいするやつを、昼に優雅に。」

先生がうなずく。

「時間帯のズラし。」

「はい。」

「リザーブでパスタ2種類、肉と魚も半分半分。」

「詰め込みすぎない。」「“ちょっとずつ”を楽しむ。」

博子は少し表情を柔らかくする。

「で、奥にね。」

「有閑マダムとダンディーなおじさまがワイン一本開けて、のんびりしてたんです。」

先生が笑う。

「それはいい教材ですね。」

「偶然やけど、最高の演出でした。」

博子は続ける。

「“こういう贅沢の仕方あるよね”って、言葉にしなくても伝わる。」

「派手じゃないけど、豊か。」

先生が深くうなずく。

「それは確かに気づきになりますね。」

「たまたまやけど、あのお二人がいたのは大きかったです。」

「空間ごと提示できた。」

博子は一口飲む。

「そのあとタクシーで御所の東側、鴨川。」「数百メートル先は出町柳で観光地。」

「でもあえて外す。」

先生が感心したように言う。

「観光地に行かなかった。」

「案としてはありましたよ。」

博子は指を折る。

「京セラ美術館からロームシアター。」「平安神宮。」

「二条城と御金神社。」「その周辺のフレンチ。」

「いくつか案は持ってました。」

先生が目を細める。

「でも選ばなかった。」

「はい。」

「今回は社長の気分に合わせました。」

「ロジカルでアクセク働いてる人やったんで。」

「観光より、余白。」

博子は静かに続ける。

「鴨川で酒広げて。」

「私の肉じゃがと山うに豆腐。」「風を感じてもらう。」

先生がぽつりと言う。

「アクセクの外ですね。」

「そうです。」

「観光をメインに置くなら、観光でいい。」

「でも今回は、“気づき”をメインにした。」

先生がしばらく黙る。

そして、ゆっくり言う。

「安易に観光地に行かへんところが、博子さんらしい。」

博子は少し照れる。

「観光地行っても、多分何か仕掛けますけどね。」

先生が笑う。

「でしょうね。」「でも、まず“女の子から提案してくる”のが少ない。」

「男同士の接待じゃないですから。」

博子はうなずく。

「キャバ嬢は普通、全部男にやらせます。」「予約も、段取りも。」

「どこそこ行きたい、あそこ行きたい、って。」

先生が真面目な顔になる。

「それが今、キャバクラ業界が厳しい理由かもしれませんね。」

「多分。」

博子は続ける。

「視点を下げて。」「お金じゃなくて。」

「気づきとか、価値観の揺さぶり。」

「そこをプラスできるかどうか。」

先生がグラスを持ち上げる。

「だから東京の人たちは、博子さんに価値を感じる。」

「気づきを提供してくれる。」

博子は静かにうなずく。

「案は一つじゃない、ってことも言いました。」

「社長に合わせて選んでるって。」

先生が笑う。

「それが一番大事ですね。」

「一択しかない人と、複数案から選ぶ人は違う。」

博子はグラスを合わせる。

「設計は、相手基準です。」

先生はにやりとする。

「いやあ。」「設計会議、面白い。」

博子は少し息を吐く。

話しながら、自分でも整理できているのを感じる。

余白。体験。匂いを残す。選ばせる。設計感を消す。

先生が最後に言う。

「ロジカルで攻めてる分。」

「博子さんの余白は、刺さります。」

博子は静かに笑った。

「じゃあ、もう一杯いきます?」

設計会議は、まだ続く気配だった。

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