社長の帰宅。博子とのやりとりが刺さる。今日は80点。機嫌よく帰れる。
社長はグラスをくるくる回しながら、ふっと笑った。
「正直な。」
博子は姿勢を少し正す。
「今日はな、3セットぐらいで帰る。」
「はい。」
「でもこうやって4人でトリプル指名で飲ませてもらって。」
アルカちゃんとさきちゃんが一瞬だけ背筋を伸ばす。
「座組みも聞けた。」
「俺もある程度の概要は東京で紹介できる。」
博子は静かにうなずく。
「明日次第やけどな。」
「はい。」
「ちゃんと握らせるもんは握らせようと思っとる。」
その言い方は軽いが、本気だ。
「東京でな。」
社長は続ける。
「一晩100万使うとか普通や。」
アルカちゃんとさきちゃんが思わず目を見合わせる。
「往復新幹線グリーンで、ホテル取っても5万や。」
「一人あたりな。」
博子は頭の中で計算する。
「飲みに来たって、博子はバンバン飲ませるタイプちゃう。」
「はい。」
「一人10万行ったらええとこやろ。」
「……。」
「3人で50万ぐらいか。」
社長は肩をすくめる。
「でも50万余るやん。」
場が一瞬静まる。
「それぞれ10は握らせるわ。」
アルカちゃんとさきちゃんの呼吸が少し止まる。
「そっから上は社長たちに任せる。」
博子は表情を変えずに聞く。
「半日の座組みやな。」
「組んでもろて、やればええ。」
社長は博子を見る。
「これがハマれば。」
「はい。」
「俺もそういう社長らと適度に飲みに行く。」
「仲良くしたいやつ呼んで、接待で使う。」
博子は心の奥で震える。
「調べ物とか金かかるなら。」
「博子経由で言え。」
「でも全部は明日次第や。」
社長は少し笑う。
「俺が豪慢やってこともわかっとる。」
博子は苦笑する。
「最初表情硬かったやろ。」
「正直、何言われるんやろって。」
「せやろな。」
社長は肩をすくめる。
「でもな、色々飽きとるんや。」
「……。」
「六本木・銀座でのキャバの札束の殴り合いに。」
アルカちゃんとさきちゃんが少しだけ目を伏せる。
「地方向いて、なんか違う球取れへんかなと思ったら。」
社長は博子を見る。
「なかなかの変化球来た。」
博子は小さく笑う。
「満足しとる。」
その一言が重い。
「明日、肉じゃがも食えるわけやろ?」
「はい。」
「色出してきとる。」
社長は評価を始める。
「今日のテッサ、ふぐ。」
「大阪観光としては50点。」
博子は笑う。
「厳しい。」
「評価のしようがない。」
「でも座組み聞いた段階で80点。」
アルカちゃんとさきちゃんが息を呑む。
「満点は90や。」
「100じゃないんですね。」
「俺の満点は90や。」
社長は笑う。
「でも80は出してくるやろ。」
博子は真剣に聞く。
「今日はご機嫌で終われて良かった。」
「ありがとうございます。」
社長は少し声を落とす。
「でもな。」
「はい。」
「これ、継続するからな。」
ヒロコの胸が少しだけ締まる。
継続。更新。社長は続ける。
「一回当てるだけやない。」
「更新できるかや。」
博子は深呼吸する。
「正直。」
「うん。」
「継続とか更新は難しいと思ってます。」
社長は目を細める。
「どういうことや。」
「東京の方って。」
博子は言葉を選ぶ。
「お金は使っていただける。」
「せやな。」
「でも関係を深めるには。」
博子ははっきり言う。
「引き出しが枯れたら終わる。」
アルカちゃんとさきちゃんが静かに聞いている。
「週に何回も来れないじゃないですか。」
「地方やしな。」
「だから1回1回。」
博子は続ける。
「楽しいって点数つけてもらわないと。」
「来てもらえないと思ってます。」
社長は無言。
「金額的に間違いなく熱い関係。」
「でも物理的距離がある。」
博子は正直に言う。
「だから毎回、勝負です。」「緊張します。」
しばらく沈黙。
社長はゆっくり笑う。
「ええ心がけや。」
博子は目を上げる。
「更新意識できとる。」「慢心してへん。」「それや。」
社長はグラスを持ち上げる。
「80点出せるやつはな。」「更新できるやつや。」
博子は静かにグラスを合わせる。
内心は、まだ震えている。継続。更新。
一回の勝負より、ずっと難しい。でも逃げない。
社長は立ち上がる。
「明日、楽しみや。」
博子は深く頭を下げる。
「お待ちしてます。」
ネオンが揺れる。勝負はまだ終わらない。
明日は肉じゃが。そして更新の始まりだった。




