帰りの新幹線男性陣の感想。六本木よりも価値もあり気づきもあった。定例化やな
新大阪を出た新幹線が、ゆっくりとスピードを上げていく。
三人は指定席のテーブルを挟んで向かい合い、博子から渡された山崎と白州の
ミニボトルをそっと並べた。
「ほんまに紙コップまで用意してるの、えぐいよな」
幹事社長が苦笑する。
コンビニで買った炭酸を開け、氷は駅の売店で調達した。簡易ハイボールが出来上がる。
シュワ、と炭酸が立ち上る音。
「……しみるな」
誰かがぽつりと言う。
最初は軽口だったのに、しばらく無言になる。
窓の外が流れていく中、ぽつぽつと言葉が出てくる。
「今回は、めっちゃしみたな」
「ああ」
六本木で一晩に四、五十万開けるのはざらだ。
本気の日なら百もある。
けれど、それはだいたい一夜で終わる。
「ああ、使い過ぎたな」
それで終わる。
「今回、初日は往復の新幹線とホテル込みで、まあざっくりそれぐらい使ってるよな」
「うん。トータルで見たらちょうどええ」
「二日目に関しては、完全オフみたいなもんやのに、あそこまでやってくれて」
「しかもほぼ金かからん」
「正直、あれぐらい包んでやってもよかったなって思ってる」
幹事社長がハイボールを一口飲む。
「それでも、六本木であの動きしたら、余裕で百いくぞ」
「間違いない」
「今回はざっくり九十ぐらいやろ?」
「うん。それでもペイできてる感覚ある」
なぜか。
三人とも、答えは同じだった。
「気づきが多かった」
「ああ、それや」
「六本木やと、一晩で終わる。金で終わる。でも今回は、なんか……残った」
設計。あの言葉が頭をよぎる。
「博子ちゃん、現状把握能力やばない?」
「秘書に欲しいレベル」
「20歳であれはえぐい」
笑いながらも、本気だ。
「あれ、俺ら個別でも使えるぞ」
「どういう意味?」
「例えばさ、うちの税理士との会食とか、横の案件とか。あの“座組”の発想、使えるやろ」
「なるほどな」
単なるキャバクラの遊びではなかった。
「東京であれやってくれる子、いないよな」
「いない。基本“あそこ行きたい、ここ行きたい”や」
「設計は全部俺ら」
「金払って、設計までさせられるって、地味にだるい」
三人で笑う。
「かゆいところに手届きすぎやろ、あの子」
「優秀すぎる」
「マジで優秀」
しばらく沈黙。
新幹線は京都を過ぎる。
「俺ら三人で行くのもありやけどさ」
「うん」
「東京から誰か連れてくる案件、あの子らに回してもらうのもありちゃう?」
「それな」
「俺らが遊ぶ以外の案件も、あの子ら回せるやろ」
「絶対喜ぶやろな」
ビジネス脳が動き出す。
「でも、枠押さえとかなヤバいぞ」
「間違いない。あれ回せる体制できつつある」
「税理士案件もある言うてたな」
「ニーズ複数ないと無理って言うてた」
幹事社長が笑う。
「経営者やん」
「完全に経営者」
ハイボールが半分ほど減る。
「札幌とか博多で、あれできたら最高やけどな」
「探すのマジでだるい」
「しかも、見つかっても値段跳ねる」
「銀座であれやろう思ったら、えぐいぞ」
「六本木も、なんか最近チープに感じるな」
「金の殴り合いに慣れすぎた」
しばらく無言。
「でも、手頃感が絶妙やったな」
「高すぎず、安すぎず」
「ちゃんと価値に対して払ってる感覚ある」
幹事社長がミニボトルを持ち上げる。
「それにしても、このハイボールもうまいな」
「帰り道に設計されてるのがまた腹立つ」
「最後まで余韻作ってくる」
三人で笑う。
「次、山崎のウイスキー工場もありやな」
「体験系、もっと掘れるやろ」
「ボートも良かったし」
「中之島のあのオムライスもな」
「1200円であれは反則や」
また笑い。
「体験メニュー、どんなん出てくるか楽しみやな」
「毎回テーマ変えてくるやろ」
「それが設計や」
「ハマるな、これ」
幹事社長が静かに言う。
「二週に一回ぐらい、いけるか?」
「毎週はきつい」
「でも月二ならありや」
「枠押さえとかな」
東京駅が近づくアナウンスが流れる。
最後の一口を飲み干す。
「なあ」
幹事社長が言う。
「六本木で百使うより、こっちで1泊2日で九十使った方が、俺は満足度高いわ」
「俺も」
「俺もや」
窓の外に東京の夜景が見え始める。
「次は、山崎行くか」
「体験系、攻めよ」
「設計士にまた頼もう」
三人は、紙コップを静かに重ねた。
その余韻ごと、東京へ戻っていった。




