博子は社長たちに山崎と白州のセットと紙コップを手渡す。お別れ後女子同士で軽く感想言い合う
新大阪駅の改札前。発車ベルまで、あと十分。
男三人は切符を確認しながら、どこか名残惜しそうに立っている。
博子は、トートバッグの中をそっと探った。
「社長、ちょっといいですか?」
「ん?」
博子が取り出したのは、小さな紙袋。
中には、山崎と白州のミニボトル。
それに、透明な紙コップが三つ。
「え?」
幹事社長が目を丸くする。
「これ、山崎のウイスキー工場で、実際に飲んで美味しかったやつです。
私たち三人で、ちょっと見つくろいました」
「……ここまで用意してくれんの?」
「あと、炭酸は駅の売店で買ってください。ハイボールで、
帰りの新幹線、ちょっとだけ余韻に浸ってください」
そう言って、紙袋を手渡す。
「最後はハイボールを飲みながら帰る、っていう設計になってます」
三人が顔を見合わせる。
「設計って言葉、ほんま好きやな」
「いや、でもこれはやられたな」
幹事社長が、袋を覗き込む。
「山崎と白州のセットかい。しかも紙コップまで……」
「ちゃんと三人分ありますから。喧嘩しないように」
「ははは」
一人がぽつりと言う。
「これ、次ウイスキー工場、候補に入ってくるよな」
「入るやろ。入るに決まってるやろ」
盛り上がる三人。
博子は、にこりとする。
「その時は、また設計します」
「怖いわ、ほんま」
発車案内が流れる。
「じゃあ、ほんまにありがとうな」
「こちらこそです」
三人が改札を通る直前、幹事社長が振り返る。
「最後にもう一つ」
ポケットから、封筒を取り出す。
「これは、今回の分や」
それぞれ、博子、さきちゃん、アルカちゃんに手渡される。
重みで、中身はだいたいわかる。
「開けんでもわかるやろ?」
「……」
博子が軽くうなずく。
「博子14。さき13。アルカ13」
「博子ちゃんが一番多いのは設計代や」
「設計代……」
博子は苦笑する。
「六本木で三人で50万飲んだ想定で、だいたいこんなもんやな」
幹事社長が言う。
「向こうで50使うより、こっちで40使った方が満足度高い」
「今回みたいなのが続くなら、金額足すか、頻度上げるかやな」
三人の男たちが、真顔になる。
博子は、少しだけ間を置いて言う。
「できれば、頻度を上げてください」
「ほう?」
「額が上がって期待値が上がるより、この感じを継続的にできるほうが、嬉しいです」
「……」
幹事社長が、にやりとする。
「また設計してくれるんやろ?」
「もちろん」
「じゃあ、1ヶ月に1回……いや、3週間に1回ぐらいか?」
「それぐらいが、ちょうどええかもしれませんね」
「決まりやな」
「決まりやな」
三人が笑う。
「ほな、次はどこや?」
「それは、またLINEで」
「ほんま怖いわ、この子」
改札の向こうへ消えていく三人。
手には、山崎と白州のミニボトル。
博子たちは、しばらくその背中を見送る。
新幹線がホームに入る音が、遠くから響く。
アルカちゃんが、小声で言う。
「最後のお土産、効いたな」
「効いたね」
さきちゃんが、封筒を軽く指で弾く。
「博子ちゃん、14やん」
「設計代やて」
「妥当やろ」
博子は、封筒をバッグにしまいながら、静かに言う。
「これで、次もハマってくれたらええな」
「もう片足は入ってるやろ」
「両足ちゃう?」
三人で笑う。
「でも、油断せんとこな」
「うん」
新幹線が動き出す。
ホームの空気が少し軽くなる。
博子は、深く息を吐く。
「とりあえず、今回は上出来」
「上出来やな」
「次の設計、考えとくわ」
山崎と白州を抱えて帰る三人の姿を思い浮かべながら。
この余韻が、新幹線の中でハイボールに変わる。
そして、また大阪に戻ってくる理由になる。
博子は、次の一手を、もう考え始めていた。




