東京社長3人組。博子の設計に脱帽。明日日曜日のアフターに期待しかない
夜の北新地を抜けて、三人は並んで歩いていた。
ネオンの光がアスファルトに滲んで、少し湿った空気がまとわりつく。
「いや、今日の設計、良かったな」
幹事社長がポケットに手を突っ込みながら言う。
「ほんまそれ」
天ぷら社長がすぐ返す。
「同伴からの三セット、あれ普通ちゃうぞ」
イタリアン社長も笑う。
「博子ちゃん、現状把握能力高すぎやろ。うちの秘書に欲しいわ」
「二十歳であの座組み考えられるって、えぐいで」
三人とも、今日の流れを反芻している。
それぞれの同伴。それぞれの店。
そして合流してからの三セット。
「六本木と全然ちゃうよな」
幹事社長が言う。
「全然違う」
「向こうはメイン一人で、あとは回すだけやもんな」
「三人で飯食って、ボトル入れて、気づいたら五十万超えとる」
イタリアン社長が指折り数える。
「今日なんぼや?」
「ざっくり四十ちょいちゃうか?」
「往復の新幹線十万としても、同伴三万、店で二十五万くらいか」
「それでこの満足度やぞ」
三人とも笑う。
「コスパえぐい」
でも、それは単純に安いからではない。
「設計やな」
幹事社長がぽつりと言う。
「流れが気持ちよかった」
最初から最後まで、無理がない。押し売りもない。
なのに、ちゃんと金は使っている。
「しかも観光込みやしな」
「大阪の街も楽しめた」
「川沿いのイタリアンも、天ぷらも、あのおばんざいも」
思い出しながら、それぞれ頷く。
「六本木で同じ金使って、ここまで記憶残るか?」
「残らん」
「ほぼ覚えてへんこと多い」
三人で苦笑する。
「これ、ハマるな」
幹事社長が小さく言う。
「正直、六本木で遊ぶより、こうやって遠征した方がええんちゃうかって思ってもうてる」
「大阪がええんやなくて」
天ぷら社長がすぐ訂正する。
「博子ちゃんがええ」
「それや」
イタリアン社長も頷く。
「接待設計士や」
三人で笑う。
「お金落とさんでいいですよ、みたいな空気も絶妙やったな」
「押してこんのに、落としたくなる」
「危ないタイプや」
でもそこで、幹事社長が少し真顔になる。
「ただな」
「博子ちゃん単品でお手当て増やすとかは、あかん」
「三人のバランス崩れるな」
今日の座組みは三人で回してこそ成立している。
誰か一人だけ抜け駆けしたら、空気は変わる。
「個人的にはな」
イタリアン社長が笑う。
「充実させたろかなとは思うけど」
「わかる」
「でもやるなら、次の座組み設計込みやな」
幹事社長がまとめる。
「設計料や」
三人がまた笑う。
ホテルの近くまで来る。
ネオンが減って、少し静かな通りに入る。
「それにしても」
天ぷら社長が言う。
「今日だけで、あいつのやばさわかったな」
「経営者感覚半端ない」
「二十歳であれは反則や」
博子が言っていた言葉を思い出す。
ニーズが複数あるから成立する。
横の連携が取れる子がいないと無理。
余裕がある子じゃないと回らない。
「あれ、自分の商品理解してるやつの喋り方やった」
幹事社長が言う。
「普通の女の子の発想ちゃう」
「社長目線や」
「だからハマるんやな」
ホテルのエントランスが見えてくる。
「明日次第やな」
イタリアン社長が言う。
「明日で確信になる」
「明日まで含めて完成形やろ」
「二日間でこの価格なら、普通にお釣り出る」
幹事社長がドアの前で立ち止まる。
「大阪がええんやなくて」
もう一度言う。
「博子ちゃんがええ」
二人が頷く。
「これ、定例化あるな」
「東京三人組・大阪遠征枠」
「ええやん」
軽く笑い合う。
「明日、楽しみやな」
「完全にハマりかけてる」
「もう片足入っとるわ」
そう言いながら、三人はホテルの中へ入っていった。
大阪の夜はまだ終わっていない。
でも三人の中では、今日の評価はすでに決まっていた。
これは“当たり”。
そして明日、さらに深くなる予感しかしなかった。




