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東京組の接待1日目が綺麗に終わる。女性陣の反省会

そうやって色々話しているうちに、3セットが静かに終わる。

店内の照明も少し落ち着いて、さっきまでの高揚感が、ふわっと余韻に変わる。

幹事社長がグラスを置いて言う。

「いや、正直もうちょいおりたいな」

イタリアン社長も頷く。

「この感じで回せてるって、普通ちゃうやろ」

天ぷら社長がふと笑う。

「博子ちゃんもすごいけどな、さきちゃんもあるかちゃんも、やっぱすごいで」

博子は小さく首を振る。

「ほんまにそうなんです。今日の流れ、私ひとりじゃ無理です。三人やから成立してるんです」

それは営業トークではなく、本音やった。

横の呼吸が合ってなければ、ここまで滑らかには回らない。

「なんかこのままダラダラ喋るんもありやなあ」

幹事社長が言うと、場が少し揺れる。

けれど博子は、静かにグラスを置いた。

「いや、ここで切っといてもろて」

三人が顔を向ける。

「帰りの道々で、反省会の反省会でもされたらどうです?」

「反省会の反省会?」

「今日の良かったとことか、明日の段取りとか。明日もあるし」

幹事社長が腕を組む。

「一理あるな」

博子は続ける。

「こっちはこっちで、明日があるから丁寧にやりたいんです。最後、新大阪でお見送りするまでが、

私らの接待やと思ってるんで」

「そこまで含めてか」

「はい」

天ぷら社長が笑う。

「それ言われたら帰らなあかんな」

イタリアン社長も立ち上がる。

「明日もあるしな」

ということで、今日の3セットはここでお開きにさせてもらいます、と博子が締める。

店の前まで出て、ちゃんと三人を見送る。タクシーに乗り込む前、明日の集合時間を最終確認。

「朝の集合、あの時間で間違いないですね」

「大丈夫や。楽しみにしとる」

ドアが閉まり、車がゆっくりと動き出す。

博子は小さく息を吐いた。

そのまま店の裏手で、アルカちゃんとさきちゃんと合流する。

「いや、今日の座組、良かったな」

さきちゃんが言う。

「うん、ちゃんとハマってた」

アルカちゃんも頷く。

「博子ちゃんが、あの座組の意味をちゃんと言語化してくれたの、でかいわ」

博子は少し首を傾げる。

「そう?」

「うん。向こうからしたら、なんとなく楽しい、やなくて、“意味がわかった”って顔してたで」

「それはあるな」

さきちゃんが言う。

「使いたいって感覚、めっちゃ出てた」

博子は苦笑する。

「種は蒔いどいた、って感じかな」

「3、40使うんはもう普通やろな」

アルカちゃんがさらっと言う。

「問題は明日やな」

「うん」

「お手当て、どのくらい入れてくれるか」

そこはリアルな話やった。

博子は今日のやり取りを思い返す。

「ボトル下ろす話のとき、ちゃんと言うといたやろ?」

「ああ、後ろに回してほしいって」

「うん。ボトルの金額よりも、お手当てに回してもらえる方が嬉しいって」

さきちゃんが笑う。

「帰ってからの“答え合わせ”やな」

「そう」

今日の響一本は象徴や。でも実入りは、明日の設計とお手当ての積み上げ。

「明日、丁寧にいこ」

アルカちゃんが真顔で言う。

「今日の流れ、絶対崩したらあかん」

博子も頷く。

「今日はちょっと種蒔いただけ。明日ちゃんと育てる」

三人で顔を見合わせる。

「ほな、今日はここまでやな」

「うん。明日あるし」

いつもより一時間早く切り上げる。

無理して延ばすこともできた。でも延ばさない。

“余白”を残すのも設計のうちや。

更衣室で着替えながら、博子は静かに思う。

今日の成功は偶然ではない。でも、継続は別問題。

油断せず。浮かれず。明日の仕上げまでが、この企画。

外に出ると、夜風が少し冷たい。

スマホを見ると、社長たちのグループLINEに一言入っていた。

「今日最高。明日も頼む」

博子はそれを見て、ふっと笑う。

「よし」明日は本番。今日は一時間早く終わる。

整えて、寝て、備える。この座組を一過性で終わらせないために。

三人はそれぞれの方向へ散っていく。

そして博子は、静かな夜道を歩きながら、明日の流れを頭の中で何度もなぞっていた。

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