土曜日。東京社長3人組を博子達3人で個別同伴→店集合で接待。負けられない戦いがある
金曜日のフリーを流して、静かに締めたあと。
土曜日の朝は、目覚ましもかけずにゆっくり起きた。
今日は勝負の日。とはいえ、朝から気合いを入れすぎると夜までもたない。
昼までは徹底的にゴロゴロする、と決めている。
布団の中でスマホを開き、東京三人組のLINEに一本だけ送る。
「本日はよろしくお願いします。大阪満喫してくださいね♪」
すぐに既読が三つ。
「めちゃくちゃ楽しみにしてます!」
「大阪でこんな設計された接待初めてです」
「今日は忘れられへん夜にしましょう」
テンションが高い。
博子は短く返す。
「お待ちしてますね♡」
それ以上は書かない。熱量に引きずられない。
昼過ぎまで体を休め、夕方前にシャワー。メイクは少し丁寧に、でもやりすぎない。
今日は“自分が目立つ日”ではなく、“回す日”や。
待ち合わせは淀屋橋寄りの川沿い。
博子が着くと、すでに三人組は揃っていた。
きちんとスーツで、少しだけ落ち着かない様子。
そして、その少し後ろに――
さきちゃん。アルカちゃん。
今日は六人で顔合わせや。
「今日はよろしくお願いします」
博子が言うと、三人とも丁寧に頭を下げる。
「こちらこそです!」
幹事社長が言う。
「大阪でこんなに手厚く迎えてもらえるとは思ってなかった」
博子は横目でさきちゃんとアルカちゃんを見る。
軽くうなずき合う。
今日は三人を、一人ずつ、別々に。
最初に軽く全体で話す。
「今日はそれぞれ違う店に行きますので」
博子が説明する。
「テーマは“東京にない時間”です」
三人が少しざわつく。
「東京にない?」
「派手な店は東京のほうが多いですからね」
博子は笑う。
「今日は東京の夜とは違う“でこぼこ”を楽しんでもらえたら」
さきちゃんが続ける。
「私は天ぷらです。カウンターで、揚げたてをゆっくり」
アルカちゃん。
「私は川沿いのイタリアン。夜景とワインでゆっくり」
博子は自分の番。
「私はおばんざい。ナスの煮びたしとか、揚げ出しとか。派手じゃないけど、沁みるやつです」
三人組が顔を見合わせる。
「全部違うんですね」
「だから反省会ができるんですよ」
博子が言う。
「後で店で集合して、どれが一番良かったか、ゆっくり話してください」
幹事社長が笑う。
「それ、めちゃくちゃ面白いですね」
博子は心の中で小さく頷く。東京ではなかなかやらない設計や。
六本木や銀座は、“一番いい席を誰が取るか”の戦い。
今日は、“どの体験が一番沁みたか”の共有。それが新鮮になるはず。
川沿いの風が吹く。
「では、そろそろ」
さきちゃんが一人を連れて歩き出す。
アルカちゃんも、川沿いへ。
博子の前には、幹事社長。
「博子さんのおばんざい、めちゃくちゃ楽しみです」
「期待しすぎないでくださいね」
「いや、もう設計の時点でワクワクしてます」
博子は少しだけ緊張する。
自分の店は決めている。ナスの煮びたし。
里芋の煮っころがしの揚げ出し。出汁の香り。
東京では出てこない、地味で丁寧な時間。
さきちゃんとアルカちゃんの具体的な料理までは把握していない。
あえて細かく共有していない。
被らないことだけ確認して、あとは“ものの流れ”に任せる。
それぞれの感性で作る同伴。
博子は歩き出す。少しだけ鼓動が早い。
三人を別々に回す。夜に再集合。その後、どう転がるか。
忘れられへん夜、はじまるで。
暖簾の見える路地へ、博子は幹事社長を案内する。




