表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/724

日曜日、昨日の疲れが出るwww昼から会計士先生と山崎ウイスキー工場店外

日曜日。昨日の“イキリ社長”の3セット分の疲れが、朝になってどっと出た。

体は正直やな、と博子は思う。頭はまだ回るけど、身体が少し重い。

 今日は無理せんとこ。

 そう決めて、昼までゴロゴロ。スマホも極力見ない。コーヒーを淹れて、ソファでぼんやり。

 昨日の会話を反芻しながら、でも深く考えすぎない。

 今日は“足す日”や。吐き出す日やない。

 待ち合わせは13時、大阪駅。

 昼のランチは、あえて何も組まなかった。

 できることはあった。でも、それは会計士先生にサービスしすぎやし、バランス崩す。

 それに――おじいちゃんのとき、飯食わんかったからええやろ。

 博子はスニーカーを履き、軽めの服装で家を出た。今日はちゃんと歩く日や。

 大阪駅に着くと、遠くから手を振る人影が見える。

「博子さん!」

 会計士先生、めちゃめちゃテンション高い。

「今日めちゃめちゃ楽しみにしてたんですよ!よろしくお願いしますね!」

「こちらこそ。そんなに楽しみにされると、プレッシャーですけど。」

「いやいや、もうこのために今週頑張ったと言っても過言じゃないです。」

 相変わらず分かりやすい。その素直さが、この人の強みやな、とヒロコは思う。

 二人は快速に乗り込む。日曜昼の車内は、ほどよい混み具合。

 窓の外が流れていく。

「なんか、あれですね。」

「何がですか?」

「出張でちょこちょこ各地行くんですけど、こうやって普通に電車乗るだけでテンション

 高いの、久しぶりですわ。」

「仕事やと移動もタスクやもんな。」

「そうなんですよ。移動時間=資料読む時間とか、メール返す時間とか。

 今日みたいに“移動が目的の一部”って、なんか贅沢ですね。」

 高槻を過ぎ、山崎へ。

 電車が少し空いてくる。空気もどことなく変わる。

「今日はね、ちょっと歩こうと思ってて。」

 博子が言うと、先生はきょとんとする。

「歩く?」

「はい。ちゃんとスニーカーで来てるんです。山崎のウイスキー工場まで15分ぐらいあるんで、

 せっかくやからのんびり行きましょう。」

「確かに。タクシーでサッと行くより、その方がいいかもですね。」

 山崎駅に降りる。

 少し湿った空気。山と川の匂いが混じる。

「ええですね。」

「トカイナカ、って感じでしょ?」

「ほんまそれです。なんか…落ち着く。」

 二人は線路を渡り、ゆっくり歩く。

 ジャケット姿の先生と、軽装の博子。

 不思議な組み合わせやけど、どこかしっくりくる。

「普段、ロジカルロジカルで喋ってる分、こういう時間ってあんまり

大事にしてないなと思うんです。」

 先生がぽつりと言う。

「若いうちって大体そんなもんちゃいます?」

「博子さんもですか?」

「私も。売れへん時は焦りしかなかったし、今は今で設計やらバランスやら考えてるし。」

「なるほど。」

「でもな、こういう“何も生まれへん時間”が、意外と一番残りますよ。」

「…深い。」

「いや、適当に言うてるだけや。」

 二人で笑う。道沿いに緑が増えていく。蒸溜所のレンガ色の建物が、遠くに見えてくる。

「あ、見えた。」

「来た来た。」

 先生の目がきらきらしている。

「なんか、テーマパーク来たみたいですね。」

「大人のテーマパークやな。」

 大きな工場の佇まい。重厚な門。歴史を感じる外観。

 先生はしばらく無言で眺める。

「…これだけでテンション上がりますね。」

「やろ?」

「仕事の数字とか、会計基準とか、そんな話ばっかりしてると、

自分が“作る側”やなくて“整理する側”やなって思うんですけど。」

「うん。」

「ここは、ちゃんと“作ってる”感じがする。」

「だからええんでしょうね。」

 風が少し吹く。

 博子も胸の奥が静かに高鳴るのを感じていた。

 おじいちゃんと来た時とは、また違う感情。

 今日は、未来に向けた種まきの時間。

「さあ、行きましょうか。」

「はい。」

 二人は顔を見合わせて、小さく笑う。

 重い扉の向こうへ。大きな工場の世界へ。

 テンションが上がる二人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ