イキリ社長に来週の東京社長3人組への接待の設計を話し博子たちとの遊び方をレクチャーするとウケた!
さっき外したフリーの子の顔が、頭の片隅に残っている。あとでちゃんと謝らなあかんな、
と思いながらも、いまは流れを崩せない。黒服から「ちょっと横柄や」と聞いている以上、
布陣は慎重に組む必要がある。
「さきちゃん、アルカちゃん、入ってもらってええ?」
二人が軽くうなずいてタクに入る。空気が一瞬だけ締まる。
「来週の土曜日、東京の社長さんたち三人をお迎えします。」
博子が説明を始める。
「前回は、北極星の本店に行きました。昔ながらの洋食屋さんの雰囲気で
オムライス食べて、難波の八坂神社寄ってぶらぶらして、半日プランって感じでした。」
「ほう。」
イキリ社長が腕を組む。
「今回は三人それぞれ指名いただいてるので、私とさきちゃんとアルカちゃんで、
店前同行します。行き先はそれぞれ違う店にして、最後はお店で集合。どこ行ったか、
どう遊んだか、答え合わせする流れです。」
「おもろいやん。」
「日曜日はまた別々に動いて、新大阪で合流してお見送りです。」
部下たちがざわつく。
「例えば?」
「お好み焼きとか、吉本とか。」
「私は中之島の公会堂オムライスとか、北浜のアフタヌーンティー、水上バスもありかなって。」
「へえ。」
「さきちゃん、アルカちゃん、どう?」
アルカちゃんが一歩前に出る。
「私、お好み焼き体験行こうかなって思ってます。お初天神の近くに“ゆかり”ってお店あって、
3,500円で体験講座あるんです。」
「体験型か。」
「自分で焼くの、外国の方でも喜びますし。」
部下が笑う。
「それええな。」
さきちゃんは少し考えてから言う。
「私は吉本も捨てがたいけど、普通のデートもいいかなって。大阪駅裏の半個室焼肉、
4,000円ぐらいで映えるとこあるんです。」
「ほう。」
「都会の真ん中でゆっくり焼肉、悪くないですよ。」
部下たちが「それ行きたい」と盛り上がる。
「で、最後は新大阪集合。帰りの新幹線で答え合わせです。」
「なるほどな。」
「もちろんアフターケアで動くので、お手当ては多少いただきます。」
「それはしゃあない。」
イキリ社長は頷く。
「でも俺はウイスキー工場やな。」
「山崎ですか?」
「ワンチャン仕入れたら、この店の代、全部ペイできるやろ。」
「賭けですけどね。」
「18年買えたら?」
「一本までやと思います。なかったら12年を複数とか。」
「テイスティングは?」
「前回は三杯まで。山崎18年と白州18年、飲みました。」
「味どうや?」
「深いです。体験だけでも価値あります。」
「俺も味わいたいわ。」
「来週は埋まってますので、1カ月後ぐらいで入れていただければ。」
「1カ月待つか。」
社長は笑う。
「煽らんし、設計ちゃんとしてる。六本木の子らに見習わせたいわ。」
「ありがとうございます。」
「金の使い方変わるな。」
「派手より継続です。」
「よし、ボトル何本か下ろすわ。」
「何にします?」
「記念にアルマンド。」
メニューを見て、社長が眉をひそめる。
「半額かい。」
ヒロコが静かに言う。
「それやったら、来月の楽しみに取っておきません?」
「ほう?」
「山崎と白州と森伊蔵、5万×3とか。」
「100万使う言うてたのに値引きさせるんかい。」
「二回分に分けた方が楽しいです。」
社長は大きく笑う。
「それも心地ええな。六本木で一晩より、大阪で二回の方が安いか。」
「かもしれません。」
「よし、1カ月後ウイスキー行くとして、その前にもう一回来るわ。」
「お待ちしてます。」
「部下連れて来るのは別日でええ。俺一人で遊びに来る。」
「その時、またいろいろ話しましょう。」
「引き出し、これだけちゃうやろ?」
「まだありますよ。」
卓の空気が和らぐ。さきちゃんとアルカちゃんも自然に会話に溶け込む。
煽らず、下げすぎず、でも逃げない。
“設計”という言葉が、ゆっくりと場に染みていく夜やった。




