遺品整理の社長お見送り後、東京のイキリ社長が部下を引き連れ来店。高圧的
遺品整理の社長を見送ったあと、少し一息つこうと思った瞬間、黒服が小走りで近づいてくる。
「東京の社長さん、例の方、来てはります。部下さんも何人か。」
「ああ……。」
「とりあえず博子呼べ、みたいな感じです。」
黒服が小声で続ける。
「ちょっと横柄やから、気ぃつけた方がええで。」
「了解。」
卓に入ると、東京のイキリ社長はソファに深く座り、部下を両脇に従えている。
「博子、今日はお前がいるから来たんや。」
「ありがとうございます。」
「大阪に仕事あってな。この前の話、面白かったからさ。」
部下がニヤニヤしている。
他の女の子も何人か入る。空気は少し張っている。
「六本木の子はな、あそこまでやらん。」
「何がですか?」
「“1000万使ったらやりますけど?”とか平気で言う。」
博子は苦笑する。
「すごい世界ですね。」
「大阪はどうなん?」
「うちはそこまで煽らないですね。」
社長が身を乗り出す。
「明日空いてたら、どっか案内してくれや。」
博子は静かに答える。
「すみません。明日はもうアフターケア決まってまして。」
「誰や。」
「丁寧に通ってくださるお客様です。」
「今日100万使うつもりで来たんやで。部下の分も合わせて。」
部下がざわつく。
「それでもあかんのか?」
博子は目を逸らさない。
「私は札束で殴るのは好きじゃないです。」
一瞬、場が止まる。
「使っていただけるなら、シャンパン煽るより、ボトル下ろしてゆっくり
してもらって、会を重ねたいです。」
「……。」
「予約も入れていただいて、丁寧にやらないと面白くないと思います。」
社長は少しムッとする。
「俺も二人ならまあええけど、今日は部下もおる。」
「全員でゾロゾロは、正直難しいです。」
周りの女の子も固まる。
でも博子は続ける。
「おいおい考えましょう。」
社長は少し黙り、やがて笑う。
「100万でもなびかん女か。大阪では珍しいな。」
「東京は派手にアルマンドの信号機やるけどな。」
「私は静かにやる方です。」
「逆に面白いわ。」
周囲がホッとする。
「ちなみに明日は?」
「山崎のウイスキー工場です。」
「また面白いことしてるな。」
「会計士の先生と。」
「デートか?」
「デートも兼ねてますが体験の一環です。」
「テイスティングして、土産買うんやろ。」
「そんな感じです。」
「売ってんの?」
「この前も行きました。山崎18年、白州18年。」
「ほう。」
「定価で6万。」
「は?」
「この店で見たら25万でした。」
社長が吹き出す。
「東京持って帰ったら30万やぞ。」
「そうらしいです。」
「俺も仕入れに行こかな。」
「あるかどうかは賭けです。」
「賭けか。面白い。」
部下は半信半疑だが、社長は完全に食いつく。
一方、フリーの女の子たちは少し引き気味。
「なんか俺らだけ盛り上がってるな。」
「ですね。」
「次の週は?」
「東京から社長三人組が来ます。」
「ほう。」
「女性三人で相手して、同伴別々。店で反省会。」
「反省会?」
「日曜集合、別々でデート。新大阪で合流、お見送り。」
「なんじゃそれ!」
社長が爆笑する。
「答え合わせや。」
「俺らもやりたい。」
「ぜひ。」
でもフリーの子たちは、いまいち食いつかない。
「じゃあ、来週やるメンツの子、呼びます?」
「呼べ呼べ。」
フリーの子たちは少し不満そう。
「俺ら、あんま盛り上がってないっすよ。」
博子は黒服に目配せ。
「さきちゃんと、アルカちゃん呼んで。」
二人が入ると空気が変わる。
「この子らと三人で回します。」
「おお。」
イキリ社長は満足そうにグラスを持ち上げる。
「やっぱ大阪おもろいわ。」
博子は静かに微笑む。
煽らず、でも引かず。
次の展開に向けて、静かに流れを作る夜やった




