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土曜日店内で遺品整理社長との会話。勉強になる。壁打ち相手になっただろうか

土曜日、店内に入ると、黒服がいつも通りににこやかに迎えてくれる。

「本日も同伴ありがとうございます。」

「こちらこそ。」

 表情も柔らかい。こういう積み重ねが、空気を作る。

 博子は軽く身なりを整えてから、遺品整理の社長の卓へ向かう。

「お待たせしました。」

「待ってたで。」

 同伴の続きのような自然な流れで席に着く。

「さっきの話もええけどな。」

 社長がグラスを持ちながら言う。

「今日は俺の仕事の話も聞いてくれや。」

「もちろんです。」

「奥さんも聞いてくれるけどな。」

「はい。」

「やっぱり仕事の話、家に持って帰ってもようわかってくれへん。」

「なるほど。」

「外で出す中でもな、キャバ嬢に深い話しても、あんまり返ってこーへん。」

「……。」

「だから博子ちゃんがええ。」

 ストレートや。

「博子比率、結構高いで。」

「ありがたいです。」

 社長は続ける。

「遺品整理だけちゃうねん。」

「はい。」

「リサイクルショップもやってるし、利益出たら不動産買って、社宅に回して。」

「福利厚生ですね。」

「せや。」

 博子は目を細める。

「社員さん大事にしてますね。」

「人がおらな回らんからな。」

 さらに話は広がる。

「税制改正もあるやろ。」

「はい。」

「確定申告もある。」

「考えること多いですね。」

「顧問税理士も弁護士もおるけどな。」

「はい。」

「あいつらは言われたことやるだけや。」

「組み立ては社長ですか。」

「自分で腹決めんと動いてくれへん。」

 博子は真剣に聞く。

「難しいところですね。」

「だから壁打ちや。」

「なるほど。」

「博子ちゃん、ちゃんと返してくれる。」

 少し嬉しい。

「私も今年から確定申告やることになると思います。」

「ほう。」

「なんとなくやっていけば感覚わかるもんなんですかね。」

「わかるわかる。」

 社長は笑う。

「立ち上げた時なんか、適当にボコボコやったで費用の入れ方。」

「怖いですね。」

「どっかで刺されるから。」

「……。」

「でも刺されたら覚える。」

 博子は頷く。

「小規模共済とか。」「セーフティ共済もやな。」

「まだやってないですけど。」

「売上積み上がったらやり。」

「厚生年金基金も?」

「考えといて損はない。」

 博子は真剣に言う。

「指名が安定して、売上がちゃんと積み上がるなら、その辺しっかりしたいです。」

「ほんましっかり者やな。」

「怖いだけです。」

「不安か。」

「はい。」

「それがええ。」

 社長は笑う。

「不安あるやつは勉強する。」

「勉強はします。」

「税金も、共済も、福利厚生も。」

「バランスですね。」

「せや。」

 社長は少し真面目になる。

「儲かったら全部使うやつは一瞬や。」

「……。」

「残す、回す、守る。」

「考えます。」

 博子はふと口にする。

「でも売上増えたら、調子乗る子もいますよね。」

「おる。」

「私は怖いです。」

「博子ちゃんは設計してるやろ。」

「してます。」

「なら大丈夫や。」

「油断しません。」

「それでええ。」

 店内の音楽がゆるく流れる。

 二人の会話は、仕事から税制、福利厚生、将来設計へと広がる。

「社宅買うのもな。」

「はい。」

「社員が安定する。」

「長期的視点ですね。」

「短期で派手にやるのは楽や。」

「長くやるのが難しい。」

「せや。」

 ヒロコは思う。

 この人は、本当に継続を考えている。

 2セット、あっという間に過ぎる。

「今日も勉強になりました。」

「こっちもや。」

「壁打ちですか。」

「せや。」

 社長は立ち上がりながら言う。

「博子ちゃん、焦らんでええ。」

「はい。」

「でも準備はしとけ。」

「します。」

「しっかり者やな。」

 そう言って笑う。

 博子は見送りながら思う。だし巻きの丁寧さと同じや。

 派手さより、芯。

 2セット終わる頃には、ただの同伴ではなく、

 経営談義の時間になっていた。

 学びながら、積み上げる。

 崩さず、焦らず。

 土曜日の夜も、静かに積み上がった。

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