弁護士先生にも税理士先生のグループ体験型店外構想を話すも複雑な感情がでてくる
弁護士先生が落ち着いたころ、博子は少し身を乗り出した。
「なあ、ちょっと相談というか、構想があるねん。」
「また設計か?」
「今回は営業寄りや。」
「聞こう。」
博子はゆっくり話し始める。
「税理士先生はお客さんで来てくれてるねん。おじさまの。」
「うん。」
「その税理士先生がな、一緒に仕事してる保険会社の人を連れてきたいって言うてて。」
「ほう。」
「で、この前な、その人も含めて、女の子と四人で一つの卓についたんよ。」
「四人宅か。」
「でも同伴は別々にした。」
弁護士先生が少し眉を上げる。
「別々?」
「そう。税理士先生は私と。保険会社の人は別の子と。店で合流して、
最後に“反省会”みたいな形で回した。」
「反省会って何や。」
「今日どうやったか、次どうするか、みたいな。」
弁護士先生が笑う。
「それ仕事やん。」
「そう。補正系やねん。」
「補正系?」
「体験型の宴会ってやつ。」
博子は少し楽しそうに続ける。
「例えばな、酒蔵巡りとか。お互いに目的地持って、昼は別々に楽しむ。」
「別行動か。」
「そう。税理士先生は歴史派。保険会社の人は写真派とか。」
「なるほど。」
「ほんで夕方集合して、“どこ行った?”って報告し合う。」
「面白いな。」
「最後はご飯屋で軽く締めて、バイバイ。」
弁護士先生は素直に言う。
「それ、めちゃめちゃ面白そうやん。」
「やろ?」
「俺もそういうことしてみよかな。」
「ありやで。」
「指名がかぶらんかったらな。」
「そこ大事。」
二人で笑う。
「こういう形でな、他にも仲良くなりたい先生たちおるやん?」
「例えば?」
「税理士先生は弁護士先生とか、社労士とかって話していた。」
「俺、今入ったやんwww。」
「職業被ってるだけね。顧問先の先生達。遊びを横に広げるってこと。」
弁護士先生は少し黙る。
「営業上手やな。」
「まあまあ。」
「広く蒔くなあ。」
「種やから。」
「回収どうするん。」
「最終的に戻ってくれたらええねん。」
博子はあっさり言う。
「戻らんかったら?」
「それも遊び。」
弁護士先生は少し考え込む。
「税理士先生はガチちゃうんやろ?」
「全然。」
「おじさま枠か。」
「そう。仕事として捉えてくれてる。」
「経費も?」
「落とそうとしてくれてる。」
「それはありがたいな。」
「ほんまに。」
博子は少し肩をすくめる。
「だから気楽やねん。」
「俺はは不安やけどな。」
「なんで。」
「広げるってことは、誰かが博子を本気になる可能性が広がるってことや。」
その言葉に、少しだけ空気が変わる。
「でもな。」
博子は言う。
「税理士先生は線引きできる人。」
「保険会社の人は?」
「アルカちゃんや。わたしちゃう。様子見」
「俺は?」
「……本気寄り。」
弁護士先生が苦笑する。
「自覚あるわ。」
「あるならええ。」
弁護士先生はしばらく黙る。
楽しそうやん、と言った直後とは少し違う顔。
「横に広げるのはありやと思うで。」
「うん。」
「でもな。」
「でも?」
「自分の軸は決めとき。」
博子はゆっくり頷く。
「軸はある。」
「ほんまか?」
「遊びは遊び。仕事は仕事。」
「俺は?」
「……両方。」
弁護士先生はため息まじりに笑う。
「それ一番あかんやつや。」
「知らん。」
「税理士先生は経費で処理する。保険会社の人は営業で来る。俺は?」
「先生は恋愛感情で来る。」
弁護士先生は少し考え込む。
「それ、面白いけどな。」
「うん。」
「自分がその中におるって考えたら、ちょっと複雑や。」
「正直でええやん。」
「広く蒔くのはええ。でも、俺の席なくなるんちゃうかって考える。」
博子は一瞬、言葉を探す。
「席はなくならん。」
「保証できる?」
「できへん。」
「やろ?」
二人の間に少し静かな時間が流れる。
「でもな。」
博子が言う。
「戻ってきてくれたらええ、って言うたやろ?」
「うん。」
「それは嘘ちゃう。」
弁護士先生はグラスを持ち上げる。
「博子営業上手やな。」
「褒めてる?」
「半分。」
「もう半分は?」
「不安。」
博子は小さく笑う。
「考えすぎ。」
「弁護士やからな。」
最後に弁護士先生はぽつりと言った。
「面白い。でも、ちょっと考えさせて。」
「ええよ。」
種は蒔いた。
どう芽が出るかは、まだわからない。
卓の中で、夜は静かに続いていった。




