月曜日。税理士先生と立ち飲み芋焼酎同伴。顧問先と仲良くなりたい。体験型店外を活用したい
月曜日。博子は昼過ぎまでほんまに何もせんとゴロゴロしてた。
「今日は入れへん」と決めた日は、意地でも入れへんつもりやった。
そしたら、スマホが鳴る。税理士先生。
ああ、来たな。
「この前の4人の同伴、めちゃ楽しかったわ。反省会も兼ねてどうや?」
アルカちゃんと博子、保険会社のやつと先生の4人同伴からの3セット。
あれは確かに空気良かった。
「今日、空いてますよ。」
ほんまに空白で良かった。
最近、自分から動かなくても話が入ってくる。
これ、流れ来てるな。夜は天満の焼酎立ち飲み。
ラフに。スーツじゃなくてジャケットぐらいの軽さで来る先生。
「こんな店知ってんねんな博子ちゃん。」
「天満は宝の山ですよ。安いし濃い。」
焼酎の瓶がずらっと並ぶカウンター。
立ち飲みやけど、空気は落ち着いてる。
まずは芋で乾杯。
「この前のあれな、保険会社のやつとめちゃ仲良くなったわ。」
ああ、やっぱり。
「アルカちゃんとも個別で連絡取ってる。あの子、意外としっかりしてるな。」
へえ。店にも顔出してるらしい。
うまいこと回ってる。
「もう一押しあればな、何か一本できそうやねん。」
仕事の匂いがする。
顧問先は順調。大きく跳ねる話はないけど、安定。
社労士、弁護士、保険会社。横の連携は増えてる。
「何人か仲良くなりたい奴おんねんけどな。うまいこと橋渡しできひんかな。」
きた。
私は軽く笑う。
「明日、私ウィスキー工場行くんですよ。」
「え?」
「指名のおじいちゃんと。工場見学。」
社長、目が丸くなる。
「何それ、めちゃ面白そうやん。」
私は淡々と話す。
キャバクラがきっかけ。でも、その後に一緒に何かする。
体験。半日。1日。
「だから私のこと好いてくれてる人と、一緒に何かして、引き出し開けてる感じです。」
「それな、添乗員にアテンドしてもらうみたいなもんやろ?キャバ嬢に
アテンドされるって、めちゃ価値高いで。」
みんな同じこと言うだろう。
「店の子たちにやりすぎって怒られましたけどね。」
社長は笑う。
「俺もそれやってほしいわ。」
「安くないですよ。」
私は先に釘を刺す。
「最近、指名増えてるし、アフターケアが時間食うんです。
半日とか1日とか。昨日も弁護士先生と丸一日。」
「ガチ恋か?」
「はい、ちょっと跳ねました。」
正直に言う。
「でもガチ恋じゃなくても、おじいちゃんとかも、休みの日にキャバ嬢と遊ぶこと
自体に価値見出してる人多いんです。」
社長はうなずく。
「そらそうや。自分専属のコンシェルジュみたいなもんやもんな。」
「だから、そんなに安くないです。でも満足はさせます。」
私ははっきり言う。
先生はニヤッとする。
「ツールとして活用したいねん。」
ああ、そう来たか。
「自分の周りの人間と仲良くなるために、博子ちゃんを使いたい。」
「契約1本2本取れたら、それでペイやしな。俺ら経費で落とせるし。」
経営者の発想。
「潤滑油や。場を温める触媒やな。」
悪い気はしない。
私は少しだけ真顔になる。
「橋渡しはできますけど、私、誰とでも合うわけちゃいますよ。」
「わかってる。合いそうな奴だけでええ。」
「それと、私が主役じゃなくて、あくまできっかけですからね。」
「そこやねん。それがうまい。」
焼酎が進む。
「女の子達にやりすぎで怒られたって?」
「女の子に。普通の基準上げないでって。」
社長は声出して笑う。
「そら怒られるわ。でもな、売れるやつは普通基準上げるねん。」
静かに刺さる。
「売れてないやつは、売れてるやつの真似できひん。」
情報が集まる人は、さらに磨かれる。
集まらん人は、止まる。
博子はグラスを傾ける。
「でも、バランス難しいですよ。」
「せやな。博子ちゃんは今、上り坂や。調子乗らんと、でも時々止まらんと、や。」
ちょうどいい言葉。
「それでな、今度俺の顧問先の社長と、軽い体験型どうや?」
「内容次第ですね。」
「ウィスキー工場ちゃうで。あれは俺も行きたいから別枠や。」
私は笑う。
「別枠は別料金ですよ。」
「もちろんや。」
天満の立ち飲み屋の空気がだんだん温まる。
「博子ちゃん、これ武器やで。」
「自覚してます。」
「キャバ嬢でここまで組み立ててるやつ、そうそうおらん。」
私は少しだけ照れる。
「売れてなかった期間長かったから、調べまくったんです。」
「種が芽出た感じか。」
「ちょっとだけ。」
立ち飲みを出る。
夜風が心地いい。
「じゃあ店行こか。」
「はい。」
社長は歩きながら言う。
「博子ちゃんは、遊びながら人間関係作るプロやな。」
私は横で笑う。
「仕事ですから。」
「いや、戦略や。」
キャバクラのネオンが見えてくる。
私は深呼吸する。
今日も積み上げ。
焦らん。
でも止まらん。
税理士先生というカードは、また一段階深くなった。
ツールとして使われる。
でも、使われるだけやない。
私はちゃんと、場を作る側や。
ドアを開ける。
「今日もよろしくお願いします。」
戦は、静かに続く。




