清掃会社社長との同伴出勤。意外とすんなりボトル出る。頭を回転させて森伊蔵を選ぶ
トンカツ屋のあと、ちゃんと同伴で店に来てくれた。
それだけで、今日はもう十分に勝ちや。
清掃会社の社長。派手さはないけど、目が落ち着いている。
仕事終わりの疲れが残っているのに、無理にテンションを上げようとしない。
このタイプは、押すと離れる。でも、こちらが構えすぎると、気を使わせてしまう。
だから、導線はシンプルにした。単価の安い店で警戒を解く。気取らないご飯。
会話は“楽しい”より“楽”。それが功を奏したんやと思う。
店に入ると、黒服が一瞬だけ驚いた顔をした。
同伴が付くとは、思ってなかったんやろう。
私は軽く会釈して、席へ。とりあえずワンセット。
ドリンクは要らない。それは、最初から決めていた。
無理に売上を作りに行く日じゃない。今日は、続けるための一日。
……と思っていたのに。「ボトル、入れとこか」
予想してなかった一言に、心臓が一拍遅れた。(え?)
シャンパン煽ってない。ドリンクも頼んでない。
同伴で、安い店。なのに、ボトル。
「無理せんでいいですよ」一瞬で口に出た。
でも、社長は首を振った。「煽られるのが嫌いなんよ」
「丁寧に積み上げてくれる方が、通いたくなる」
……ああ、そういうことか。だったら、無理はしない。
継続前提なら、黒霧島。定番で、嫌味がなくて、次も頼みやすい。
「じゃあ、黒霧島で」そう言おうとした瞬間。
「シャンパンでもええで?」頭の中で、歯車が一気に回り出す。
嬉しい。正直、嬉しい。でも、ここで安易に飛びついたら、終わる。
ヴーヴクリコ(30,000)
→ 花はない
→ 一回きりになりやすい
ソウメイ・ドンペリ(80,000~150,000)
→ 綺麗やけど、今日は重い
→ 継続の空気じゃない
森伊蔵(50,000)
→ シャンパンじゃない
→ でも「酒が好きな大人」の選択
→ 次も頼みやすい
→ 続く
(予算、どこまでや)
ここで一番大事なのは、確認の仕方。
探りすぎたら、野暮。勢いで決めさせても、後が続かない。
「今日は」私は少しだけ間を置いた。
「ワンセットで、ゆっくりが一番嬉しいです」
「もし入れるなら、続けやすいのがいいなって」
言い切らない。判断は、相手に委ねる。
社長は、少し考えた。「じゃあ……」「森伊蔵にしよか」
(よし)派手じゃない。でも、重い。
ちゃんと“通う前提”の選択。黒服が一瞬、目を見開いた。
シャンパンじゃないことに、少し拍子抜けした顔。
でも、私は内心、ガッツポーズや。
「ありがとうございます」声は、抑えた。
喜びすぎない。ここで花を咲かせたら、
“今日で終わる女”になる。グラスに注がれる芋焼酎。
香りが立つ。「飲みやすいな」社長が言う。
「ですよね」それだけ返す。
会話は、仕事の話と、少しの雑談。
深掘りしすぎない。説教もしない。共感は、短く。
時間が進む。(延長、狙える)
でも、無理に言わない。今日は、ボトルが入っている。
ここで欲張ると、全部崩れる。
もし、ブーブやったら?
→ 黒霧島に切り替えて、延長を一回。
もし、森伊蔵なら?
→ 延長は、相手から出るのを待つ。
今は、後者。「今日は楽や」社長が、ぽつりと言った。
それで十分。私は思う。売上は、積むもの。関係は、育てるもの。
北新地は、短距離走を求めすぎる。でも、私は今、
長く走れる靴を履かせてもらっている。
さて。延長を言うか、言わないか。
それは、もう少し、様子を見てからや。
今日は、“正解を選べた夜”にしておこう。




