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男性とのやり取りのあと、同卓の女の子達に注意されるもさきちゃんとアルカちゃんにフォローされる

フリーの卓をひと回りして、ひと段落がついて博子がロッカーに戻ると、

空気が少しだけ重かった。鏡の前でリップを引き直していると、後ろから声が飛ぶ。

「博子ちゃんさあ。」

振り向くと、同卓だった女の子が腕を組んでいる。

「そこまでしてたら、うちらもそこまでせなあかんってなるやん。」

「何がですか?」

「店外とか、休みの日のデートとか。コンカフェやら工場見学やら。」

別の子も乗っかる。

「それやられたら、“あの子はやってくれたのに”って言われるやん。」

博子は静かに答える。

「でも、お客さんが求めてることに対して、ある程度やるって決めてるだけですよ。」

「それがハードル上げてんねんって。」

少し空気が張る。

「抑えてくれへん?正直、やりすぎやわ。」

博子は深呼吸する。

「枕はしてないですよ。」

「してへんやろうけど。」

「食事ぐらいは許容範囲かなって思ってます。」

「それや。」

言い返されかけた、その時。

ロッカーの奥から、ぱたんとロッカーの扉が閉まる音。

「ちょっと待って。」

さきちゃんが出てくる。

髪をまとめながら、淡々と言う。

「ヒロコちゃんが何してるか、ちゃんと見てから言ってる?」

場が少し静まる。

「いや、でも…」

「ヒロコちゃん、かぶりの後ちゃんとフォローしてるやん。」

「それは…」

「うちらがやらんかったら、お客さんどこ行くと思ってんの?」

さきちゃんの声は静かだが、芯がある。

「店の外で丁寧に繋いでくれる子がおるから、店全体の空気も保たれてる部分あるねんで。」

博子が「いいよ」と目で合図するが、さきちゃんは続ける。

「博子ちゃんがやってるのは、自分のやり方やん。」

「でも、普通になると困るって話やん。」

そこへ、アルカちゃんがひょいと間に入る。

「はいはいはい、ストップ。」

いつもの明るい声。

「うちら全員、同じ型になる必要ないやん。」

「…」

「博子ちゃんは“体験型営業”。うちらは“店内完結型”。それでええやん。」

「でもお客さんが比較するやん。」

アルカちゃんは肩をすくめる。

「比較する人はどうせするって。」

「それよりさ。」

少しトーンを落とす。

「博子ちゃん、売れてない時期めちゃ長かったやん。」

博子が苦笑いする。

「やっと積み上げてきたの、今やん。」

さきちゃんも頷く。

「フリーばっかり回ってる子ほど、不安やねん。」

言われた子が少し視線を落とす。

博子は柔らかく言う。

「店の時間だけで全部満足させるの、正直無理な人もおるやん。」

「…」

「かぶった時に機嫌悪くなる人、放置したら怖いやろ?」

空気が変わる。

「だから外でフォロー入れてるだけ。」

「でもそれやられると…」

さきちゃんが遮る。

「じゃあ自分の武器作ったらええやん。」

「武器?」

「カラオケ得意とか、ゲーム強いとか、トーク尖らすとか。」

アルカちゃんが笑う。

「ヒロコちゃんの武器が“引き出し”なだけやん。」

少し笑いが漏れる。

最初に文句を言った子が小さく言う。

「…無理せんといてな。」

博子は驚く。

「なんで?」

「休み潰してるやん。」

アルカちゃんがすかさず言う。

「そこはちゃんと線引いてるよ、この人。」

さきちゃんも続ける。

「博子ちゃん、全部受けてるわけちゃうし。」

博子は頷く。

「交通整理できるようになっただけ。」

「前は余裕なかったやん。」

さきちゃんがぽつりと。

博子は笑う。

「指名かぶりでテンパってたもんね。」

ロッカーの空気が和らぐ。

アルカちゃんがパンと手を叩く。

「ほら、次フリー回ってくるで。」

「はい。」

博子がヒールを履く。

すれ違いざま、さきちゃんが小さく言う。

「ちゃんと体調だけは見ときや。」

アルカちゃんが耳元で囁く。

「博子ちゃん、店のバランス取ってる側やからな。」

博子は少しだけ目を細める。

(敵ちゃう。)

みんな必死なだけ。

フロアに戻ると、またグラスの音と笑い声。

キャバクラは優しくない。

でも、さきちゃんとアルカちゃんがいる。

博子は静かに席に着く。

今日もまた、自分のやり方で積み上げるために。

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