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金曜日、清掃会社の社長との天ぷら同伴。近況報告と小旅行の提案。沼らないでくださいね

金曜日は、清掃会社の社長との同伴が決まっていた。

昼前にスマホを手に取り、博子は天満界隈を中心に店を探す。最近は和食が続いていたなと。ふと、

「久しぶりに天ぷらもええな」と思い立つ。

カウンター中心、落ち着いた雰囲気、コースは8,000円前後。油が軽くて評判もいい。

ここなら、清掃会社の社長のテンポにも合う。

すぐに予約を入れ、食べログのリンクを送る。

「ここどうですか?」

数分で返信が来る。

「相変わらず仕事早いな。ええやん、そこにしよ。」

段取り完了。

博子は続けて、日曜日の有馬温泉について弁護士先生に確認を入れる。

「9時台か10時台のバスがあります。梅田から直通で1時間ほど。有馬着いてからは

ノープランで、足湯や散策中心に。3時か4時台のバスで戻る感じですけど大丈夫ですか?」

すぐに既読。

「OK、OK。めちゃめちゃ楽しみにしてるわ。」

テンションの高さが文面からにじむ。博子は小さく笑う。

昼はゴロゴロ。予定は組んだ。あとは夜。夕方、清掃会社の社長と合流し、

天ぷら屋へ向かう。カウンター越しに職人が油を温める音が心地いい。

「最近どうなん?」

一杯目のビールで喉を潤しながら、社長が聞く。

「ありがたいことに、ちょっと予約が入り出してまして。休みの日までめり込んできてます。」

「博子ちゃん、めちゃめちゃ人気になってきたな。」

苦笑いまじりの一言。博子は肩をすくめる。

「コンカフェ同行してから、会計士と弁護士の先生が“次どこ行く?”って感じで。提案の熱が

すごいんです。休みの日まで攻めてきます。」

「独身の妙齢の男たちを沼にはめてるやん。」

「はめてるつもりはないんですけどね。」

揚げたての海老が出てくる。サクッとした音。博子は続ける。

「どうも婚活女性が面白くないらしくて。受け身で、専業主婦志望で、

組み立てがないと。給料いい人に寄ってくる人が多いって。」

「なるほどな。」

社長は頷く。

「俺オッサンで既婚者やからな。半分遊び、半分刺激や。けど沼はやばいな。」

「やばいですよ。ほどほどに。」

博子は笑う。

「でもなんやかんや、旅行は行きたいで。」

「非日常や。工場見学でもええし、小旅行でもええ。予定組ましてや。」

博子は一瞬考え、天ぷらの白身魚を口に運ぶ。

「わかりました。でも沼にならんでくださいよ。」

「現役の人らに比べたら、俺はまだマシや。って自分に言い聞かしてんねん。」

お互い笑う。近況報告は続く。会社の話、従業員の話、最近の景気の話。

博子は適度に質問を投げ、社長の話を引き出す。

「自分と違う視点くれるからええわ。」

社長がぽつりと言う。

「博子ちゃんは半分仕事、半分遊びやろうけど、こっちは本気で刺激もらってる。」

「刺激だけでええですよ。沼はあかんです。」

「しつこいな。」

「大事ですから。」

カウンターの最後に、かき揚げが出る。

「しかし、会計士も弁護士も、博子ちゃん取り合いやな。」

「早いもん順です。」

「商売やなあ。」

「商売です。」

はっきり言うと、社長は満足そうに笑った。

「ほな俺も、次は昼から半日いこか。工場でも温泉でも。ちゃんと予定組んでくれ。」

「了解です。先に言うてくれた人優先ですよ。」

「抜かりないな。」

食事を終え、店を出る。夜風が少し冷たい。

「今日もありがとうな。」

「こちらこそ。」

「おじいちゃんも弁護士も会計士もおる中で、俺も混ざれるんやろ?」

「混ざれますよ。ただし沼らないこと。」

「それは努力するわ。」

笑いながら、二人は店へ向かう。

博子の頭の中では、天ぷらの油の音と、有馬のバスの時刻表と、

ウィスキー工場の予約画面が、同時に回っている。人気が出てきたというより、

流れができてきた。沼は作らない。でも刺激は作る。

金曜日の夜は、静かに、しかし確実に次の予定へと繋がっていった

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