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白州空けるくらいならセット延長かお手当に使ってください。博子の判断の速さに感心する。惚れる

「じゃあ、ボトル開けよかな。」先生が棚の白州を見上げた瞬間、

博子はさっとその手に触れた。「ちょっと待ってください。」

「なんや?」「白州開けるくらいなら――」

博子はまっすぐ目を見て言う。

「それ、セット延長か、外でのお手当に回してください。」

先生が固まる。

「は?」

「今日の流れで無理して高いボトル開けるより、ちゃんと時間に使ってくれた方が、

私うれしいです。」

「ボトルの方が店は喜ぶやろ?」

「店は喜びます。でも私は、先生と“ちゃんと積み上がる時間”の方が価値あります。」

黒服が様子をうかがっている。

博子は視線を逸らさず続ける。

「白州一本で終わるより、あと1セットいてくれるとか、次に外で

ゆっくり時間取ってくれるとか。その方が関係は続きます。」

先生が呆れたように笑う。

「したたかやなあ。」

「合理的です。」

「ボトル否定されたん初めてやわ。」

「否定してません。使いどころの話です。」

一拍置いて、博子が柔らかく言う。

「今日は黒霧で十分です。」

先生はしばらく白州を見てから、笑った。

「黒霧でええわ。」

博子が黒服に合図する。

「黒霧島お願いします。」

グラスが並び、水が注がれる。

先生がじっと博子を見る。

「博子が嫁やったら安心やし楽しいやろな。」

博子は即座に線を引く。

「ガチ恋歓迎は、あえてしません。」

「なんでや。」

「先生、ご家族いますよね。」

沈黙。

「……まあな。」

「反対出ますよ。私、夜の仕事で、最近同伴増えて、資格の勉強も止まってるくらい

バタバタしてるフリーターもどきですから。」

「リアルすぎるな。」

「現実主義なんで。」

先生が苦笑する。

「ほな、うちの事務所の秘書になればええやん。」

博子は目を細める。

「まんざらでもない顔してますよ。」

「本気で言うてる。」

「一緒に遊ぶのは歓迎です。でも夜遊びには厳しい秘書になりますよ。」

「どう厳しいねん。」

博子がニヤリとする。

「風俗、行けなくなりますよ?」

先生が吹き出す。

「あなたなら行かない。」

博子はすぐに返す。

「危ない台詞です、それ。」

「なんでや。」

「期待が膨らむからです。」

先生は真顔になる。

「今みたいに楽しい相手おるのに、他行く理由ないやろ。」

博子はグラスを回しながら答える。

「“今”が楽しいからです。だから“今”をちゃんと使いましょ。」

先生が頷く。

「人気になると立場逆転するんやな。」

「しますよ。」

「シャンパン煽りまくってる子が客大事にしてるか疑問やもんな。」

「崩れるのも早いです。」

博子はさらっと言う。

「今日白州開けたら、気持ちよく終われます。でも、次につながるのは時間か外の約束です。」

先生が笑う。

「完全に経営者目線や。」

「夜は在庫持てません。信用だけです。」

「俺も手当払うわ。」

「無理せずで。」

「休みの日にお茶とか観光ぐらいなら?」

「余裕あれば行きます。条件次第で。」

先生が満足そうに頷く。

「白州より賢い使い方やな。」

「そう思ってもらえたら成功です。」

白州は棚の上で静かに光っている。

開けなかったことが、今日の正解。ボトル一本より、積み上がる関係。

博子は黒霧を口に含みながら、静かに笑った。

“時間を選ばせる。”

それが今の自分の武器だと、はっきり分かっていた。

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