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日曜日。オフの日。荒い社長とのやりとり、アルカちゃん、さきちゃんへのお礼連絡

土曜日は、なんやかんや波はあったけれども、最終的には丸く収まった形で終わった。

帰宅して、メイクを落として、ソファに沈み込んだところでスマホが震える。

――荒い社長。「日曜日とか、なんかデート感覚で会えたらええな。」

来たな、と思いながら、ヒロコは画面を見つめる。

最初の頃なら、「うわ、めんどくさ」と思っていたかもしれない。でも今は、少し違う。

ちゃんと条件を整えれば、話はコントロールできる。

博子はゆっくり打つ。「お手当いただけたら、全然行きますよ。」

まずは前提を明確にする。

「北浜のカフェとか、コンカフェ同伴とか、最近ちょっと流れありますし、

小旅行くらいやったら、有馬とか姫路、京都あたりもコンタクト取れますよ。」

送信。すぐに既読がつく。

「ほんまか。」

「条件次第ですけどね。全然行きます。」

少し間を置いて、もう一文。

「ただ今週は、正直ちょっと体調整えられてないので無理です。

来週以降で、ちゃんと予定組ませていただけたら。」

ここは譲らない。今、無理をすると崩れる。

返信は短い。

「大物やな。」

博子は思わず吹き出す。大物、ってなんやねん。

最初は正直、扱いにくい人やと思っていた。でも、枠を提示して、

その中で動いてもらえば、意外と整う。

“感情で振り回される”からしんどいのであって、“条件で整理する”と楽になる。

「ああ、結構単純やな」と思いながら、スマホを置く。

日曜日は、完全にオフにした。

昼まで寝て、洗濯をして、部屋を軽く整える。散歩も無理せず、近所をゆっくり一周するだけ。

身体の奥に残っている疲れが、まだ抜けきっていないのがわかる。

「ここで無理したらあかん。」

自分に言い聞かせる。

YouTubeは、とりあえず一本上げる。凝らない。編集も最低限。出すことを優先。

登録者が400人を超えた。

「ニーズがわからんなあ。」

笑いながら、アナリティクスを眺める。

伸びる動画と伸びない動画の差が、まだ読めない。でも、とりあえず“出し続ける”

ことだけはできている。勉強は――正直、頭に入らない。

FPのテキストを開いてみるが、文字が滑る。

「今はちゃうな。」

無理にやらない。とりあえず整える。収入を安定させる。借金を返す。

それが今の最優先。夕方、博子はアルカちゃんに電話する。

「昨日ありがとう。」「え、なに急に。」

「荒い社長のフォロー、めちゃくちゃ助かった。」

アルカは笑う。

「こんなんお互い様やし。私も被る時あるしな。」

「でもああいう時、横にいてくれるのほんまありがたい。」

「博子ちゃん最近忙しそうやしな。無理せんときや。」

その一言が、地味に沁みる。

「またチームでやろな。」

「うん、やろ。」

通話を切って、次はさきちゃん。

「昨日ほんまありがとう。」

「あー、あれ?全然ええよ。」

「さきちゃん入ってくれたから場持ったわ。」

「博子ちゃんの人望やろ。」

「いやいや。」

「またなんかあったら呼んで。うちもそのうち被るやろし。」

「お返しできるもんあったら返すから。」

「貸し借りちゃうって。」

少し間があって、さきちゃんが言う。

「私ら言うても、東京のごつい案件あるやん。あれ月一で回るんやろ?あれで十分や。」

博子は笑う。

「せやな。」

あの東京三人衆の案件は、店にとっても大きい。月一で確実に回る大型案件があるから、

こうやって日常のフォローも回せる。

「時々フォローしながらやってこ。」

「うん。チーム戦や。」

電話を切って、ヒロコは天井を見上げる。

人気が出るのは、嬉しい。

でも、それは一人では回らない。

アルカちゃんがいて、さきちゃんがいて、黒服がいて、場があって、初めて成り立つ。

「楽ちゃうな。」

ぽつりと呟く。

でも、最初に比べたら、だいぶ整ってきた。

デートの提案も、条件提示で処理できる。

被りも、チームでさばける。

収入も、数字で見れば確実に上がっている。

あとは、壊れないこと。

日曜日の夜は、何もせず、湯船にゆっくり浸かる。

整える。整える。整える。

来週も、戦うために。

そうして、ヒロコの一週間は、静かに終わっていく。

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