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荒い社長との卓の終わり。同伴は余白があればいきますよ(^^)/

荒い社長は、さっきまでの不機嫌が嘘みたいに、最後は上機嫌やった。

「今日は被りあって正直いややと思ったけどな。けど楽しかったわ。

気付きもあった。ああいうのも悪ないな。また来るわ。今度は同伴行こうや。」

グラスを置きながら、まっすぐ言う。

博子は一瞬だけ考えてから、にこっと笑った。

「空白あれば行きますよ。」その一言で、社長の眉がぴくっと動く。

「空白あればってなんや。わしのために開けてくれへんのか?」

少し拗ねた声。博子は静かに、でもはっきり言う。

「はい。」一拍、空気が止まる。

「3月までの私なら、お願いしてましたよ。『同伴してください』って。」

「ほう。」

「でも今、私がお願いし始めたら、全部埋まってパンクします。」

嘘じゃない。実際、少し前まで売れなかった自分が、今は被りをどう捌くかで

頭を悩ませている。お願い営業をかけたら、きっと一気に崩れる。

「だからね、気にしてくれる方とか、早めに枠取りに来てくれる方を優先してるんです。」

社長は黙って聞いている。

「予定いただいて、『お願い』って言ってくださったら、予定が合う限り、

ゆっくりお話できますよ。」博子はあくまで淡々と。

媚びない。けど切らない。

社長はふっと笑った。

「人気になると、客と嬢の立場逆になるんやな。」

「逆転してるように見えるだけですよ。」

「いや、逆やろ。昔は客が選ぶ側やった。今はお前が選んどる。」

博子は肩をすくめる。

「シャンパン煽りまくってる嬢が、本当にお客さん大事にしてるか疑問でしょ?」

社長、苦笑。

「それはあるな。」

「立場逆転なんですよ。人気嬢に認識してもらってる俺すごい、

ってなるんです。多分。」社長、目を細める。

「……たしかに。『俺あの子知ってるで』って言いたなるな。」

「で、遊ぶにしても、お手当払うでしょうしねー。」

さらっと言う。「お前なあ。」

社長は笑いながら首を振る。

「そこまでやる気はないけどな。でも、俺も手当払うわ。」

「ありがとうございます。」即答。

「なんや、即答やな。」「だって現実的な話ですもん。」

博子はグラスを傾ける。

「ただ、休みの日にお茶とか観光くらいなら、余裕あれば行きますよ。」

「余裕あれば、か。」

「今は調整期なんで。体壊したら終わりですから。」

社長は少し真面目な顔になる。

「それはそうやな。」

「社長も言うてたでしょ。壊れるのは早いって。」

「覚えとるな。」

「覚えてますよ。私、分析の人なんで。」

社長は笑う。

「博子はな、解説してくれるからおもろいわ。裏側見せてくれる。」

「見せすぎたら商売あがったりですけどね。」

「いや、それがええ。わしはそこがええ。」

少し間があって、社長は言う。

「今日な、正直むかついた。でもな、被ってる中でもちゃんと向き合ってくれた。

あれ見て、ああ、人気出るわけやなって思ったわ。」

博子は少しだけ視線を落とす。

「楽ちゃいますよ。」

「やろな。」

「でも、社長が早めに言うてくれたら、ちゃんと枠取りますよ。」

「ほんまか?」

「お願いって言うてくれたら。」

社長は大きく頷く。

「わかった。次は早めに言う。」

「それが一番です。」

「お前な、ほんま商売人やな。」

「中身はおじさんですから。」

「それやめい。」

二人で笑う。

社長は満足そうに立ち上がる。

「今日はええ勉強になったわ。人気嬢に認識されとる俺、ちょっと誇らしいわ。」

「多分、ですけどね。」

「多分でもええ。」

帰り際、もう一度振り返る。

「観光な。空きできたら連絡する。」

「はい。余裕あれば行きます。」

「余裕作らせるわ。」

そう言って社長は帰っていった。

博子は椅子に腰を下ろし、小さく息を吐く。

人気になるって、楽じゃない。

でも、こうやって「理解」して帰ってくれる人がいるなら、まだやれる。

空白は、自分のためにも残しておく。選ぶんじゃない。

壊れないために、整えるだけ。

そう思いながら、次のテーブルへ向かった。

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