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土曜日、遺品整理の社長との同伴。壁打ちにつきあう。お互い整う時間

土曜日の朝、ゆっくり目に目が覚めた。

スマホを見ると、遺品整理の社長からLINEが入っていた。

「最近ちょっと行けてなくて申し訳ないな。今日夜どう?

ゆっくり喋ろうや。」ヒロコは布団の中で画面を見ながら、ふっと笑う。

(この人は、“飲みに来る”というより“整えに来る”タイプやな。)

続きのメッセージにはこう書いてあった。

「仕事のこととか、事業のこととかで、ちょっと博子ちゃんにも聞いてほしいことあるんだ。

別にコンサルしてくれって話ちゃうで。壁打ちでな。」やっぱり、と思う。

ありがとうございます、と返す。「何か食べたいものありますか?」

「任せるよ。予算5,000円くらいで。」この“任せる”が、この人の信頼の置き方だ。

博子はスマホを置いて、もう一度布団にくるまる。

最近、疲れが抜けにくい。体というより、神経がずっと張っている感じ。

YouTubeを一本上げる。コメントを軽く返す。散歩に出る。深呼吸をする。

(今日は整える日や。)夕方、身支度を整えて、近くのおばんざいの店を選ぶ。

カウンターが落ち着いていて、出汁の匂いが柔らかい店。

社長と合流すると、いつもの穏やかな笑顔。

「久しぶりやな。」「お忙しかったんですか?」

「まあ、ちょっとな。」店に入り、最初の一杯を頼む。

「最近どうなん?」博子は少しだけ正直に言う。

「ありがたいことに、指名と同伴が増えてきて。ちょっと疲れが出てるって言われます。」

社長は頷く。「無理したらあかんで。」

その一言が、妙に刺さる。「壊れるのは一瞬やけど、長続きはマジでむずい。

経営と一緒や。」「経営と一緒、ですか。」

「売上伸ばすのは勢いでいける。でも“維持”が一番しんどい。」

博子は、出汁巻きをつつきながら思う。(ほんまにそうや。)

社長が続ける。「人もな、集めるより、残す方が難しい。」

ここから、仕事の話に自然と入る。

「最近な、人材がなかなか集まらん。」

「遺品整理って、やっぱりきついイメージありますもんね。」

「そうやねん。でもな、やりがいはあるんや。感謝もされる。」

「部下との話し方、難しいですか?」社長は苦笑する。

「俺な、つい“正解”を言うてまうんや。」

博子は頷く。「経営者あるあるですね。」

「でもな、最近思うねん。答えより、考えさせた方がええんちゃうかって。」

「壁打ちみたいに?」「そうそう。」

ヒロコは軽く笑う。

「今日みたいな感じですか。」「せやな。」

仕事の話は七割。プライベートが三割。

「新しい種、どう広げるかも悩んどる。」「具体的には?」

「生前整理とか、相続まわりとの連携とか。」ヒロコは少し考える。

「税理士さんとか、弁護士さんと組むとか?」「それそれ。」

社長の目が少し輝く。「やっぱり横の連携よな。」

「博子は、なんでそんなに人の流れ見えてるんや。」

「キャバクラって、人と金の流れの交差点みたいなもんですから。」

社長は笑う。「ほんま、ええ視点や。」プライベートの話も少し。

「休み取れてるんか?」「最近ちょっと少なめですね。」

「減らした方がええ。」「わかってます。」「壊れたら終わりやで。」

その言葉が、妙に温かい。二時間ほど、ゆっくり話す。

強く押されることもない。甘くなることもない。

壁打ち。博子は、適度に相槌を打ち、時々問いを返す。

(この人は、“聞いてもらう”ことで整う。)そして、自分も整っていることに気づく。

「今日はありがとうな。」「いえ、こちらこそ。」

店を出る頃には、心拍が落ち着いている。

プライベート三割。仕事七割。

でも、そのバランスがちょうどいい。

(こういう夜も、大事や。)

土曜日の空気は、少し柔らかかった。

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