税理士先生と保険会社の方がご帰宅後アルカちゃんと反省会。絆深まる金曜日。
税理士先生と保険会社の方をエレベーター前までお見送りして、
ドアが閉まった瞬間、博子とアルカちゃんは顔を見合わせた。
「……今日は良かったですね。」「うん、うまく回った。」
裏のスペースに入って、ふっと肩の力を抜く。
「同行もできたし、三セット一緒にいてくれて、ボトルも一本下りましたしね。」
アルカちゃんが言う。
「森伊蔵から黒霧に下がったのはちょっとあれですけど。」
博子が笑う。「まあでも、あれはしゃあない。大事なんはセット数や。」
「そうなんですよ。ドリンク刻むより、今日は時間伸ばしてくれたのが大きい。」
三セット。それも“だらだら喋ろうや”の流れで自然に。「関係、深まりましたよね。」
「うん。今日のあの“報告会”は効いたと思う。」二手に分かれて同伴して、あとで公開する。
あれは設計が生きた。アルカちゃんが少し声を落とす。
「保険会社さん、ちょっとデート匂わせてきましたけど。」「行くの?」
「いやあ、もうちょい伸ばしてからでしょう。」博子がうなずく。
「焦らんでええよ。ああいうタイプは、少し距離ある方が追いかけてくれる。」
「ですよね。」アルカちゃんが逆に聞いてくる。
「税理士先生はデートとかならないんですか?」博子は軽く首を振る。
「あの人はデートちゃうねん。整えに来てる。」「整え。」
「話して、考え整理して、また仕事戻る。そういう使い方や。」
「確かに。」「しかも既婚者やし、そこは線引いてくれてる。」
「ええお客さんですね。」「ありがたいよ。ああいう人は長い。」
しばらくして、横からさきちゃんが顔を出した。
「なに、チーム反省会?」「ちょっとだけ。」
さきちゃんが羨ましそうに言う。
「いいなあ。なんかチーム戦って感じ。」
ヒロコが笑う。「この前の東京三人衆も楽しかったもんな。」
「うん、あれ最高やった。」アルカちゃんが言う。
「またなんかチームあったら組みましょうよ。」
「ほんまやで。私も混ぜてほしい。」
「いやいや、月一ででかいのあるやん。」
「それはそれで別腹。」三人でくすくす笑う。
チームで動くと、空気が違う。孤独な戦いじゃなくなる。
博子が少し真面目な声になる。
「でもさ、これから私、指名かぶり増えてくると思う。」
アルカちゃんがうなずく。「今日もちょっと危なかったですもんね。」
「うん。だからカバーせなあかん。」さきちゃんも真顔になる。
「かぶったら、ヘルプ入るとか、流れ作るとか。」
「そう。奪い合いになったら終わる。」アルカちゃんが言う。
「お互い伸ばす方向で。」「そう。店の中で孤立せんこと。」
さきちゃんがぽつり。「売れてきたら、逆に孤独なる子おるからな。」
博子は少しだけ息を吐く。「売れへん時期長かったからな。今のこの感じ、大事にしたい。」
「博子ちゃん、疲れてますけどね。」「それは否定せえへん。」
三人で笑う。そのあと、それぞれフリーへ散る。
博子はテーブルに着きながら思う。(今日の勝ちは、ボトルやない。時間や。)
セットを重ねてくれたこと。四人で笑えたこと。
チームで目配せできたこと。それが大きい。アルカちゃんも別卓で楽しそうに笑っている。
(あの子もちゃんと伸びてる。)さきちゃんは器用に場を回している。
(この三人、まだ強くなる。)フリーを一卓終えたころには、もう終盤。
時計を見る。(金曜日、よう回ったな。)
最後に更衣室で顔を合わせる。
「お疲れさま。」「今日はええ日でしたね。」
「うん。こういう日が増えたらええな。」
博子はバッグを肩にかけながら言う。
「とりあえず、かぶり出たら協力やで。」「もちろん。」
「一人で抱えんとこ。」アルカちゃんが小さく拳を握る。
「チームでいきましょ。」
金曜日の夜は、静かに閉じていった。
ボトル一本。三セット。
そして、少し深まった関係。それ以上に、
女子三人の連携が強くなった夜だった。




