ラスト清掃会社社長を帰したことで怒られるも同伴可能性大で許されるwww次の一手
フリーを返したことは、やはり問題になった。
ラストの席を終えて、ロッカーに戻ろうとしたところで、黒服に呼び止められる。
「博子さ」声は低い。「さっきのフリー、返したやろ」
責めるというより、確認に近いが、空気は重たい。
「はい」博子は、短く答えた。「フリーはな、返したらあかん」
「今日は特に、最後の時間帯や」分かっている。ルールとしては、正しい。
「ドリンクも取ってへんし」黒服は続ける。「正直、あの流れは評価しにくい」
博子は、反論しなかった。その代わり、事実だけを置く。「でも、次、同伴になりそうです」
「週末、外で軽くご飯行ってから来てくれる話になってます」
一瞬、黒服の表情が止まる。「……それ、固いんか?」「はい。かなり」
数秒の沈黙。そして――また、始まる。「ほう」
黒服は、急にトーンを変えた。「それやったら、話ちゃうな」
さっきまでの空気は、どこへ行ったのか。
「同伴、二件取れるならな」「今の勤務、減らす話は一旦なしや」
ヒロコは、内心で静かに息を吐いた。――助かった。
「正直な」黒服は、少しだけ本音を漏らす。
「結果出るか分からん子を、置いとく余裕はない」
それも、分かっている。「でも、同伴が見えるなら」
「話は別や」博子は、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます」「まずは、そこ目指します」
黒服は、うなずいた。「目安やけどな」
「週三で同伴入れられるなら、今のシフトは維持できる」
「フリーの時間も、少し減らしてええ」
それは、かなり現実的な条件だった。フリーが減る。つまり、消耗が減る。
その分、確度の高い席に集中できる。
「予約出勤ができるようになれば」黒服は続ける。
「別の仕事探さなくてもええかもしれんな」
その言葉を聞いて、ヒロコの胸が少し軽くなる。
他店の掛け持ちや昼キャバは、体力を削る。
効率も、決して良くない。可能なら、避けたい選択肢やった。
「ありがとうございます」博子は、もう一度言った。
ロッカーに戻り、着替えながら、頭の中を整理する。
まずは、週三の同伴。それを安定させる。
フリーの時間を減らす。無駄な消耗を避ける。
予約出勤を作る。“行けば席がある”状態に近づける。
昼キャバは、いったん様子見。完全に切らなくていい。
だが、優先順位は下げる。SNSは――今はまだ、前に出ない。
少しずつ。動かすなら、様子を見ながら。店に迷惑をかけない形で。
博子は、鏡の前で深呼吸をした。今日は、叱られた。
でも、首はつながった。それ以上に、道が見えた。
派手な逆転じゃない。だが、現実的で、再現性がある。
――ここからや。黒服の手のひら返しに、一喜一憂する必要はない。
評価は、数字でしか決まらない。同伴。予約。継続。
やることは、もう決まっている。
ヒロコは、静かにバッグを持ち、店を後にした。
北新地の夜は、相変わらず冷たい。
それでも、足元にあった霧は、少しだけ晴れていた。
この場所で生き残るには、感情じゃない。段取りだ。
そして今、その段取りが、ようやく形になり始めていた。




