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金曜日。税理士先生と保険会社の人とあるかちゃんとダブル同伴。段取り確認

金曜日の朝。目が覚めた瞬間、まず頭に浮かんだのは段取りやった。

今日はダブル同伴。けど、動きは分かれる。ここを間違えたらややこしくなる。

布団の中でスマホを開き、アルカちゃんにLINEを入れる。

「今日は税理士先生と保険会社の人、待ち合わせは一緒やけど、

店は分かれるからな。ボトルの確認、同伴戻ってからの方がええかも。」

すぐに返信がくる。

「そうですね。戻りで落ち着いて確認しましょ。先に入れる流れになったら

もったいないですし。」

「そう。焦って先に入れてもらうより、2セット目ぐらいで空気見て決めたい。」

最近は、数字のこともちゃんと考えるようになった。

売上、バック、ボトルの残量。感覚だけで回していた時期とは違う。

「今日もお互い無理せんようにやな。」

「了解です。チーム戦ですね。」チーム戦。

でも、それぞれが自分の席で戦う。昼間はできるだけ身体を休めた。

軽くストレッチして、シャワー浴びて、少しだけ散歩。頭を空っぽにする。

夕方、待ち合わせ場所へ向かう。税理士先生と保険会社の人、ふたりは既に並んで立っていた。

「こんばんは。」「お、博子ちゃん。」アルカちゃんも少し遅れて合流。

博子はさらっと言う。

「じゃあ今日は、私は税理士先生と和食の方行きますね。アルカちゃん、お願い。」

「はい。じゃあこっちは洋食いきましょか。」保険会社の人が少し照れた顔で頷く。

ここからは別行動。税理士先生とふたりきり。

北新地の少し奥まった刺身の美味しい店。カウンターに座ると、ほっとする。

「こういう店、落ち着くわ。」「先生、しっぽり派ですもんね。」

まずはビール。それから日本酒。

刺身の盛り合わせが運ばれてくる。ブリ、ハマチ、鯛。丁寧に引かれた包丁目が美しい。

「確定申告終わって、ようやく落ち着いたわ。」

「本当にお疲れさまでした。ゴールデンウィーク前って、

やっと呼吸できる感じですよね。」先生は頷く。「博子ちゃんも最近忙しいやろ?」

「ありがたいことに。ちょっと指名かぶりも出てきて、正直まだ慣れてなくて。」

「売れてきた証拠や。」

「でも、売れてる子と売れてへん子の差、ほんま激しいですよ。無い子でも差が出たり、

ボトルの本数で雰囲気変わったり。」先生は笑う。

「それ、うちの業界も一緒や。取れる人はどんどん取る。取れへん人はずっと低空飛行。」

博子は思う。(この人は、ちゃんと観察する人や。)

感情で飲みに来るタイプやない。ちゃんと分析して、自分の中に持ち帰る。

「俺な、キャバクラの空気って意外と経済の縮図やと思ってる。」

「人の流れと金の流れ、めちゃくちゃ近いですもんね。」

「そうそう。繁忙期と閑散期、単価の上げ下げ、固定客とフリー客。」

博子は日本酒を口に含む。だから先生みたいに、ちゃんと見てる人と話すの楽しいです。」

ほんまにそう思ってる。先生は少し照れたように言う。

「博子ちゃんと話すと、視点もらえるんよ。」

「いやいや。私は現場でドタバタしてるだけです。」

「それがええんや。机上の空論ちゃう。」

刺身をつまみながら、最近の顧問先の話、保険業界の動き、ゴールデンウィークの予定。

話題は穏やかに流れる。

博子は聞き役に回りながら、時々自分のことも差し込む。

「最近ちょっと体にガタきてて。だから今日は早めに切り上げるかもです。」

「無理したらあかんで。」

その声は、営業トークやない。

(ありがたいな。)でも同時に、思う。

(頼りすぎたらあかん。)今日は同伴。ここで全部完結させたらあかん。

「今日は店戻ってから、まったり飲みましょ。ボトルどうするかも、空気見て決めましょ。」

「お、戦略家やな。」

「最近ちょっと考えるようになったんです。」

ほんまは、数字に追われてるだけやけど。

食事を終え、店へ向かう。入口の前で、先生が言う。

「こういう時間があるから、また来ようと思うんや。」

博子は微笑む。「腹八分目ぐらいが一番長続きしますよ。」

店の扉を開けると、アルカちゃんと保険会社の人はまだ戻っていない。

(よし、タイミングは悪くない。)今日は焦らない。ボトルは空気を見て。

2セット、丁寧に。博子は深呼吸して、席へ向かった。

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