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火曜日、弁護士先生と北浜ランチデート。理想の女性が見つからない・・・

火曜日の朝。布団の中でスマホが震える。《夜どう?大丈夫だよ》

清掃会社の社長からや。博子は画面を見ながら、小さく「よし」と呟く。

これで夜は一本確保。あとは店選びやな、とぼんやり考える。

 芋の煮っころがしがちゃんと味しみてで、茄子の煮びたしが出汁ひたひたの店。

派手じゃないけど、染みる系。社長はそういうのが好きや。

スマホを枕元に置き直し、もう一回布団にくるまる。――焦らんでええ。コツコツや。

午後。北浜。川沿いの風がまだ少し冷たい。弁護士先生と待ち合わせをして、

テラス席のある店に入る。「この辺、ええ空気ですね」先生が川を見ながら言う。

「でしょう? ここで話すだけで、ちょっと人生整う感じしますよ」

「整うってサウナみたいやな」笑いながらランチが運ばれてくる。

北浜は、背筋が伸びる街や。派手さはないけど、落ち着きがある。

「こういう空気吸いながら話すの、新鮮ですね」

「デートにもいい場所、いっぱいありますよ」

「いやあ、仕事がなあ。飛び回ってばっかりで、それどころやないんですよ」

「相手ありきですもんね」先生は苦笑する。

「せやねん。裁判所行って、事務所戻って、打ち合わせして……優雅なランチとか、理想やけどな」

「だったら、家で待っててくれる人よりも、一緒に外で動ける人の方がいいんじゃないですか?」

「それがな……難しい」先生はフォークを置く。「金持ってるって思われたら、専業主婦希望が

寄ってくる。バリバリ仕事してる人は、今度は噛み合わへん。間の人がおらん」

「間の人、いない説ですね」「ほんまそれ」博子は頷く。

「時間かけて会える人じゃないと難しいですよね。お見合いは、短期決戦ですもん」

「博子さんは?」「私は半分営業ですからね」にやっと笑う。

「来てもらって、ちゃんと時間作ってもらって、その中で中身を見せてるだけです」

「いや、中身が素敵やから来てるんですよ」

「ありがとうございます。でもね、そう言ってくれる人が増えてきたの、最近なんです」

 先生が首を傾げる。「3月の真ん中までは、全然売れてなかったんですよ。メンタル

ぐちゃぐちゃで」――博之が博子に転生したのが3月15日やったしな。心の中で呟く。

「ガワだけじゃ難しいんです。中身を見てもらうまでの過程を、どう作るか。

引き出しをどう増やすか」「同年代で出来上がってる人は?」「だいたい結婚してます」

 二人で笑う。「だからね、育てる気持ちがないと難しいんですよ。直すとか、

一緒に作るとか」「それができる人が少ないと」

「そう。できないなら、私と遊んでください、になります」

「またそういうこと言う」「本音です」博子は水を一口飲む。

「先生が、他の女の子を見て“育てたい”って思えるかどうか。

キャバに限らず、コンカフェでも、異業種交流会でも」「コンカフェ?」

「この前、会計士の先生とその話したら、めちゃくちゃ受けてましたよ」

「何それ、俺も行きたい」「ほら、すぐ食いつく」「いや、純粋な好奇心や」

「遊びの場所を増やすって、大事なんですよ」博子は少し前のめりになる。

「仕事と家だけやと、視点が固まる。遊びを増やすと、アンテナ立つ」

「アンテナねえ」「陶芸体験とか、香水作りとか、一緒に何かやるのもありですし」

「また体験系か」「共有が増えると、会話が増えます」先生は考え込む。

「博子さんと話してると、自分が固定化してるのがわかる」「それ、いい気づきですよ」

「でもなあ、専業主婦希望も困るし、バリキャリも噛み合わんし」

「じゃあ、間の人を育てるか、自分が間になるか、ですね」「難易度高すぎる」

「だから、遊びながら探すんです」博子は笑う。

「コンパでも、相席屋でも、異業種交流会でも。刀を研ぐ時間です」

「子ども欲しいなら?」「真面目に探す。でも、そうじゃないなら、焦らんでもいい」

「ヒロコさん、ほんまに営業なん?」「半分はね」「残り半分は?」

「面白がってるだけです」二人で笑う。川面がきらきら光る。

「予定、詰まりかけてるんですよ」「忙しいなあ」

「だから、また企画します。先生も巻き込みます」「ほんまかいな」

「遊びの設計、任せてください」先生は深く息を吐く。

「なんか、楽になるわ」「愚痴吐けるからですか?」「それもある。でも、それだけやない」

 ヒロコは心の中で頷く。――売れなかった時間が、今に効いてる。

 引き出しは、勝手には増えへん。積み上げや。

「じゃあ、今日はこのへんで」「また来るわ」「腹八分目でお願いしますね」

 川沿いを歩きながら、博子は思う。育てるか、育てられるか。

 遊ぶか、焦るか。どっちでもええ。ただ、視点を増やすこと。

 それだけで、人生はちょっと面白くなる。

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