表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/731

日曜日。北極星本店ランチグループデート。六本木飲みと違う楽しさにはまる男性陣

日曜日の朝。博子にとっては、ここが正念場だった。

昨日の流れは完璧に近い。でも、“完璧っぽい流れ”ほど油断が怖い。

今日を綺麗にまとめられるかどうかで、この三人組が「単発の豪遊」になるか

「また帰ってくる客」になるかが決まる。10時半、難波。北極星本店前。

すでにさきとあるかが来ていて、軽く手を振る。「今日、楽しみやな」

「遠足二日目や」三人で小さく笑う。

ほどなくして、東京三人組がゴロゴロとキャリーを引きながらやって来た。

「おはようございます!」「朝から爽やかやなあ」店前を見て、一人が笑う。

「え、ここラブホ街やん」博子が肩をすくめる。「そうなんです。なかなかの立地でしょ?」

「いやいや、オムライスの本店がこの場所は攻めてるな」

「でもね、11時前はまだマシなんですけど、開店過ぎたら結構並ぶんですよ」

「ほんまかいな」そう言っているうちに、じわじわ人が増え始める。

「ほら、来たで」「ほんまや。読むなあ」11時。扉が開き、六人で中へ。

少し荷物の置き場に戸惑いながらも、外国人客対応に慣れた店員がすっと案内してくれる。

「こちらどうぞ」通されたのは、堀ごたつの半個室。「うわ、ええやん」

「想像してたんと違う」博子がにやっとする。

「北極星って、カウンターで1,000円前後で食べるイメージでしょ?」

メニューを広げる。「ほら、普通のオムライスは1,000円前後。でも――」

指で示す。「本店限定ランチあるんです。エビフライ付き」

「え、2,000円いかへんやん」「東京ならこの雰囲気込みで3,500円やでこれ」

「これが大阪のええとこちゃいます?」博子がさらりと言う。

「安くて、美味しくて、ちゃんと雰囲気ある店、探せばなんぼでもあります」

「やっぱり案内してもらって正解やわ」

オーダーが決まり、しばらくして六皿のオムライスが並ぶ。

黄色い卵がずらり。「なんか給食みたいやな」

すかさず店員さんにオムライス込みの全員の写真をとってもらう。

「いただきますするか」「せーの、いただきます!」

笑い声が小さく弾む。博子はさりげなく、店内に貼られた歴史のパネルを指す。

「ここ、もともと洋食屋さんで。体調崩してたお客さんがオムレツばっかり食べてたから、

ご飯包んでケチャップかけたのが始まりって言われてるんですよ」

「物語あるやん」「そういうの知ってると、ちょっと味わい変わりません?」

「変わるなあ」エビフライをかじりながら、一人がぽつりと言う。

「こういう遊び方、たまにはええな」「めちゃくちゃええわ」

「東京で飲んでる時、女の子からこういう提案出てくることマジでないで」

「ほんま?」「俺らが店選んで、連れてって、高い焼肉か高い寿司。

で、“ありがとう”もあんま言われへん」「それ、もったいないですよ」

ヒロコが真顔で返す。「1人単価5,000円ぐらいで、こだわりの店、いくらでもありますよ」

「鍋もあるし、肉もあるし、テーマ絞った店もあるし」あるかが補足する。

「“高い=正解”ちゃいますから」さきも続く。

「むしろ縛りがある方が楽しい時もあるし」

東京組が顔を見合わせる。「なんかディスられてる気もするけど、めっちゃ正論やな」

「六本木でパカパカ開けてるの、ちょっと馬鹿らしくなってきたわ」

博子は軽く笑う。「東京が悪いわけじゃないです。でも、選択肢は多い方がええと思います」

「ほんまやな」一人がぽつりと呟く。「昨日の店も、今日のここも、

“高いから楽しい”んじゃなくて、“設計されてるから楽しい”感じするわ」

その言葉に、博子は小さく息を飲む。(ちゃんと伝わってる)

オムライスを食べ終え、食後の水を飲みながら、ひとりが言う。

「次来るとき、また別コース頼むわ」「もちろん」博子は即答する。

「京都編、大阪下町編、天満はしご編、北浜ゆるランチ編。お品書き、まだまだありますよ」

「出た、お品書き」「ほんま、引き出し多いな」博子は少し照れながらも、心の奥で確信する。

(これは掴めた)派手じゃない。でも、ちゃんと刺さっている。

店を出る頃には、六人の空気は完全に柔らかくなっていた。「次、神社やな」

「鬼のやつやろ?」「そうです。あれ、写真撮ったらちょっと映えます」

「観光マップ載ってへんコースやな」「載せないです、こういうのは」

博子がにやりと笑う。日曜日の午前。静かな街の中で、確実に“次”へ続く時間が積み上がっていく。

六本木では作れない、でも大阪なら作れる空気。その中心に、博子は静かに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ