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会計士先生お見送り後に荒い社長が来客する

会計士先生は、グラスを置きながら名残惜しそうに言った。

「もうちょっと、博子さんと話したいなあ」「正直、めちゃくちゃ楽しいです」

その言葉は、軽くもなく、重すぎもしない。けれど博子は、ここで線を引くべき

タイミングやと分かっていた。「ありがとうございます」

そう言って、少しだけ笑う。「でも、今日はここまでにしましょ」

先生が一瞬、え?という顔をする。「ほら、もう黒霧島も」

「先生方が入れてくれた分、そろそろなくなりそうですし」

「また来てくれた時に」「それでも楽しかったら、その時に元を入れてもらう形で十分です」

先生は、なるほど、というように頷く。「今日は、さっき話したことを」

「ちょっとだけ咀嚼してもらえたら嬉しいです」

「次の合コンでもいいし、新しい出会いでもいいですし」「一回、誰かと会ってみて」

「デートでもいいし」「あ、コンカフェどうですか?」

「この前みたいに、先生方で行くのも全然いいと思います」先生が目を丸くする。

「一回そういうの挟んでから、また来てもらえたら」

「私と一緒に飲むの、また違って楽しくなると思いますよ」

「だから、今日はこの辺で帰りましょ」

先生はしばらく黙ってから、少し照れたように言った。

「……そうやって、ちゃんと引き際教えてくれるのも」

「やっぱり博子さん、好きやなあ」博子は内心、(あ、またちょっと噛み合ってへんな)

と思いながらも、表情には出さずに立ち上がった。

「ありがとうございます」「でも、それも含めて“今日はここまで”です」

エレベーター前まで送り、丁寧にお見送りをする。先生は何度も振り返りながら、

名残惜しそうに手を振った。扉が閉まった瞬間、博子は小さく息を吐く。

(ちゃんと切れた)(今日は、これでええ)そう思った、その直後だった。

「博子ちゃん」背後から、聞き慣れた声。振り返ると、荒い社長が立っていた。

いつもより少し早い時間。目が合った瞬間、博子は心の中でつぶやく。

(あ、来た)「来たで来たで」そんな空気を全身にまとっている。

「今日も忙しそうやなあ」距離が、近い。「いやいや、そこまで詰めんでいいですから」

冗談めかして言いながら、半歩だけ距離を取る。

荒い社長は気にした様子もなく、にやっと笑う。「ええやん、久しぶりやし」

「ちょっと話そうや」博子は内心、(これはまた、気を使う夜になるな)

と思いながらも、表情は崩さない。「分かりました」「じゃあ、少しだけ」

そう言って、席へ案内する。距離を詰めてくる相手。詰めすぎたら崩れる関係。

引いたら、機嫌を損ねるかもしれない空気。さっきまでとは、まるで違う種類の緊張感。

(また修行やな)博子は心の中でそう呟きながら、荒い社長の卓につくのだった。

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