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会計士先生に釘をさすつもりが感心され好意がつよまるwww

そろそろ店を出て、お店に向かう時間だった。立ち飲み屋の暖簾をくぐりながら、

博子は一度、頭の中を整理する。――私はキャバ嬢や。それは事実で、誤魔化しようがない。

会計士先生と歩きながら、博子はあえて言葉を選ばずに話し始めた。

「先生、あの……改めて言いますけど、私はキャバ嬢です」

「他にもお客さんはいますし、誰か一人だけを見る仕事でもないです」

先生は黙って聞いている。博子は続ける。「正直、胸張って“綺麗な仕事です”って

言えるかと言われたら、そんなことないです」「でも、その分だけ、引き出しは増えます」

夜の仕事をしていると、人の感情の揺れ方を嫌でも見る。期待、依存、苛立ち、

寂しさ、勘違い。それを避けずに受け止めてきたから、話せることも、

提案できることも増えた。「だから、先生が私を好きになってくれるのも一つですし」

少しだけ間を置いて、「私の手のひらでコロコロ転がるのも、悪くないと思いますよ」

先生が苦笑する。「でも、それをやるとですね」博子は歩調を緩めながら言った。

「どこかのタイミングで、必ずお互いしんどくなります」夜風が少し冷たい。

博子は自分でも驚くほど、淡々と話していた。「だから、いろんなところを見てください」

「先生は収入も肩書きもある。それを見られるのが嫌かもしれないですけど、

20歳超えた女性は、だいたい見ます」先生が小さく頷く。「でも、それがあるからこそ、

ちゃんと引っかかる人もいます」「合コンでも、紹介でも、絶対どこかで

噛み合う人は出てきます」そう前置きして、博子は具体的な話を出した。

「例えばですけど、北極星の本店、行ったことあります?」

「オムライスの店です。単品で出す、カウンター中心の」先生は首を振る。

「あそこ、難波と心斎橋の間にあって」「周りは正直、風俗街やし、前ラブホやん、

みたいな場所なんですけど」「中は料理屋さんみたいで、座敷もあって、

値段も支店と変わらないんです」「外国人も多くて、意外と名所なんですよ」

さらに続ける。「で、その後に難波の八坂神社」「京都の八坂じゃないですよ。

なんか変わった神社で、ここも外国人多いです」「そういう半日セットのデート、どうです?」

「これで“しょうもない”って言う女性、あんまりいないと思います」

先生は少し目を輝かせた。「そういうルートをいくつか持っておいて」

「いろんな女性に試すんです」「最初はぎこちなくても、だんだん噛み合ってきます」

「それを積み上げていかないと、ですね」少し沈黙が流れたあと、先生が言った。

「……なんか、すごく良さそうですね」そして、少し間を置いて、

「博子さん、今度一緒に行ってくれませんか?」博子は一瞬、言葉に詰まる。

(あ、またや)引き出しを見せたはずなのに。距離を取る話をしたはずなのに。

噛み合っていない、でも好意は強まっている。「……それは、また考えましょう」

笑顔を崩さず、そう返す。店のネオンが見えてきた。博子は軽く息を吐く。

引き出しを増やすほど、人に好かれやすくなる。それがこの仕事の皮肉で、

同時に、いちばん厄介なところやな――そう思いながら、博子は少し困惑したまま、

店へと足を向けた。

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