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トンカツ同伴後店へ。最近の不動産状況や繁忙の格差について。黒霧島入れて継続通い確定

とんかつを食べ終えて、二人で店を出る。夜の空気はまだ少し冷たくて、

油の匂いが服にほんのり残っているのが分かる。「ほな、行こか」

不動産会社の社長がそう言って、自然な流れで店の方向へ歩き出す。

博子も横に並びながら、少しだけ背筋を伸ばした。

火曜日。新しく増えた出勤日。それなのに、もうちゃんと“仕事の日”として

体も頭も切り替わっている自分に、博子自身も少し驚いていた。

店に入ると、黒服が一瞬目を見開いた。

「あれ、今日出勤やったん?」「はい、火曜日も出ることになりまして」

そう言うと、黒服は小さく頷きながら、

「もう同伴入ってるやん。増えたばっかりやのに、すごいな」

と、半分感心したような声で言う。博子は軽く笑って、社長と一緒に席へ案内される。

グラスを置いて、乾杯。とんかつの余韻がまだ残っているせいか、空気は最初から柔らかい。

社長は、ゆっくりと話し始めた。

「最近な、やっぱ中国人特需と相続絡みで、結構忙しいねん。

仕事はあるんやけど、接待で行く店もな、調子ええとこと悪いとこの差が激しいわ」

博子は頷きながら聞く。「それ、北新地も同じやと思いますよ。私も少し前まで、

正直あんまり調子よくなかったですし」「せやろ?でも最近、出勤増えてるって聞いたで。

今はええ感じなんちゃうん?」

「おかげさまで、少しずつですけど。コツコツ積み上げさせてもらってます」

そう答えながら、博子は続ける。

「ただ、出勤増えたからって雑にならんようには気をつけてて。

丁寧さだけは落としたくないなと思ってやってます」

社長は、グラスを傾けながら、じっと博子を見る。

「その歳で、それ言えるのはなかなかやで」博子は少し照れながらも、今やっている

ことを話した。「自分では、自己研鑽みたいな感覚でやってるんです。

この前、証券外務員2種も取って、今はFP3級をちょっとずつ。

仕事忙しくなって、正直ペースは落ちてますけど」「ほう」

「あと、YouTubeもやってて。雑談ばっかりですけど、登録者300人くらいで、細々と」

社長は思わず笑った。「いやいや、手広げてる割に、全部ちゃんと丁寧やな。

まだ20歳やろ?そのバランス感覚、なかなかないで」

そう言われて、博子は少しだけ胸の奥が温かくなる。

「ところで、キャバクラのの客って、どんな人が多いん?」

と聞かれて、博子は少し考えてから答えた。

「個人が特定されない範囲で言うと、士業の方が多いです。私自身があんまりはしゃぐ

タイプじゃないので、一人で静かに来られる方とか、フリーの団体の中でも、

ちょっと輪に入りきれてない方と話すことが多くて」

「なるほどな」「テンポが合わへん人って、いますやん。

そういう方と、ゆっくり喋ったり、悩み聞いたりする感じですかね」

社長は深く頷いた。「それ、自分をちゃんと分かった上で客取ってるってことや。

それが一番すごいで」そして、少し間を置いてから笑った。

「まあ、俺もどっちか言うたらそっち側やからな。せやから、ここ来てるんやろうし」

博子も笑う。「よっしゃ。今日とんかつも美味かったし、博子ちゃんと

一緒におる時、飯には困らんな」そう言って、社長は黒服を呼ぶ。

「とりあえず、黒霧一本入れといたるわ。高い酒はいらへん」

「ありがとうございます」「高い酒が嫌なんちゃうで。

継続して会える方がええやろ。出勤増えたんやったら、なおさらな」

博子は、思わず笑ってしまう。「ほんま、よう分かってはりますね」

「そらな」グラスが軽く鳴って、夜はまだ続く。

火曜日という新しいリズムの中で、

博子はまた一つ、確かな手応えを積み上げていた。

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