表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/69

第六十四話「天道との対話」

「ここは......」  


 真っ暗な世界に私は漂っていた。


「くくくっ、久しいな天陽......」


 暗闇に目を凝らすと、暗闇のなかにそこには天道さまがいた。


「......その体を我に寄越すために参ったのか」


「恐れながら、樹海蜘蛛と戦うには私はあまりに惰弱、天道さまにお力をお借りするしかありませぬ」


「樹海蜘蛛...... 糸姫か」


「ご存知ですか」

 

「かつて我が華咲の国を攻めたとき、あやつに阻まれたゆえな。 しかし、やつもまた大きな傷をえたはずだ」


「それで...... 天沼の血と言っていたのか」


「さあ、体を寄越せ。 糸姫を排し、そのあとこの世界を我が物とする!」


「なりませぬ」 


「なんだと......」


「私はあなたのお力をかりにまいった。 しかし、非道をなすことを許しませぬ」


「何を申すか...... 我に体を寄越すためにきたのであろう」


「私はあなた様をぎょし、そのお力をえるために参りました」


「我を御す...... くははははっ、お主のような小僧が我を...... そのようなざれ言を、ならばやってみせよ!」


「ぐううああ!」 


 その瞬間、凄まじい圧力がかかり、意識が朦朧とする。


(これは天道さまの心の強さか...... 揺るがぬこの意志が私を押し退けようとしている)


「お主程度の心では我が覇道は阻めぬ! その心を潰し、その魂、体より消し去ってやるわ!」


 更に強い意志が私の心を押し潰そうとしてくる。


(くっ! 私は力に抗うために仲間と意志をえたのだ!)


 私は押し潰そうとしてきた圧力を押し返す。


「......押し返してくるだと」


「あ、あなたには話を聞いていただく......」


「話...... だと」  


「あなたの力によるやり方では、この世に安寧など訪れない...... 再び戦乱の世になるだけだ。 それをした過去のものはみな滅び、今の歪みがある」


「......肉体を永続させれば、我はこの世をすべられよう。 我は死者ゆえ欲もない。 この世の下らぬ国とりを終わらせ、金や権力の取り合いもなくなる。 これが最良だ」


「それをしてもあなたを倒そうとするものが現れ、再び戦乱となる。 どれ程の力をもっても一人でこの世をすべるなど到底できぬ。 あなたとてわかっているはずだ」


「日陽のようなことを...... なれば貴様になんの策がある。 この苦しみ満つる世に、安寧をもたらすことができると言うか」  


「できぬ......」


「できぬだと...... なれば時の流れに身を任そうというか! それではなんのための主座だ!」


「主座とて一時の制度にすぎぬ。 永劫などありえぬ。 人はその都度変遷し、考え進む以外ないのだ」


「ならぬ! 我の生きた時代、戦に明け暮れ、もはやなんのために戦うかすらわからぬような地獄であったのだ!」


「その道程があればこその今の状況であろう。 少なくとも大乱は起こっておらぬ。 その地獄が人に間違いを気づかせた」


「なればまたあの地獄を繰り返すつもりか!」


「それもやむ無し...... 人は自らが得たものからしか学ばぬ。 歴史も摂理も学だけでは得られぬ」


「それは放棄だ! 貴様は逃げて己が心を守っているだけの弱者だ!」


「違う。 信頼だ、人はいずれ気づくことを信じる。 そのために我らは考えることをつづける国を興すのだ。 あなたは人を信じられない。 あなたこそ考えることをあきらめ放棄した弱者でしかない!」


 私は天道さまの圧力を跳ね返す。


「ぐっ! 我を押し出すだと、これほどの意志! こんな小僧から!」

 

「あなたの力を借り受ける!」


 

「ここは......」


「天陽さま!」 


 流雅の声できづく。


「ああ、大丈夫だ」


「きます!」


 克己の声でみると、糸姫は大きな脚を振り下ろそうとしてくる。


「這いつくばれ、地縛」


 影から出した刀をふるうと、糸姫の足は地面にめり込んでいった。


「......これは天陽さまの坐君」


「ああ、天道さまの力をえた。 いぬけ迅槍」


 私から無数の風御たちが現れ槍のように糸姫を貫く。


「ぐぅ...... この力、あのいまいましい天道か......」


 そう天から声がする。


「そうだ...... もはやそなたに勝ち目はない。 話をしたいが、できぬらば......」


「おごるな人間ごときが! 神たる我に......」


「残念だ...... 糸姫、お主は神でもなんでもない。 ただの人と同じ哀れな生物だ。 堕ちろ刃雨じんう


 空を埋め尽くすぐらいの黒い刀があらわれ、それが糸姫へと降りそそぐ。


「ギャアアアアアアアァァァァ!!!!」


 そうつんざくような声が轟くと、糸姫の巨体は地面に吸い込まれるように倒れふした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ