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第五十九話「濡れ衣の証拠」

「なるほどな、そんなことが......」


「なら、都合がいい。 このまま誘えばいいだろう。 どうせたかるやからはずっと付きまとうぞ」


 漣と暁真がそういう。


「もう誘うのはかまわぬ。 しかし克己や子供たちが気にかかるのだ」


「また、お節介かよ。 お前自分立場わかってんのか」


「まあ、もうなれたがな......」


 二人はあきれていう。


「お主らとてこのまま放ってはおけまい」


「......まあな」


「しかし、克己は商人。 小悪党ごときでは、そう簡単にはいかないだろ」


 二人はそういった。


「どうだろう。 確かに克己はしたたかな人物に思える。 しかし、根本に優しさや慈しみがあるものは絡めとられる。 それが弱みだ」


 私がいうと二人はうなづく。


「ああ、悪党ならそれを見逃すまいよ」


「それも知った上だろう?」


「そうだな。 あの時高という男ならさほど心配はいるまいが、どうも気にかかるな...... すまぬ暁真使いをだしてくれ」


「わかった」


 どうにも気になり、私たちは少しここに滞在することにした。



「やはり、まずいことになった」


 そう漣が部屋にはいってきた。 私たちは克己が気になり、しばらく町に滞在していた。


「どうした?」


「克己がしょっぴかれた」


「なんの罪で」


「人身売買だと」 


「やられたな......」


 暁真はこちらをみる。


「しかし、あの時高がそれほどの強権をつかうだろうか?」


「そうだな。 たかる相手を失うんだしな」


「もしくはそれ以上の利益を見つけたかだな」


 我々はすぐに店へと向かった。



「は、はい......克己さまは、とらえられて」


 そう怯えながら叶という少女はこたえた。 他の子供たちも泣いている。


「それで人身売買などに関わってはおらぬのだな」


「は、はいもちろん。 私どもは親もなくして克己さまに救われた、とそう申しましたが、取り合ってもくれず......」


「やはりはめられたな」


「それで、来たのは時高か?」


「はい、それと間網まもうさまです」


「間網......」


「【大鯨】《たいげい》という大店の旦那さまです」


(あやつか...... 親の家業をついだ若い男だったな)


「私たちは、ど、どうしたら」


 叶はうろたえている。 他のこどもたちも泣き出しそうだ。


「漣はこのものたちを頼む。 落ち着かせてくれ」


「お、おい!」


「暁真いくぞ」


「いいが、殴り込むのか」


「さすがにそこまではせぬ。 天沼にも美染にも迷惑がかかるからな」


「だろうな」


 私たちは連れていかれたという番屋へと向かった。



 番屋に近づくと中から声がする。 見張りからみえないように裏手に回り窓を少し開けなかをのぞく。

  

「なんのつもりですか間網どの」


 そう縛られた克己はいった。 その前には小柄な若い男がいる。


(やはりあれは間網だな......)


「なんのつもりとは...... 克己どのが罪をおかしているという話を聞き及び、善良な商人として時高さまに伝えたまでですよ」


「そうだ。 その方が人を売り買いしているという大罪を、この間網どのが伝えて参った。 観念して話すがよい」


 そう高時は克己につめよる。


「......私が人の売り買いなどしていないことは明白。 調べれば容易くわかるでしょう」


「私もなんの証拠もなくそなたを咎人とがにんと告げたわけではない。 この国にかなり前から人がいなくなる事件が起こっているのはしっているでしょう...... これをみなされ」


 そういうと間網は懐より帳簿をだした。


「これは......」


「これはそなたが取引をしている商家の帳簿。 無論子供の取引をしたとは書いてはおらぬが、そのようなこと帳簿に書かぬ。 だがそのものからそのような取引があったと聞いた......」


「だが、そのものは残念ながら姿をけした。 おそらく発覚をおそれたのであろう」


 そう時高は続けていい、二人は笑みを浮かべた。


「この者は...... 先物で大損をして夜逃げした。 なるほど私と取引をしていたものを買収したのですね」


「......そのようなことは証拠もない。 だがこの帳簿があれば、お主を咎にかけることはできよう」


 そう時高は顎をなでた。


「なるほど、役所も買収済みですか...... それでなにが望みですか」


「そうさな。 どうだ間網、証拠を固めるのも時間も労力もかかる。 この者の店と土地をそなたが買い取り、克己が国よりでればよい。 それで手を打たぬか」


「そうでございますね。 人身売買さえ止められれば、こちらとしてもそれ以上の詮索はするつもりはありませぬ」


「............」


 思案するように克己は黙った。


「おい! 黙って聞いてりゃ! ふざけやがって!」


 そう暁真は番兵を突き飛ばし番屋にどなりこんだ。 しかたなく私も入る。


「なんだ貴様は!」


「すまないが、話を聞かせてもらった」


 私をみると間網がたじろいだ。


「あっ、あなたは、天陽さま!」


「天陽...... 天沼のか」


 こちらをいぶかしげに時高はみた。


「ああ、久しいな間網、天沼の宮中で何度かみかけた」


「は、はい」


「それで天陽さま。 なにようですかな。 いまは取り調べの最中なのですが」


 時高は煩わしそうに答えた。


「なにが取り調べだ! 脅して店を乗っとるつもりじゃねえか」


 暁真はそう吐き捨てた。


「な、なにをもうすか。 こうやって証言と証拠をもっておる。 調べるのは当然、罪なきというならば、罪なき証拠をだすがよい」


 そう時高は反論する。


「罪なき証拠なんてだせるわけねえだろ! 元々なにもやってねえんだからな!」


「なれば、黙っておられよ。 そもそもただの従者ごときが口を出すでない」


 間網はそう一蹴する。


「我が孫がいかがいたしましたか......」


 その時、夕凪が番屋にはいってきた。



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