その頃、アメリアでは
アメリカ連邦捜査局。
資料置き場として使われている部屋から、同僚のギルバートの叫び声が聞こえた。
と、同時にバサバサと紙が大量に崩れ落ちる音がしたのでどうせまだ何かしらやらかしたのだろうと思い部屋のドアを開ける。
『おい、ギルバートさっきの音なんだ??』
『見ればわかるでしょう?!崩れたのよ!この書類が!!』
室内のテーブルの上に山のように積まれた書類の一部が雪崩を起こしたのだろう。
床にはテーブルと同じような書類が散乱していた。
その書類をギルバートは床に散らばっている書類をかき集めてまた机に積み上げていた。
『少しは片付けたらどうだ?』
『うるさいわね。私はこれが一番落ち着くし、どこに何があるか把握しているから良いのよ!!』
ブツブツ文句を言いながらある程度書類をまとめると立ち上がる。
『珍しいな。お前がそんな洋服を着ているなんて。』
『あら?別に良いじゃない。だってソフィアいないんだもの。』
『だもの、じゃねえよ。そのお姫様から連絡があったか?』
『あったわよ?なぜか学院に探りを入れて欲しいって言われたのよ。なぜかしらね~?』
『ソフィのお得意の巻き込まれ体質を存分に発揮したんだろう?』
『巻き込まれねぇ?』
何か言いたげなギルバートに相変わらず鋭いな、と苦笑した。
『ルイス?とりあえずお姫様の要望に応える為に協力してくれるかしら?』
『そうだな。でも、あれを送ったのなら事件の方は道筋ができるさ。問題は学院側なんだろう?』
『そうみたいね。まぁ、学院の職員として7人か潜り込んでるからその子たちに頼もうかしら?』
『それが一番早いだろうな。ソフィの名前を出せば嬉々として協力するんじゃないか?』
『出さないわよ。うちのお姫様は安売りしてないの。』
眉間にシワを寄せながら拗ねたような表情をするがようやくすると、“ソフィアの名前を出さなくてもそれくらい聞き出してやるわよ”と“やっぱり何か絡んでるわね”って目が言っている。
苦笑を浮かべると、部屋のドアが開いた。
姿を現したのは、ハニーブロンドの髪を緩くウェーブがかかっていて、すっきりとしたワンピースを着た事務官のイブだった。
『あら、ここに居たの?ルイ、書類が溜まり出したから早くサインしてよね。それとギルこれ、頼まれてた・・・・あら、今日はメンズっぽい格好なのね。』
『それ、班長にも言われたわ。そんなに珍しいかしら?』
『いいえ。だってソフィが居ないからでしょう?お揃いに出来ないものね。まぁ、ユニセックスのお洋服ばかりだから、今の格好もあまり違和感はないけれど。』
書類を受け取りながら、洋服がいつもと違うことの理由をズバリと的中されて、ギルバートは苦笑した。
普段ギルバートはソフィアと同じ洋服を着ている。
自他共に認めるオネェ言葉だが、本人は女の子が恋愛対象だ。
そして、長身ながらもスラリとした体格を中性的な顔なので、女物を着ても全く以って違和感がない。
“そんな女性がいるよね。”
で、済まされる。
ソフィアと同じような服を着るのは、ソフィアがお揃いの格好をしたいと言ったのが始まりだ。
その一言で願いを叶えてあげることは驚きだが、妹同然に可愛がっているソフィアの願いなら全力で叶えるだろう。
俺自身、ソフィアの父親と高校時代から一緒なので、ソフィは実の娘のように可愛がっていると思うのでギルバートの気持ちも分からなくはない。
『それじゃあ、俺も仕事をしようかね。そして可愛い娘のためにも情報を集めてあげますか。』
『連絡は私がするからね!』
『お好きにどうぞ。』
ギルバートにひらひらと手を振り、自身のデスクへと向かった。
そしてものの数時間で、ソフィが欲しがっていた情報を綺麗にまとめて電話をしているあたり、感心をする。
俺は事件が片付けばきっと問い詰められるだろうと、真相に対しての言い訳を今から考えておこうと思った。
娘は怒らすと怖いからなぁー。
と、苦笑をした。




