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「相田くん、北村くん遅くなったわ。」
「警部、今現場に入った生徒達に話を聞いていた所です。ただ、遺体を見ても全く動じていないのが驚きですが・・・。」
「動じない?」
「はい。普通は冷静になれるはずがないと思うのですが、なのに彼女達は落ち着いていて慣れているように感じ取れました。隣の教室で待ってもらっているので、お願いいたします。」
教室の手前で交わされる会話に耳を傾けながら、私と龍は視線を合わせて小声で会話する。
「ねぇ、さつきさんの声に似てない?」
「俺もそう思う。お袋がきた。最悪。」
「え?誰です?」
ドアが開いて室内に入ってきたのは、先ほどの話を聞きにきた相田刑事と私と龍の予想通り、龍の母親だった。
予想が的中して、あーという状況だ。
「龍哉とソフィ!と初めましての子が居るわね。あなた達が第一発見者?」
「まぁ、正確には悲鳴を聞きつけて駆けつけたら事件現場だった。が、正しいです。」
苦笑を浮かべる私に、さつきさんは何か言いたそうだったがその言葉をのみ込んだようにみえた。
「相田くん、息子が第一発見者のようだから私もこれから話を聞くわ。明日現場検証等の詳しい報告はまとめて受けるから、北村くんと共に出入り可能な人間と、実際にこの子達の前に出入りした人間を探して頂戴。」
「え?あ、はい。分かりました。」
さつきさんの指示に相田刑事はうなずくと教室を後にした。
相田刑事がいなくなったのを確認すると、近くの椅子に腰を下ろした。
「いつソフィは日本に来たのかしら?」
「え?昨日ですけど。短期留学で帰国ではないです。」
「そうなのね。隣の子は初めましてよね?そこの息子の母で、百王華さつきです。私の勘が間違っていなければ、あなたがソフィのバディのダニエル君でしょう?」
「はい。初めまして、ダニエル・ウィリアムです。」
「話はよくソフィから聞いていたわ。噂通りね。日本にいる間だけでもよろしくね。」
「あ、はい。」
『さて、挨拶も終わったから単刀直入に聞くわ。今回の件どこまで知っているの?』
『あぁ、やっぱり今回のが初めてじゃないんですね?連続的に続いている殺人事件なんですね。』
にっこり笑みを浮かべながら答える。
会話が英語に切り替わったのは周りには聞かれたくないから。
この2人は聞かれても問題はないとの判断だろう。
なるべく小声で話す、相手から“否”と返答がないしリアクションがないので肯定と受け取る。
どこまで情報をもらえるかわからないけれど、少なくとも巻き込まれたのだから詳しく教えてほしいものである。
しばらく続いた沈黙の後、さつきさんが苦笑した。
『そうね、この件に関しては龍哉達の方が詳しいと思うわ。正確にはブリリオの参謀が。』
『あぁ、日高君ですね。』
『なんで、参謀が達也だと分かった?』
『え?すぐ分かるわよ。簡単に言えば補佐官でしょう?雛森君じゃあ情報を集めてくるだけだろうし、それをまとめて龍に伝えてるのが、彼でしょう?役割を考えれば誰にでも分かる事じゃない。』
『簡単に分からないだろう?今まで初見でバレた事はないのに。』
『フィーを普通の女子高生と思わないでください。観察力がすごいんですから。』
『え?どちらにしても、達也も簡単に情報は渡さないと思うぞ?』』
『その言い方。ブリリオはある程度、把握済みって事ね?』
にっこりと満面の笑みを浮かべる。
『えっと、それよりも百王華警部、この件では警察は動かないのでしょうか?』
『警部はやめていただき。さつきでいいわ。私達警察も捜査がしたくてもさせてもらえないの。おそらく相田くんたちに頼んだことも、分からずじまいで今回も終了よ。個人的には少し調べているけど・・・・・。』
『それは令状をとってもですか?』
『・・・色々なパターンはあるけれど、どこからかその事件が無かったことにされるの。白で通されることもあるし、令状をとって調べても、何も出てこなかったわ。まぁ一般の貴方達に言っても仕方のないことだけれど。』
そんなさつきさんに、私は単純に疑問が浮かぶ。
無かったことにするのであれば、何故警察を呼ぶのだろう?
生徒が目撃したからだろうか?
それ以上はお互い何も話さず、当初の目的地であった総合事務所でマンションの鍵を受け取り、一番近い門まで龍哉ににっこり送ってもらった。
さつきさんとは事件の件で少し話があるらしく事務所で別れた。




