【エピローグ】少女を追う者たち
下層・聖園領域のとある国――そこに一人の少女がいた。
編み込みの入ったプラチナブロンドの髪が、白いワンピースと共に風に揺れ、浅く積もった雪を踏んで進んでいく中、やがて国全体が見渡せる丘までやってくると、黄金に輝く細い剣を出現させ握りしめる。
「……」
丘の下には、大きな川。それを挟む様に先には沢山の学生達が集まる。彼らはウィーク領域と呼ばれる隣の領域からやってきた、四校の学兵達であった。
同時に戦闘用の大型機械の銃口が、それぞれこちらに向けられると、少女はそれを見るなり手にしていた剣を横に薙る。
瞬間。視界がホワイトアウトし、極寒の風が巻き起こる。
肌を引き裂く様な冷気が、大量の雪と共に学兵達に襲い掛かると、尚も少女はその力を容赦無く振い続ける。
白く、白く、真っ白に。何もかも消し去る様に。
そんな力を振るう中、背後から襲いかかったのは一人の青年だった。鳶色の髪に夜空の様な深く青い瞳。その手には短刀。彼はこの国の新たな主でもあった。
少女の黄金の剣と青年の短刀がぶつかり、激しく火花を散らすと、跳ね返された青年は後方に退がる。
異様に強い力を持つ少女を警戒する様に見つめれば、少女は彼から目を逸らし、丘から降りる。
「アイツ……」
逃げやがったなと呟けば、彼は少女を追って丘を降りる。
それから少し遅れて、丘にまた一人男が現れる。赤い右目と紫の左目。青がかった黒の結い髪を揺らしながら、二人が降りた丘の下を見下ろし、苦々しく呟いた。
「コハク……キサラギ……」
手を強く握り締め、冷えた空気に白い吐息が漏れる。そして腰にある短剣を手にすると、彼も丘を降りて行った。
一方で、降りていった二人はそのまま丘の端にある木々を飛び渡り、森の中を駆け抜ける。
「待ちやがれ!」
「……」
青年の言葉にも従わず、少女は木々の合間をすり抜ける様に進んでいく。負けじと青年も追うが、瞬間目の前を白い壁が遮り、少女の姿を見失ってしまう。
「チッ……逃げられたか」
そう舌打ちし足を止めて肩で息をすれば、後からやってきた男と合流する。
「キサラギっ」
「……ライオネル」
キサラギと呼ばれた青年は、後から来た男をライオネルと呼ぶと、彼の顔を見るなり眉間に皺を寄せた。ライオネルの顔色が悪かったからだ。
「お前……まだ怪我も治っていないだろ」
「そう、だけど……コハクがいるんでしょ」
「コハク……あの娘の事か」
キサラギが訊ねるとライオネルは頷く。して彼女が消え去った方を見ていった。
「早く、見つけなきゃ」
「……」
今にも倒れそうな弱々しい声。その声にキサラギは呆れ溜息を吐くと、ライオネルの肩を掴んで、来た道を戻っていった。
【千神の世へ続く】




