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夜明けの氷狼  作者: チカガミ
5章 帰還そして旅立ち
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【5-2】指示役

 なんやかんや騒ぎつつ、キリヤの傷が治った所で、先程俺が倒した他の奴らを一ヶ所に集める。

 時間が経っていたのもあり、気を失っていた男も目を覚ましていたが、一人一人縛った上でキリヤは手の関節を鳴らしながら男達に問う。


「さて、と。改めてだが。今回の指示はどこからなんだ。ん?」

「っ……悪神如きに教えるか!」

「ふうん。ま、言いたくなければ良い。……だが」


 そう言って拳銃片手にキリヤはしゃがみ込む。そして、男の腹に銃口を押し付ける。

 脅しとも取れる行為に、ノルドが「悪役ー」と棒読みで言えば、キリヤが振り向き「うるせえ」と叫ぶ。


「毎度毎度撃たれてばっかりで癪なんだよ! たまには撃たせろ!」

「そんなにやられていたのか」

「そうだよ。土手っ腹撃たれたのも今回で祝百回目だ」

「めでたくもないし、各部位カウントしているのもやばい」


 と、俺の問いの後キリヤとノルドのやり取りが行われると、男は引きながらもボソリと呟いた。


「撃たれても死なないなんて化け物なのか?」

「悪神ですが何かぁ⁉︎ 」


 今まで散々言ってただろうがよぉ‼︎ と声を荒らげるキリヤ。かなり鬱憤が溜まっていた様で、いつも以上に爆発している。

 その様子に俺とシルヴィアは静かに見つめていると、脅されている男とは別に、一人の男が恐る恐る口を開く。それに俺達は視線を向けると、男はおどおどとしながらも言った。


「俺達はただ、指示役に言われて」

「おい、お前!」


 前にいた男が振り向き言うが、それに対して言い掛けた男は「だって」と涙目で反論する。


「このままじゃ俺達死にますよ!」

「馬鹿野郎! 情報を明け渡すくらいならば死んだ方が、夕暮れ教の……ソンニョ様の為になるだろう‼︎」

「リーダー!」


 んな殺生な! と、男は叫ぶ。それを皮切りに、他の男達も口々に不満を言うと、やがて言い合いが始まった。


「おいおいテメェら、何俺を置いて仲間割れしてやがる。……結局喋るのか喋らんのかどっちなんじゃい‼︎」

「しゃ、喋ります‼︎」


 キリヤが声を上げた事で、さっき言い掛けた男が声を上げる。その光景にシルヴィアは俺の背後から覗き見ながら「ドラマみたいですね」と呟いた。


「ドラマ……ああ、キリヤが見ていた劇みたいなものか」

「そうそう。ジャンル的には極道系だねぇ」


 凶狼のキリヤってとこかな。と呟きつつ、ノルドが腕を組みながら生温かい目を彼らに向ける。

 と、言うと言った男は背後に腕を縛られた状態で立ち上がると、空を見上げながら声高々に言った。


「指示役はニルハです!」

「あっ、言いやがった!」

「ほう、ニルハか……覚えたぜ」


 そう言うと、キリヤは手にしていた拳銃を向け、容赦無く撃つ。言った男は「なんで」と叫ぶが、その間にキリヤは紐を解き男を楽にする。

 幸いにも撃った弾は男には擦る事なく、フードの一部に穴が空いただけであった。


「さて他の奴らはどうする。つまんねえ言い訳すると、腹だけでなくその顔面も撃ち抜くからな」

「ひ、ひぃ」

「悪神だ悪魔だ」

 (本当悪役だな)


 見ているこっちが胸が痛くなる。そう思いつつ、口を出そうかとすれば、何故かノルドに制止される。そして彼はボソリと耳打ちしてきた。


「こうまでしないとまた襲ってくるんだよ。あいつら」

「そ、そうなのか?」

「そうそう。だから良いの。この位で」


 それにはなから当てる気はないんだし。そう言われ、渋々身体を引く。

 その後も一人一人聞き出したキリヤは、疲れて伸びている男達を他所に俺達に視線を向ける。


「……分かったか?」

「分かったかって……まあ、要するに、ソンニョは魔鏡(まきょう)領域に居るのは確定。今夜明けの領域で指示を出しているのは、そのニルハって奴って事でしょ」

「そうだ」


 キリヤに言われ、驚いた後ノルドは分かりやすくまとめる。その話に俺とシルヴィアも理解した後、キリヤに訊ねる。


「聞き出した以上はどうするんだ? ニルハをどうにかするのか?」

「当たり前だ。いざ行く時に邪魔されそうだろ」

「とはいえ、探す暇あるかなぁ」


 ノルドに言われ、キリヤは「ある」と断言する。それに対して当てはあるのかと訊けば、キリヤは腕を組んで言った。


「ない」

「ないのかよ。なら、難しいんじゃないか」

「いーや探す。もう撃たれたくねえ」


 そう言って、さっさと一人で行ってしまう。

 残された俺達はそれぞれ顔を見合わせた後、未だに倒れている男を見る。リーダーと呼ばれていた男と視線が合うと、すぐに目を逸らされた。

 そんな男にノルドは笑みを浮かべると、「悪い事はしないから」と言う。男はノルドに圧され、間を置いて話した。


「……第九超弩級ビル三千九百階」

「オッケー、ありがとう」


 そう言って、ノルドは立ち上がる。キリヤもだが、ノルドも中々恐ろしい部分はあるようだ。

 行くよと言われつつ、ノルドに背中を押されると、シルヴィア共々この場を後にする。

 シルヴィアは背後を何度か振り向きつつ、俺に声を掛けた。


「あの、あの人達はそのままで大丈夫でしょうか」

「大丈夫だよ。しばらくしたら復活するよ」

「……逆恨みされたりしないか?」

「大丈夫大丈夫。明かしちゃった以上はもう、どうしようもないからさ」


 それにしても案外答えてくれたな。とノルドが呟く。それに対して「罠じゃないだろうな」と怪訝に思いつつ呟けば、ノルドは黙り込んだ。


※※※


 夜も深くなり、場所はインヴェルノ跡地から遠く離れた第九超弩級ビルに移る。このビルはキリヤ達のいた家のあるビルの近くにあり、夜明けの領域では新しいビルになるらしい。

 そのビルに車ごと乗り込むと、運転していたノルドがナビと呼ばれる機械を弄りながらキリヤに言う。


「三千九百階……か。最上階っぽいけど、セキュリティがすごそうだな」

「だろうな。最悪ご厄介になるかもな」

「ご厄介って……」

「つまり捕まるって事だ」


 一応言っておくが俺はお尋ね者だからな。と、キリヤが言う。その言葉に唖然とした後「どうするんだよ」と後部座席から訊ねる。と、キリヤは俺の頭を押さえ付け伏せる。


「とりあえず、お前はその耳を隠せ。未だに半獣人に対して警戒している奴らは多いんだぞ」

「わ、分かった……」


 ぎゅむ。と音が出そうなくらいに強く深く押さえられた後、苦笑するノルドが魔法陣の書かれたバンダナを渡してくる。それを受け取り、左腕に縛ると耳が消えた。

 その間に車は、道のあちこちにある標識頼りにどんどん上がっていく。

 三十階、四十階……と上った所で、高速エレベーター道路と書かれた看板が見える。


「あそこに入れば一気に最上階に上がれるけど……」

「……そうだな」


 難しい表情で二人は外を見る。その一方で分からない俺達は前にある鏡越しに二人の表情を見つめる。

 すると、意を決したのかノルドはその道路に向かっていくと、ガラス張りのトンネルを通り、門らしき大きな白い建設物をくぐって行く。そこで武装した男達が囲む。


「場所は」

「最上階です」

「最上階……身分証を」

「はーい」


 窓越しにノルドはやり取りすると、どこからかカードを取り出して男に渡す。

 男はそれを受け取り、手にしていた機械をかざしたりしていたが、少ししてカードをノルドに返すと「どうぞ」と通される。

 ノルドは男に「どうも」と言って礼を言うと、抜けてしばらくした所で深く溜息を吐いた。


「緊張したぁ……抜けきれないと思ったのに」

「運が良かったな。にしてもお前のカードで良く通してくれたな」

「ああ、多分。以前の依頼で麒麟様から借りていた権限が付与されたままだったからじゃないかな」


 渡す前に思い出したからとノルドは言うと、キリヤは納得する。

 俺達からしてみれば依然よく分からなかったが、とにかく危惧していた事態が避けられた事だけは分かった。

 真っ白な空間の中黒い道を辿っていくと、巨大な筒が数本現れ、その前に車が一台ずつ列を作って並んでいた。

 ノルドはその中の一列に並ぶと、筒にある扉が開き、車が出た所で何台かと一緒に入る。入った先には道がいくつかに分かれていた。


「さすが最新式のビルは違うな。車庫みたいに分かれているのか」

「みたいだね。あそこ青だからそこに入ろうか」


 ハンドルを回し、左端にある道へ曲がっていくと車一台入る部屋に入る。奥まで入った所で、車が停まると、ノルドは窓を再び開け、壁際にある機械を弄る。


「……よし。オッケー」

「これから一気に上がるのか?」

「そうだよ。と言っても、僕らも一気に三千階以上上がるのは初めてだけど」


 重力に引っ張られる様な感覚はあるかなとノルドが言えば、キリヤは振り向き俺を見る。


「もしかして怖いのか?」

「いや、怖くはない。けど、俺もそこまで高い所は行ったこと無いから……」

「それは俺も一緒だ」


 キリヤが正面を向き言う。俺はそのまま座席に座り直すと、大きく揺れた後、ガタガタと振動しながら上昇する。最初はゆっくりだったが、次第に早くなり音も大きくなった。

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