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夜明けの氷狼  作者: チカガミ
4章 見えてくるもの
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【とある廃材置き場にて】(スコルピside)

 とある超弩級ビルの廃材置き場。


「ああ、なんて事だ! まさか本当にボーボードリさんがやられてしまうとは!」

(うるせぇ……)


 キラキラと謎の光を浴びながら、まるで悲劇のヒロインの如く崩れ落ちるリヴィア。

 それを苛々しながら見ていると、リディアは立ち上がるなりこちらに駆け寄る。


「折角分かり合えると思ったのに‼︎ どう思いますか‼︎ スコーンさん‼︎」

「知らねえよ‼︎ 後スコーンじゃなくて、スコルピだって言ってんだろ‼︎」


 至近距離で叫ばれ、俺も強く言い返す。鳳凰も未だにボーボードリと言っているが、いつになったらまともに覚えるんだろうか。このバカ天使は。

 怒りを通り越し、呆れて大きなため息を吐くと、リディアを押しのけ、積まれた木材の上に腰掛ける。

 鳳凰が先に旅立って数日。予定通りの時刻に戻らず、そして本日、拠点であるこのビルの空き家に、鳳凰の羽が落ちていた。尚その家は屋根が燃えて火事になっていたのだが。


(嫌がらせか)


 そう思いながら、あいつの羽根を眺める。魔術でどうにか延焼を封じたのだが、それでもしばらく摘んでいると熱を感じる。

 と、羽根をいじっていた俺に、またもやリヴィアが近づいてくると、隣に座る。

 何だ。と怪訝に思っていると、リヴィアは笑みを浮かべたまま言った。


「スコールさんはどこか、顔立ちがソンニョ様に似ていらっしゃる」

「……スコルピ。後、似てないっての」


 青緑色がかった黒髪に赤に近い橙の目。それのどこがソンニョ様に似ているというのか。

 再び息を吐き、リヴィアから距離を置こうと横にずれると、その距離を埋める様にリヴィアが詰めてくる。

 キラキラとした目から逃れる為に顔を逸らせば、リヴィアは前のめりになって覗き込む様に言った。


「まあ。確かに魔女ユノの血は濃いですね」

「っ」

「けど、それでも。はっきりと貴方の中にはお父様であるソンニョ様の血も感じる」


 見えるのです。

 そうリヴィアは言って、手を握る。俺はその手を振り払うと、苛立ちも込めて返した。


「お前に何が分かる」

「?」

「魔女の血? 元天使の血? ハッ、どいつもこいつも血ばっかり見やがって」


 吐き捨てて前髪をくしゃりと握りしめる。

 どんなに努力をしても。どんなに頑張っても。付いてくるのは母の悪名ばかり。

 父は父で姿を見せず、ようやっと現れたかと思いきや、何もかも任せてどこかへ行ってしまった。


(……ってか、何で俺ここにいるんだろう)


 もう時の長くない母の最期の望みは聞いてやったが、この後は何も考えていない。

 正直父に対しても何も思っていないから、やる事やったら自分もここから去ってもいいが。


(けど、この先どうする?)


 全く見えない未来に、俺の心は着実に闇に沈む。

 うんざりするぐらいに長い時を与えられ、まだまだ続くであろう人生。さっさと誰かにピリオドを打って欲しかった。


「スコルピさん」

「……何」


 名前を呼ばれ顔を上げると、リヴィアの表情に俺は目を開く。真剣な眼差しで両手を包み込む様に握られ、俺は言葉を失えば、リヴィアはその表情のまま言った。


「逃げないでくださいね」

「は、逃げる? 誰が? 何に?」

「それは私には分かりません。けど、逃げっぱなしも癪でしょ?」


 良いんですか? とリヴィアに言われ、俺はますます眉間に皺を寄せる。

 俺が逃げている? どうして?

 唇を噛み手を引こうとした時、懐かしくも忌まわしい気配がして、リヴィアから視線を外す。

 リヴィアもリヴィアで察したのか、俺から離れると、いつもの笑みを浮かべた表情に変わる。


「よくここが分かったね」


 そう近づくそいつに言うと、小さく笑む。見た感じ一人か? けど、わざわざ単身で来るほど戦いを好む奴ではなかった筈。

 大鎌を出現させ手に取れば、あいつもまた杖を手にして近づく。


(何を企んでいる?)


 あのわんこくんをいじめた事を未だに根に持っているのか?

 リヴィアと共に距離を置きながら、俺は北星のあいつを睨む。それに対し北星は笑みを消すと、杖の先を向けながら口を開いた。

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