【とある廃材置き場にて】(スコルピside)
とある超弩級ビルの廃材置き場。
「ああ、なんて事だ! まさか本当にボーボードリさんがやられてしまうとは!」
(うるせぇ……)
キラキラと謎の光を浴びながら、まるで悲劇のヒロインの如く崩れ落ちるリヴィア。
それを苛々しながら見ていると、リディアは立ち上がるなりこちらに駆け寄る。
「折角分かり合えると思ったのに‼︎ どう思いますか‼︎ スコーンさん‼︎」
「知らねえよ‼︎ 後スコーンじゃなくて、スコルピだって言ってんだろ‼︎」
至近距離で叫ばれ、俺も強く言い返す。鳳凰も未だにボーボードリと言っているが、いつになったらまともに覚えるんだろうか。このバカ天使は。
怒りを通り越し、呆れて大きなため息を吐くと、リディアを押しのけ、積まれた木材の上に腰掛ける。
鳳凰が先に旅立って数日。予定通りの時刻に戻らず、そして本日、拠点であるこのビルの空き家に、鳳凰の羽が落ちていた。尚その家は屋根が燃えて火事になっていたのだが。
(嫌がらせか)
そう思いながら、あいつの羽根を眺める。魔術でどうにか延焼を封じたのだが、それでもしばらく摘んでいると熱を感じる。
と、羽根をいじっていた俺に、またもやリヴィアが近づいてくると、隣に座る。
何だ。と怪訝に思っていると、リヴィアは笑みを浮かべたまま言った。
「スコールさんはどこか、顔立ちがソンニョ様に似ていらっしゃる」
「……スコルピ。後、似てないっての」
青緑色がかった黒髪に赤に近い橙の目。それのどこがソンニョ様に似ているというのか。
再び息を吐き、リヴィアから距離を置こうと横にずれると、その距離を埋める様にリヴィアが詰めてくる。
キラキラとした目から逃れる為に顔を逸らせば、リヴィアは前のめりになって覗き込む様に言った。
「まあ。確かに魔女ユノの血は濃いですね」
「っ」
「けど、それでも。はっきりと貴方の中にはお父様であるソンニョ様の血も感じる」
見えるのです。
そうリヴィアは言って、手を握る。俺はその手を振り払うと、苛立ちも込めて返した。
「お前に何が分かる」
「?」
「魔女の血? 元天使の血? ハッ、どいつもこいつも血ばっかり見やがって」
吐き捨てて前髪をくしゃりと握りしめる。
どんなに努力をしても。どんなに頑張っても。付いてくるのは母の悪名ばかり。
父は父で姿を見せず、ようやっと現れたかと思いきや、何もかも任せてどこかへ行ってしまった。
(……ってか、何で俺ここにいるんだろう)
もう時の長くない母の最期の望みは聞いてやったが、この後は何も考えていない。
正直父に対しても何も思っていないから、やる事やったら自分もここから去ってもいいが。
(けど、この先どうする?)
全く見えない未来に、俺の心は着実に闇に沈む。
うんざりするぐらいに長い時を与えられ、まだまだ続くであろう人生。さっさと誰かにピリオドを打って欲しかった。
「スコルピさん」
「……何」
名前を呼ばれ顔を上げると、リヴィアの表情に俺は目を開く。真剣な眼差しで両手を包み込む様に握られ、俺は言葉を失えば、リヴィアはその表情のまま言った。
「逃げないでくださいね」
「は、逃げる? 誰が? 何に?」
「それは私には分かりません。けど、逃げっぱなしも癪でしょ?」
良いんですか? とリヴィアに言われ、俺はますます眉間に皺を寄せる。
俺が逃げている? どうして?
唇を噛み手を引こうとした時、懐かしくも忌まわしい気配がして、リヴィアから視線を外す。
リヴィアもリヴィアで察したのか、俺から離れると、いつもの笑みを浮かべた表情に変わる。
「よくここが分かったね」
そう近づくそいつに言うと、小さく笑む。見た感じ一人か? けど、わざわざ単身で来るほど戦いを好む奴ではなかった筈。
大鎌を出現させ手に取れば、あいつもまた杖を手にして近づく。
(何を企んでいる?)
あのわんこくんをいじめた事を未だに根に持っているのか?
リヴィアと共に距離を置きながら、俺は北星のあいつを睨む。それに対し北星は笑みを消すと、杖の先を向けながら口を開いた。




